apocalypsis

さくら

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suggestio veri, suggestio falsi

viginti unus

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 少し沈黙をし、胡桃沢はゆっくりと口を開いた。
「失敗じゃったと思う。成功しておれば、十三年前に再び試みる事はなかったはずじゃ」
 十七年前はおそらく失敗に終わった。なら十三年前はどうだったのか。
「十三年前も失敗だったんですか?」
 胡桃沢は目を細めた。
「いや……、あれは失敗というか……」
 胡桃沢は少し考え込む。
「阻止されたというのが正しいかのぉ?」
「阻止?」
 それは、文字通りの意味で受け取って良いのか悩む。
「誰にですか?」
 疑問が斎の口を吐いて出る。
「由香子さんじゃ」
 先程、知ったばかりの名前が耳に入る。
「天弥の母親が……?」
 意外な人物の名を挙げられ、思考が混乱する。一応、ある程度の予想は立てていた。だが、召喚を試みた神からして違っていた。
「由香子さんから連絡を受け、羽角の家へ向かってみると、庭に広がる闇の中心にあの子が居ったんじゃ」
 あの子とは、天弥の事なのだろうと考える。
「状況を理解できずにいると、そこへ向かって走っていく人影が見えたんじゃ」
 胡桃沢の表情に後悔の色が浮かぶ。
「止める事が出来たはずなのに、今、目の前で起こっている現象について気を取られておった」
 ゆっくりと、胡桃沢の目が閉じられた。
「由香子さんが何の躊躇いも無く、まっすぐに闇の中にいる子供に向かって走っていったんじゃ」
 しばし、沈黙がその場を支配する。
「一瞬、闇が深くなったかと思うとすぐに消え、何も反応がない子供を抱きかかえた由香子さんが、不帰の客となっておった」
 胡桃沢が目を開け、斎を見た。
「知っておる事は、これぐらいじゃ」
「はい」
 斎は、得たばかりの情報を整理し始める。十七年前、理由は分からないが召喚には失敗をした。そして、十三年前に再び試みられた。そして、その時は天弥が居り、母親が亡くなった。なぜ天弥がそこに居たのか、何が原因で母親が亡くなったのかが分からない。おそらく、胡桃沢にも分からないのだと思う。
「あまり役に立たなくて、すまんのぉ」
 申し訳なさそうに胡桃沢は言った。
「いえ、助かります」
 何も知らない身としては、どんな僅かな情報でもありがたい、そう思う。
「何が起こっておるのかは知らんが、こんなことなら、羽角に詳しく聞いてくれば良かったのぉ」
 残念そうに胡桃沢は呟いた。
「あの子と会ったと言ったんじゃが、羽角は特に何も聞かんので、そこで話は終わってしまったしのぉ」
 胡桃沢からのメールに羽角と会ったと記されていた事を思い出す。
「天弥の祖父に会いに行っていたのですか?」
 今までの情報から察するに、根源は天弥の祖父の羽角で間違い無いと思う。ならば、可能な限り情報を得たいと考える。
「いきなり連絡が来てのぉ。十三年ぶりじゃったし、すぐに会いに行ったんじゃ」
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