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emitte lucem et veritatem
viginti unus
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声が震え、無意識に身を引く。怖いという訳ではない。ただ嫌な感じがするだけだ。斎は、その正体を知るために、目を凝らす。
カルトゥーシュに囲まれた奇妙に歪んだ五芒星の中心に、燃え上がる炎の目が描かれている。
「エルダーサイン……」
斎の口から、震える声で言葉が漏れた。それは、かつての支配者である邪神たちを封印した旧神の印である。外なる神の奉仕種族などに抵抗する、唯一の武器であり、彼らを排除することが出来るものだ。
サイラスは斎の様子を観察する。深く観察するまでもなく、反応は手に取るように分かった。視線を逸らし、窓の外の月を見つめた。自分のミスで、取り返しのつかない状況に、斎を追い込んでしまった。あの時、真剣に対応しておくべきだったと後悔をする。
再び視線を斎へと戻すと、無言で旧神の印を服の中へとしまう。
「なぜ、そんなものを持っている?」
本物なのか? と一瞬、疑念を持ったが、なぜか自分の中で訳の分からない感覚が、それを本物だと認めている。
「昔、恩人がくれたんや」
身を守る為にと、与えられた物だった。羽角は、サイラスがこの世界に足を踏み入れるのを嫌がったが、少しでも役に立ちたくて我侭を通した。これは、その時に与えられたものだ。
「先生、他に聞きたいことは? ないんやったら、帰るけど」
疑問に総て答えてやれないのが、心苦しくはあるが、今、置かれている状況では仕方が無い。
「ある。なぜ十二年前の事を詳しく知っているんだ?」
斎の問いにサイラスは険しい表情を浮かべた。長い金髪が、月の光を受けて穏やかに輝いている。
「羽角が、情報を売ったからや」
予想もしなかった名前を口にした。羽角とは、天弥の祖父である羽角恭一郎の事だと考えて間違いないのかと、判断に悩む。
「羽角とは、天弥の祖父の事か?」
「そうや」
あっさりと答えた様子に、斎は思わず何か裏があるのかと疑ってしまう。第一、なぜ天弥の祖父とサイラスが繋がっているのかも理解できない。
それに、情報を売るとは一体何のことなのかと考える。そこまでの何かが、天弥にはあるということなのか。
「なぜ、祖父が孫の情報を売ったりするんだ?」
普通に考えれば在り得ないことだ。
「さあ」
サイラスの様子から、本当に知らないのか、話す気が無いのかを探る。だがどちらにしても、この事についての情報は得られないだろうと判断をした。
「なら、天弥には何があるんだ?」
せめて、天弥に何があるのか、それが分かればと、サイラスの返事に望みを託す。
「悪いんやけど、それは教えられへんのや」
そう言いながらサイラスは、手に持っているペットボトルを斎に向かって放り投げた。斎は反射的にそれを受け取る。
「そろそろ帰るわ」
斎に背を向け、サイラスは窓枠に足をかけた。
「ちょっと待て」
サイラスは動きを止め、視線を戻す。
「なんや?」
窓から飛び出そうとするその姿は、月の光を浴び絵画かフォトグラフを見ているような気にさせる。
「ラブクラフトの創作世界は、実在するのか?」
視線を窓の外へと移しながら、サイラスは月に話しかけるかのように、言葉を発した。
「信じる信じないは、先生の好きにしたらええやん」
そう言い残し、サイラスは窓の外へと飛び出した。同時に、大きな羽ばたきと共に、斎の視界に黒い影が一瞬、横切った気がした。改めて窓を見る。そこに見えるのは夜空だけであり、それは二階以上の高さがあることを物語っていた。
サイラスが放り投げたペットボトルをベッドサイドのテレビの横へと置く。そして、すぐ傍にある時計が目に入る。時刻は一時を過ぎていた。どう考えても、面会時間は過ぎている。サイラスは勝手に忍び込んだのだろうかと、斎は疑問と共に視線を開け放たれた窓へと向けた。
カルトゥーシュに囲まれた奇妙に歪んだ五芒星の中心に、燃え上がる炎の目が描かれている。
「エルダーサイン……」
斎の口から、震える声で言葉が漏れた。それは、かつての支配者である邪神たちを封印した旧神の印である。外なる神の奉仕種族などに抵抗する、唯一の武器であり、彼らを排除することが出来るものだ。
サイラスは斎の様子を観察する。深く観察するまでもなく、反応は手に取るように分かった。視線を逸らし、窓の外の月を見つめた。自分のミスで、取り返しのつかない状況に、斎を追い込んでしまった。あの時、真剣に対応しておくべきだったと後悔をする。
再び視線を斎へと戻すと、無言で旧神の印を服の中へとしまう。
「なぜ、そんなものを持っている?」
本物なのか? と一瞬、疑念を持ったが、なぜか自分の中で訳の分からない感覚が、それを本物だと認めている。
「昔、恩人がくれたんや」
身を守る為にと、与えられた物だった。羽角は、サイラスがこの世界に足を踏み入れるのを嫌がったが、少しでも役に立ちたくて我侭を通した。これは、その時に与えられたものだ。
「先生、他に聞きたいことは? ないんやったら、帰るけど」
疑問に総て答えてやれないのが、心苦しくはあるが、今、置かれている状況では仕方が無い。
「ある。なぜ十二年前の事を詳しく知っているんだ?」
斎の問いにサイラスは険しい表情を浮かべた。長い金髪が、月の光を受けて穏やかに輝いている。
「羽角が、情報を売ったからや」
予想もしなかった名前を口にした。羽角とは、天弥の祖父である羽角恭一郎の事だと考えて間違いないのかと、判断に悩む。
「羽角とは、天弥の祖父の事か?」
「そうや」
あっさりと答えた様子に、斎は思わず何か裏があるのかと疑ってしまう。第一、なぜ天弥の祖父とサイラスが繋がっているのかも理解できない。
それに、情報を売るとは一体何のことなのかと考える。そこまでの何かが、天弥にはあるということなのか。
「なぜ、祖父が孫の情報を売ったりするんだ?」
普通に考えれば在り得ないことだ。
「さあ」
サイラスの様子から、本当に知らないのか、話す気が無いのかを探る。だがどちらにしても、この事についての情報は得られないだろうと判断をした。
「なら、天弥には何があるんだ?」
せめて、天弥に何があるのか、それが分かればと、サイラスの返事に望みを託す。
「悪いんやけど、それは教えられへんのや」
そう言いながらサイラスは、手に持っているペットボトルを斎に向かって放り投げた。斎は反射的にそれを受け取る。
「そろそろ帰るわ」
斎に背を向け、サイラスは窓枠に足をかけた。
「ちょっと待て」
サイラスは動きを止め、視線を戻す。
「なんや?」
窓から飛び出そうとするその姿は、月の光を浴び絵画かフォトグラフを見ているような気にさせる。
「ラブクラフトの創作世界は、実在するのか?」
視線を窓の外へと移しながら、サイラスは月に話しかけるかのように、言葉を発した。
「信じる信じないは、先生の好きにしたらええやん」
そう言い残し、サイラスは窓の外へと飛び出した。同時に、大きな羽ばたきと共に、斎の視界に黒い影が一瞬、横切った気がした。改めて窓を見る。そこに見えるのは夜空だけであり、それは二階以上の高さがあることを物語っていた。
サイラスが放り投げたペットボトルをベッドサイドのテレビの横へと置く。そして、すぐ傍にある時計が目に入る。時刻は一時を過ぎていた。どう考えても、面会時間は過ぎている。サイラスは勝手に忍び込んだのだろうかと、斎は疑問と共に視線を開け放たれた窓へと向けた。
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