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emitte lucem et veritatem
viginti
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なんらかの組織があるのではと考えていたが、間違いではないのかもしれない。それに新たに浮かんだ疑問がある。なぜ、十二年も前のことを知っているのかという事だ。
「俺の雇い主」
個人とも組織とも取れるような答えを返してきた。それは、はっきりと応える事が出来ないということなのかと予想する。だが、先ほど敵対勢力と言っていた。それに加え『やつら』と言った。それらの表現から少なくとも二つ、同じような組織があるということになる。一つはサイラスが所属すると思われるもの、そして他にもう一つ。
「なら、その雇い主の敵対勢力とは?」
少しでも情報が欲しいと思い尋ねてみたが、明らかにサイラスの様子が変わる。困惑しているような感じで、何かを考え込んでいる。これも答えられないのか? そう思った瞬間、サイラスの口が開いた。
「あーあれや、魚や」
おそらく、それが精一杯の答えだったのだろうと予想できる。だが、その一言で十分だった。魚とサイラスが表現したもの、それは深きものと呼ばれる、水棲種族の事を示唆する。父なるダゴンと母なるハイドラを始祖とし、人間と交わりダゴン秘密教団を作り上げている。そして旧支配者の一柱であり、ルルイエに眠る水を象徴する邪神クトゥルーを復活させようとしているものたち。
それに敵対するものといえば、同じく旧支配者の一柱であり、風を象徴する邪神ハスターの復活を望むもの。
「ハスター教団……」
思わず、頭に浮かんだ言葉を斎は口にする。それに対し、サイラスは沈黙を守る。その様子に、自分の予想が当たっているのだと斎は確信した。
ハスター教団は、おぞましい、忌まわしいなどといわれる集団として有名であるが、それは創作世界の中でのことである。現実に存在しているとするならば、それはどのような集団なのかと疑問が湧きあがる。少しでも情報を得られればと思いはしたが、返って謎が増えていく状態だ。
組織の事を聞き出すのは無理だろうと判断をし、斎は改めてサイラスを見る。天弥とそう変わらないであろう年齢で、なぜこのような組織と関わりがあるのか謎だ。そして、なぜ深きものと戦えるのか、それも疑問である。
深きものは下級の奉仕種族とはいえ、無限の寿命と冷酷さを持つ種族だ。外的要因での死を迎えはするが、人の身で立ち向かうのは無謀な事だ。
「なぜ、魚と戦える? それに、風の影響を受けないのはなぜだ?」
サイラスには出会った時から謎がある。あの不思議な風の中で、その力の干渉を一切受けずにいた。
「あー、それはお守りのせいや」
あっさりと答える。
「お守り?」
こうもあっさり答えるとは予想もしていなかったため、少し拍子抜けする。
「これや」
そう答えるとサイラスは、胸元に手を入れ、金色の鎖を手にする。それを引っ張り、鎖に繋がれたコインのようなものを服の中から取り出す。それが見えたとたん、斎の鼓動が大きな音を立て、感じていた嫌な感じが大きくなる。
「なんだ……? それ……」
「俺の雇い主」
個人とも組織とも取れるような答えを返してきた。それは、はっきりと応える事が出来ないということなのかと予想する。だが、先ほど敵対勢力と言っていた。それに加え『やつら』と言った。それらの表現から少なくとも二つ、同じような組織があるということになる。一つはサイラスが所属すると思われるもの、そして他にもう一つ。
「なら、その雇い主の敵対勢力とは?」
少しでも情報が欲しいと思い尋ねてみたが、明らかにサイラスの様子が変わる。困惑しているような感じで、何かを考え込んでいる。これも答えられないのか? そう思った瞬間、サイラスの口が開いた。
「あーあれや、魚や」
おそらく、それが精一杯の答えだったのだろうと予想できる。だが、その一言で十分だった。魚とサイラスが表現したもの、それは深きものと呼ばれる、水棲種族の事を示唆する。父なるダゴンと母なるハイドラを始祖とし、人間と交わりダゴン秘密教団を作り上げている。そして旧支配者の一柱であり、ルルイエに眠る水を象徴する邪神クトゥルーを復活させようとしているものたち。
それに敵対するものといえば、同じく旧支配者の一柱であり、風を象徴する邪神ハスターの復活を望むもの。
「ハスター教団……」
思わず、頭に浮かんだ言葉を斎は口にする。それに対し、サイラスは沈黙を守る。その様子に、自分の予想が当たっているのだと斎は確信した。
ハスター教団は、おぞましい、忌まわしいなどといわれる集団として有名であるが、それは創作世界の中でのことである。現実に存在しているとするならば、それはどのような集団なのかと疑問が湧きあがる。少しでも情報を得られればと思いはしたが、返って謎が増えていく状態だ。
組織の事を聞き出すのは無理だろうと判断をし、斎は改めてサイラスを見る。天弥とそう変わらないであろう年齢で、なぜこのような組織と関わりがあるのか謎だ。そして、なぜ深きものと戦えるのか、それも疑問である。
深きものは下級の奉仕種族とはいえ、無限の寿命と冷酷さを持つ種族だ。外的要因での死を迎えはするが、人の身で立ち向かうのは無謀な事だ。
「なぜ、魚と戦える? それに、風の影響を受けないのはなぜだ?」
サイラスには出会った時から謎がある。あの不思議な風の中で、その力の干渉を一切受けずにいた。
「あー、それはお守りのせいや」
あっさりと答える。
「お守り?」
こうもあっさり答えるとは予想もしていなかったため、少し拍子抜けする。
「これや」
そう答えるとサイラスは、胸元に手を入れ、金色の鎖を手にする。それを引っ張り、鎖に繋がれたコインのようなものを服の中から取り出す。それが見えたとたん、斎の鼓動が大きな音を立て、感じていた嫌な感じが大きくなる。
「なんだ……? それ……」
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