apocalypsis

さくら

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emitte lucem et veritatem

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「先生が、天弥に影響を与える人物だと思われるからや」
 予想もしなかった答えに、新たな事柄に思考を働かせる。
「影響?」
 恋人同士なら、多少なりとも影響しあう事はあるはずだ。そんな事で一々監視をする程なのだろうか。
「先生、十二年前に天弥と会っとるやろ」
 十二年前という言葉に、斎記憶を遡る。
 考え込む斎を、サイラスは静かに見つめた。もし、十二年前に天弥と出会っていなければ、斎は今とは違う道を歩んでいたのだと思う。資料によれば、かなり優秀な人物なのだ。天弥と出会わなければ、絢子と出会う事も無く、教師になる事もなかったはずだ。そして、自分とも出会う事も無く、平和な人生を送っていただろう。
 それとも、十二年前に出会わなくとも、いつかは天弥と出会ったのだろうか。二人を見ていると、そんな気もしてきた。
 斎は十四歳の時の記憶を漁りだす。中等部の頃だと思った瞬間、先日サイラスと対峙した公園で出会った女の子の事が浮かんだ。女の子だと思っていたが、確認をしたわけではない。もしかすると、あれが天弥だったのだろうかと考え付く。
 だが、その子供と特別なにかをしたという記憶は無いが、自分が覚えていないだけで、何かあったのだろうかと、再び考え込む。
 最初は、話しかけても何も反応がない子供だった。それは覚えている。あまりにも綺麗な顔とその様子に、最初は人形なのかと思ったぐらいだった。
「たぶん、会っている……」
 あれだけの美貌が、そう簡単にあるわけではない。なぜ今まで気がつかなかったのかと、悔やむ。
「だが、そんな特別に何かをしたという記憶はないが……」
 さらに記憶を探りながら、呟くように発した。
「天弥は、三歳の時に母親が亡くなっとる。その時のショックなのか、何も反応しなくなってしもうたんや」
 母親が亡くなっているとの言葉に少し考える。天弥は弁当を母親に作って貰っていると言っていた。今現在の母親は、実の母親ではなかったということなのか。
「父親は仕事で忙しいし、天弥はベビーシターに世話をされとったんやけど、必要最低限の事だけで、殆ど人と接触する事は無かったみたいや」
 天弥の過去を聞き、斎はただ黙ってベンチに座っていた幼いその姿を思い出す。
「おそらく、まともに接触したのは先生が最初なんやと思う」
 何の反応もないから、返って楽だったというのがあった。取り留めの無い事を、幼い天弥に向かって話していた。
「先生と会うようになってから、天弥は少しずつ反応を見せるようになったやろ?」
 確かに、会うたびに天弥の表情が豊かになっていった。最後に会ったときには笑顔を見せてくれた。
「だからといって、それが影響を与えるというのは?」
「さあ? やつらがそう思っとるだけで、実際にはどうなのかは知らん」
 そう答えはしたが、自分は普段の天弥の正体を知っている。それに触れる事は話す訳にはいかないので、事実を交えた曖昧な答えを返した。そして、切っ掛けは確かに斎だったのかもしれないが、あれは普段の天弥の本質そのものだ。斎が作り出した人格ではない。
「やつら?」
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