apocalypsis

さくら

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quaecunque sunt vera

septendecim

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 ハンカチを取り出し、天弥に差し出す。
「ありがとうございます」
 両手でそれを受け取り天弥は少し切ない笑みを返した。
「座っていろ」
 天弥の頭に軽く手を置き着席を促すとすぐに斎は歩き出し、名残惜しそうにその柔らかな髪から手が離れた。天弥は、言われた通りソファーへと向かい座る。
 棚から天弥のために用意した簡単に作れるココアとマグカップを取り出し、作り始めた。天弥の好みに合わせて、規定の量よりも多めにココアを入れて作られたそれをテーブルに置くと、互いに身体が触れ合う距離で腰を下ろす。
「ありがとうございます」
 嬉しそうに、目の前のマグカップを両手で持つと静かに口を付けた。
「絢子と初めて会ったのは中等部の三年で、姉貴の友人だった」
 斎の言葉に、天弥の動きが止まる。
「付き合いだしたのは、高等部一年の終わり頃で、大学二年の途中まで付き合っていた」
 知りたいと思いはしたが、実際に斎の口から聞かされると、天弥の胸が締め付けられ表情が曇りだす。
「六年も前に終わっているし、それに……」
 斎が何かを考えるかのように、言葉を詰まらせた。
「……絢子は死んだと聞かされた」
 天弥は不思議そうに小首を傾げる。
「当時、通夜も葬式も出ていないし、ただ死んだと聞かされただけで、実際はどうなのかは分からない」
 続く言葉に、天弥の手にあるマグカップが揺れた。中のココアがこぼれそうになり、少し慌てる。
「だけど、俺の中ではもう過去のことになっている」
 一呼吸置き、斎はゆっくりと言葉を続けた。
「だから、俺が好きなのは天弥だけだ」
 手の中のマグカップに注がれているココアに透明な雫が落ち、そこに映る天弥の顔が揺らいだ。
「泣くな」
 天弥は手にしたマグカップをテーブルの上に置くと、先ほど借りたハンカチを握り締め、目に当てた。
 斎の元彼女に対して、複雑な感情はある。そして亡くなったということを聞いて、どう言い表してよいのか分からないものがある。だが、自分だけだと言ってくれた斎の言葉が、これ以上はないほどに嬉しくて、湧き上がる感情を抑えられないほどの喜びに支配されている。
「さっきの奴の事は、俺もよく分からない」
 天弥は、先ほど見かけた金髪の少年を思い出す。同じ制服を着ていたということは、ここの生徒なのだろうか。あれだけの目立つ容姿なのに、何の噂も聞いたことが無い。もしかして転校生なのだろうかと考えつく。
「天弥が恋人だって知られる訳にもいかないし、わざと誤解されるような言い方をした」
 斎の手が天弥の髪に触れた。
「傷つけて、悪かった……」
 天弥は首を横に振る。他人には言えない関係なのだ。それは、仕方がないことなのだと思う。自分のために、斎がどれだけ大変な思いや我慢をしているのか考えると、天弥の胸が苦しくなる。
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