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quaecunque sunt vera
quattuordecim
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呼び止められ、斎は足を止める。慌てて傍に来た女教師は、何かを言いたげに俯いている。
「何か?」
考えねばならぬことが増え、女教師が煩わしいと思い、少し冷たい感じで尋ねた。
「あの……、お願いしたのに、すみませんでした」
「いえ」
短く答えた後、その場を去ろうとしたが、女教師はまだ何かを言いたそうにしている。
「すみません。この後、生徒に勉強を教える約束がありますので、失礼します」
相手が何かを言い出す前に、作った笑顔でそう告げると、すぐに教室から出て行った。
ドアを閉めると先程の少年を思い出す。サイラスと名乗った。SilasではなくCyrus。これは旧約聖書に出てくる古代ペルシャ帝国の国王、キュロスを英語読みにしたものだ。そしてそれは、イエスの称号として用いられる事となる名前だ。
「Thus saith the LORD to his anointed, to Cyrus, whose right hand I have holden, to subdue nations before him」
歩きながら、思わず旧約聖書の一文を口ずさむ。神の称号を名に持つ少年が、創作の邪神と戦うのか? と、浮かんだ考えを、バカバカしいと振り払った。
とりあえず留学生だというのなら、昨夜のことや絢子のことを、これからいくらでも尋ねる機会はあるはずだ。
「Are you a Christian?」
聞き覚えのある声に、足を止めた。
「No. ってか、日本語分かるんだろ?」
そう答えながら振り返り、視界にサイラスの姿を捉える。
「In English, please」
返ってきた答えに、斎はため息を吐く。
「俺は今、日本語を話しているんだが?」
「I prefer English.」
即答するサイラスに、母国語の方が楽なのはお互い様だと思う。
「とにかく、ここは日本だ。日本語を使え」
サイラスは、自分を見る斎の背後に人影を見つける。記憶の中の成瀬天弥とその人影が一致すると、微かに口角を上げた。
「日本語でええのか?」
なぜかサイラスが確認をしてきた。
「もちろんだ」
承諾を得たからか、サイラスは視線を斎へと移した。
「あんた英語話せるから、そっちの方が楽なんやけど、ま、ええか」
承諾を得たから、後で何を言われても関係はない。そう思い、サイラスは斎の背後の様子を窺う。そこには不思議そうに二人を見ている天弥の姿がある。
「あんたの恋人はどこや?」
サイラスの言葉に対して、特に斎には何の動揺も見られなかったが、天弥の動揺は面白いほどよく伝わってきた。
斎は、サイラスの質問の意味を考える。天弥のことではないはずだ。自分達の関係が知られているとは思えない。そう考えると、それは絢子のことなのだろうと考える。
「北河絢子は、あんたの恋人やろ?」
予想通りの言葉に、斎の表情は少し安堵する。それとは正反対に天弥の表情が不安へと変わるのを、サイラスは面白そうに見ていた。
「それがどうかしたか?」
天弥との事が知られていなければ、それでかまわないと思った。
「何か?」
考えねばならぬことが増え、女教師が煩わしいと思い、少し冷たい感じで尋ねた。
「あの……、お願いしたのに、すみませんでした」
「いえ」
短く答えた後、その場を去ろうとしたが、女教師はまだ何かを言いたそうにしている。
「すみません。この後、生徒に勉強を教える約束がありますので、失礼します」
相手が何かを言い出す前に、作った笑顔でそう告げると、すぐに教室から出て行った。
ドアを閉めると先程の少年を思い出す。サイラスと名乗った。SilasではなくCyrus。これは旧約聖書に出てくる古代ペルシャ帝国の国王、キュロスを英語読みにしたものだ。そしてそれは、イエスの称号として用いられる事となる名前だ。
「Thus saith the LORD to his anointed, to Cyrus, whose right hand I have holden, to subdue nations before him」
歩きながら、思わず旧約聖書の一文を口ずさむ。神の称号を名に持つ少年が、創作の邪神と戦うのか? と、浮かんだ考えを、バカバカしいと振り払った。
とりあえず留学生だというのなら、昨夜のことや絢子のことを、これからいくらでも尋ねる機会はあるはずだ。
「Are you a Christian?」
聞き覚えのある声に、足を止めた。
「No. ってか、日本語分かるんだろ?」
そう答えながら振り返り、視界にサイラスの姿を捉える。
「In English, please」
返ってきた答えに、斎はため息を吐く。
「俺は今、日本語を話しているんだが?」
「I prefer English.」
即答するサイラスに、母国語の方が楽なのはお互い様だと思う。
「とにかく、ここは日本だ。日本語を使え」
サイラスは、自分を見る斎の背後に人影を見つける。記憶の中の成瀬天弥とその人影が一致すると、微かに口角を上げた。
「日本語でええのか?」
なぜかサイラスが確認をしてきた。
「もちろんだ」
承諾を得たからか、サイラスは視線を斎へと移した。
「あんた英語話せるから、そっちの方が楽なんやけど、ま、ええか」
承諾を得たから、後で何を言われても関係はない。そう思い、サイラスは斎の背後の様子を窺う。そこには不思議そうに二人を見ている天弥の姿がある。
「あんたの恋人はどこや?」
サイラスの言葉に対して、特に斎には何の動揺も見られなかったが、天弥の動揺は面白いほどよく伝わってきた。
斎は、サイラスの質問の意味を考える。天弥のことではないはずだ。自分達の関係が知られているとは思えない。そう考えると、それは絢子のことなのだろうと考える。
「北河絢子は、あんたの恋人やろ?」
予想通りの言葉に、斎の表情は少し安堵する。それとは正反対に天弥の表情が不安へと変わるのを、サイラスは面白そうに見ていた。
「それがどうかしたか?」
天弥との事が知られていなければ、それでかまわないと思った。
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