apocalypsis

さくら

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veritas liberabit vos

duodeviginti

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 駐車場へと向かう途中の何気ない会話でも天弥にとっては、とても嬉しいものだった。
「駅の向こう側です」
 一台の車の前で斎が足を止め、天弥も同じく足を止めた。
「結構、近いんだな」
 残念そうにそう答えると、斎は鍵を開けた車に乗り込んだ。天弥は、斎が乗り込んだ車を見る。黒い、2シータの小さなオープンカーは、街中で見かける車ではあるが、何という車なのか分からなかった。少し戸惑いながら、助手席のドアに手をかけると軽く深呼吸をし、ゆっくりと開けた。
 少し遠慮がちに車へと乗り込む。車内は狭く、斎との距離の近さを嫌でも感じさせてくれた。
「悪い、持っててくれ」
 斎は天弥に鞄を渡すとシートベルトをし、エンジンをかけた。それを見て天弥も、自分のカバンを足元に置き慌ててシートベルトをする。
 車内に、シンセ音を主体とするリズム感のある洋楽が流れ出した。渡された斎の鞄を抱きかかえながら、天弥は車内を見回す。狭い空間に低い天井は閉塞感があり、視界も悪い。天井は布製の幌で初めて見るそれは、不思議な感じがした。
「オープンにするか?」
 ジッと幌を見つめる天弥に、斎が声をかける。
「いいんですか?」
 嬉しそうな顔で、天弥は斎を見た。
「別に構わないが、たいして良いものでもないぞ」
 フロントガラスの上にある両サイドの留め金を外す。そしてその中心部分にある取っ手に手を掛け、幌を引き下げると、エアロボードを立てた。一気に空が広がり、先ほどまでの閉塞感が嘘のような開放感に変わり、天弥の胸は躍る。
 嬉しそうな天弥の顔を見て斎は、喜ぶのは最初だけだと思う。実際には、夏は暑く冬は寒い。街中を走っている分には良いが、スピードを出せば風の音がうるさく、吹き付ける風も凄い。見た目ほど良いものではない。だが、これだけ喜ばれるのなら、たまにはオープンで走るのも良いかと思う。
 助手席側にあるサイドブレーキを下ろすと、クラッチを踏みシフトをローに入れる。すぐにゆっくりとアクセルを踏み込み、クラッチを繋いだ。車が動き出すと再びクラッチを踏み込み、すぐにシフトをセカンドに入れる。
 天弥は、車が動き出しても変わらず嬉しそうに空を見上げていた。普段あまり見上げる事の無い空と、その周りを流れていく街並みが不思議な感じがし、興味を惹きつけたのだ。
 信号で停止をすると斎は、嬉しそうに空を見上げている天弥の様子を確認した。先ほど取引した内容は、傍にいるということであった。だが、今の天弥は記憶が無いと訴えているうえ、別人と言っても過言ではないほど、性格も雰囲気も違う。取り引きの内容に今の天弥も含まれるのかが分からず、思わず引き止めてしまった。それに、ただ傍に居るというだけで具体的な指示は何も無かった。自分の行動が正しいのかどうか、少し不安を覚える。
 信号が変わり、再び動き出した車に合わせて流れていく空を堪能した天弥は、斎へと視線を移す。狭い運転席で動く長い脚が、とても窮屈そうに見えた。街中では、停止や発進、加速や減速が多い為か、左手は何度もシフトを動かし、その度に左足がクラッチを踏み込んでいる。
「駅からはどう行くんだ?」
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