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牛追い女、対決③

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「確かに・・・・・・。おっしゃるとおりです。しかしそれはできませんでした」
「ほほう、それはなぜ?」
「それは・・・・・・」

私の心臓が飛び出そうなほどバクバクなっています。正直頭の中が真っ白で、次の言葉が出てきません。
(頑張って私!ここで弱気になってしまってはロバート氏に押し負けてしまう・・・・・・)
心の中で必死に自分を奮い立たせようとしますが、身体はついていかず。カラカラの喉が引き攣ります。薄ら笑いを浮かべているロバート氏から目を反らしたくなってしまいます。どうしようと焦る気持ちすら上滑りする感覚を覚えていると・・・・・・。
スッと、私の右手を横に立っていたアッシュが握ります。

(あ・・・・・・)
強く握るのではなく、まるで倒れそうな私をそっと抱きとめるかのような緩い握り方でしたが、そのつながれた部分から何かとてつもなく温かいものが流れ込んでくるような気持ちがします。振り返って彼の顔を見ることはできませんでしたが、そうせずとも彼が今どのような表情でいるか、手に取るように分かるような気がしました。

(・・・・・・ありがとう、アッシュ)
自然と勇気が湧いてきます。私は改めて深呼吸をし、まっすぐとロバート氏を見据えました。

「緊張することはない、お嬢さん。私はちゃんとあなたの話を聞きますからね。どうぞごゆっくり」
その挑発するような言葉にも、私はもう怯むことはありませんでした。軽く咳払いをします。大丈夫、いけます。私は静かに語り出しました。
「・・・・・・ロバートさん、その男たちは、あなたに放火を命じられたと話していたからです。確かに聞きました」
「まあ!何を言い出すのかと思ったら!」
お姉さまが金切り声を上げます。
「クレア、あなた気でも触れたの?それとも、ロバート様と結婚した私が妬ましくて当てつけのつもりかしら?」
「いいえ、本当のことです。昔からあそこにいた牛たちを退け、作業をするのに効率の良い馬に切り替えると。牛は飼育するお金も惜しいから処分するのだと言っておられました」
私の言葉が終わると、ソルガ男爵が続けました。
「その者たちは昨夜張り込んでいた私の部下が捕らえて今ここにいる」
合図と共に、拘束された二人の男が警察に連れられて部屋に入ってきました。昨夜私たちが牛を連れて去ったあと、放火をしようとしていた現場を現行犯で摑まったそうです。

しかし、それを見てもロバート氏の表情は変わりません。
「なるほど、それが愚かにも王国の牛舎に放火を目論んだ輩共ですか。私たちに先駆けて逮捕していただいたことには感謝いたします。ですが、それとお嬢さんが牛を盗み出した件とは無関係ですよね?仮にその者達が私に命ぜられて放火をしようとしたと証言しても根無しの流れ者の言うことなど信用に値しません。そうでしょう?」
さすが、抜け目なさには定評があるとの噂どおりです。きっと何らかの方法で口封じくらいはしてあるのでしょう。摑まっている男たちも、俯くばかりで何も言おうとしません。
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