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牛追い女、笛の力に目覚める
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小さな吹き口にそっと口をつけ、指定された穴を指で塞いでから、同じく指定された秒数だけ息を吹き込んでみます。ふしゅうっ、と微かな空気音が漏れました。説明によると、今笛からは人間には聞こえない特殊な音色が出ていて牛に影響を及ぼしているはずなのですが・・・・・・・。
牛たちは相変わらず地面に寝そべったまま、尻尾を振っています。
「・・・・・・何も起こらないね」
アッシュがやや落胆したように言いますが、私は牛の耳の動きや鼻の濡れ具合に、僅かな違和感を抱いていました。
「もう少しやってみますわ」
私は深く息を吸い、神経を集中させました。牛が呼吸するのに合わせて動くお腹をじっと見つめると、なんだか牛と一体化したような感覚になってきます。指先は笛に添えているはずなのに、不思議なことに牛の毛皮に触れているような気がしてきました。
牛が首をもたげ、少し左右に振るような動きをします。それは、牛がそよ風に吹かれて気持ち良さそうにしていたり、小さな蝶を追いかけて遊んでいるときのものと同じでした。
(牛さん、楽しい気持ちになっているのですね。私も、仲間に入れてもらってもよろしいでしょうか?)
そのような念を込めて、私は二度、三度と笛に息を入れます。
すると牛たちが、リラックスしたような表情で伸びをしました。そして立ち上がると、大変機嫌が良さそうな声色で、「モオーウ」と一声鳴いたのです。
「おおっ」というソルガ男爵のため息が聞こえました。なおも吹き続けていると、牛たちは二頭寄り添うようにして、その場で軽やかに足踏みを始めます。ここが中庭でなければ、そのまま走り出していってしまうのではないかと思えました。
「素晴らしい!やはりお嬢さんは牛笛に選ばれた使い手だ!」
ソルガ男爵が私の顔を見て唸り声を上げました。
「ファンタスティック!」
ミレイ夫人も拍手で讃えて下さっています。私は驚くやら照れくさいやらで、もじもじと「け、けれどかなりてこずってしまいました」ともごもご言います。
「いやいや、正直ろくに手入れもせずに何年も置いておいたものだからね。それでこれだけの結果が出せるなんて、君は間違いなく才能があるよ」
牛たちは相変わらず地面に寝そべったまま、尻尾を振っています。
「・・・・・・何も起こらないね」
アッシュがやや落胆したように言いますが、私は牛の耳の動きや鼻の濡れ具合に、僅かな違和感を抱いていました。
「もう少しやってみますわ」
私は深く息を吸い、神経を集中させました。牛が呼吸するのに合わせて動くお腹をじっと見つめると、なんだか牛と一体化したような感覚になってきます。指先は笛に添えているはずなのに、不思議なことに牛の毛皮に触れているような気がしてきました。
牛が首をもたげ、少し左右に振るような動きをします。それは、牛がそよ風に吹かれて気持ち良さそうにしていたり、小さな蝶を追いかけて遊んでいるときのものと同じでした。
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すると牛たちが、リラックスしたような表情で伸びをしました。そして立ち上がると、大変機嫌が良さそうな声色で、「モオーウ」と一声鳴いたのです。
「おおっ」というソルガ男爵のため息が聞こえました。なおも吹き続けていると、牛たちは二頭寄り添うようにして、その場で軽やかに足踏みを始めます。ここが中庭でなければ、そのまま走り出していってしまうのではないかと思えました。
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