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牛追い女、はぐらかされる
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「ああ、そのことでしたら・・・・・・」
私は苦笑します。私たちは、いつしかだいぶ歩いてアッシュさんのお店のところまで戻ってきていました。そのすぐ向かいには、私が暮らすことになっている下宿があります。
「私、実のところむしろ晴れ晴れした気持ちでいるんです。もちろん家族から邪険に扱われることにはショックですけれど、でもこの展開はむしろ喜ばしいことのような気がするのです」
精一杯明るく答えたつもりでした。しかしやはり、優しいアッシュにはそうは取られなかったみたいで・・・・・・。
「・・・・・・詳しく聞いてもいいかな?」
シリアスな雰囲気で、そう言われてしまいました。こうして、私たちは夕食を共にすることとなったのです。下宿の調理場をお借りして簡単な食事を作り、食べながら私の身の上話をしていると、もうすっかり夜遅い時間になっておりました。
話を聞き終わったアッシュは、テーブルの上で腕組みをしたまま何やら決心したような顔つきで神妙に言いました。
「クレア。僕、クレアが不自由しないように一生懸命頑張るよ。ついてきてくれるかい?」
「い、いきなりどうされましたか?」
どうも一人で突っ走ってる感のあるアッシュは、しっかり私の目を見ています。
「クレアがそんなひどい目に遭わされていたなんて知らなかった。行き先として僕の店が選ばれたことは良かったことなのかどうか分からないけど、せめて君を支えるために精一杯僕は頑張ろうと思う」
「アッシュ・・・・・・」
胸が詰まります。自分にこんな言葉をかけてくれる人がこの世にいるなんて、思いもしていませんでした。
「・・・・・・傷ついてる君を守る、盾になれたら」
彼の目は、相変わらず真剣です。こちらが照れてしまうほどに。
二人の間に、数秒間の沈黙が訪れました。はっとしたアッシュさんが、あわあわと取り繕います。
「ご、ごめん!僕、勝手に盛り上がって・・・・・・」
「いっいえそんな・・・・・・!」
突然このような感情をぶつけられたことに戸惑いはしましたが、嫌な気持ちになんて全くなりません。
「嬉しい、です・・・・・・」
だから、私は素直な気持ちを口にしたのですが、アッシュは顔を真っ赤にしてこちらから目を反らしてしまいます。そして何かを誤魔化すかのような咳払いをして、改めてこう言いました。
「おほんっ。僕は今のところ、何とか店をやっていける程度には稼げているんだけど、これから君が加わってもっともっと盛り上げていけたらと思うんだ。だから、もしかしたら色々と辛いこともあるかもしれないんだけど、もしよかったら、協力してくれるかい?」
「もちろんです!」
元より、誰かのおんぶに抱っこで生きていく気はありません。
私は、この平民街で手工芸品屋として生きていく事を、この時決心したのでした。
私は苦笑します。私たちは、いつしかだいぶ歩いてアッシュさんのお店のところまで戻ってきていました。そのすぐ向かいには、私が暮らすことになっている下宿があります。
「私、実のところむしろ晴れ晴れした気持ちでいるんです。もちろん家族から邪険に扱われることにはショックですけれど、でもこの展開はむしろ喜ばしいことのような気がするのです」
精一杯明るく答えたつもりでした。しかしやはり、優しいアッシュにはそうは取られなかったみたいで・・・・・・。
「・・・・・・詳しく聞いてもいいかな?」
シリアスな雰囲気で、そう言われてしまいました。こうして、私たちは夕食を共にすることとなったのです。下宿の調理場をお借りして簡単な食事を作り、食べながら私の身の上話をしていると、もうすっかり夜遅い時間になっておりました。
話を聞き終わったアッシュは、テーブルの上で腕組みをしたまま何やら決心したような顔つきで神妙に言いました。
「クレア。僕、クレアが不自由しないように一生懸命頑張るよ。ついてきてくれるかい?」
「い、いきなりどうされましたか?」
どうも一人で突っ走ってる感のあるアッシュは、しっかり私の目を見ています。
「クレアがそんなひどい目に遭わされていたなんて知らなかった。行き先として僕の店が選ばれたことは良かったことなのかどうか分からないけど、せめて君を支えるために精一杯僕は頑張ろうと思う」
「アッシュ・・・・・・」
胸が詰まります。自分にこんな言葉をかけてくれる人がこの世にいるなんて、思いもしていませんでした。
「・・・・・・傷ついてる君を守る、盾になれたら」
彼の目は、相変わらず真剣です。こちらが照れてしまうほどに。
二人の間に、数秒間の沈黙が訪れました。はっとしたアッシュさんが、あわあわと取り繕います。
「ご、ごめん!僕、勝手に盛り上がって・・・・・・」
「いっいえそんな・・・・・・!」
突然このような感情をぶつけられたことに戸惑いはしましたが、嫌な気持ちになんて全くなりません。
「嬉しい、です・・・・・・」
だから、私は素直な気持ちを口にしたのですが、アッシュは顔を真っ赤にしてこちらから目を反らしてしまいます。そして何かを誤魔化すかのような咳払いをして、改めてこう言いました。
「おほんっ。僕は今のところ、何とか店をやっていける程度には稼げているんだけど、これから君が加わってもっともっと盛り上げていけたらと思うんだ。だから、もしかしたら色々と辛いこともあるかもしれないんだけど、もしよかったら、協力してくれるかい?」
「もちろんです!」
元より、誰かのおんぶに抱っこで生きていく気はありません。
私は、この平民街で手工芸品屋として生きていく事を、この時決心したのでした。
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