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牛追い女、家族に愛想をつかされる

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「どういうことですかお父様、私にこの家から出て行けだなんて・・・・・・」

夕食の席で告げられたあまりにも衝撃的な父からの言葉に、私はビロードの椅子の上で背筋を伸ばしたまま硬直しておりました。

もっとも、ショックを受けているのは私だけで、私以外の家族―――お母様もお姉さまも、平然とした顔でナイフとフォークを動かしています。もちろん、今しがた「来週から町へ下って平民に交じって暮らせ」と私に対して命じたお父様も。

お姉さまが見事に玉の輿に乗ることが決まったのがきっかけでした。じきにやって来るお姉さまの婚約者様の目に、私のような出来の悪い娘を入れるのは恥ずかしいとお父様とお母さまが言い出したのです。そして今、私は生家を追われようとしています。

「クレア、これはもう決まったことなのだよ。それにお前にとっても、この家にとっても最善の選択なのだ」
白髪の多い眉毛の下から、冷徹な目を私に向けてお父様は言います。そして、愛用の金のゴブレットでぐいと晩酌の葡萄酒を飲み干しました。
「ロバート殿が、10日後にはもう我が国の酒造委員長に就任なさる。そして再来月には婚礼だ。一刻も早くお前の引越しを済ませなければ」
片手でゴブレットをゆっくり回しながら、お父様は戸惑う私に有無を言わせない口調で言います。
「なんだその目は?お前の実の姉が結婚するのだぞ?しかも相手は貴族の生まれでありながら、若くして酒の先物取引で財を成し、瞬く間に我が国の酒造業を掌握して王族までもに取り入った凄腕の実業家であるロバート殿。祝福する気がないというのか?」

「いっ、いいえ、滅相もありませんわ」

お母様は、すでに私が現在使っている部屋の使い道について考えているようでした。
「新しく入る使用人の寝室がなくて困っていたところだったのよね。あの広さなら三人・・・・・・、いえ頑張れば四人くらいは詰め込めるわね」

羊の赤い肉をフォークに刺し、お姉さまが私に向けてあざ笑うような口調で言います。
「よかったじゃないクレア。これでようやくあのきつ~い家畜の世話から解放されるわよ。おほほ、“牛追い女”もついにお役御免ね」
その言い方に、私は怒りが込み上げてきました。“牛追い女”という呼称が、日夜王国の家畜小屋管理を仕事としている私への侮蔑だということは明らかです。

(お姉さま・・・・・・。ここまであからさまに私を馬鹿にするような発言はさすがに今まではなかったはず・・・・・・。私が家を追い出されて平民同然になるからと、性格が悪いのを隠さなくなったのね)
しかしこのような状況で私は何も言えず、俯いてスカートの裾をぎゅっと握りました。
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