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(なんだか、マーリンとこれからの結婚生活を続けていく自信・・・・・・ないかも)
憂鬱な気分に浸っていると、ふとこちらへの視線を感じました。
「・・・・・・?」
顔を上げると、前を歩くヴァン教授が、チラチラとこちらを見ているのです。
何かあったかとこちらも視線を返すと、彼は慌てたようにサッと視線を外し、またまっすぐ前を見て歩き出しました。

(何を見てたんだろう・・・・・・?)

疑問に思いつつも、私は黙ってそのまま歩き続けるのでした・・・・・・。

港の職員の方はヴァン教授が何か一言二言告げると、さっと顔色を変えてバタバタうるさく裏の部屋へ行ってしまいました。何やら数人でゴニョゴニョ話す声がしばらく聞こえた後に一人が戻ってきて・・・・・・。
「ヴァ、ヴァン教授!すみません、現在上の者と連絡を取っている最中でございます・・・・・・。し、しかし恐らく船内の貨物を検めることは可能かと存じますので、至急キーを持ってまいります!深夜に申し訳ございませんが、今しばらくそちらにおかけになってお待ちいただけますでしょうか・・・・・・」
すごい変わり身の早さです。さっきは取り付く島もなかったのに。
半ば呆れている私の横で、ヴァン教授は悠々としていました。
「ああすまない。よろしく頼むよ」
そうして、私たちは三人で事務所脇の待合に車座になって腰掛け待機をするのでした。

むっつりしている私と、やや緊張気味のマーリン、そして朗らかに饒舌に話しかけてくるヴァン教授。
「いやはや、上手くいきそうでよかったよ。しかし明日は大丈夫かね?これから家に戻ってプレゼンの最終調整かい?寝る時間があるといいけど」
「確かに・・・・・・。まあ、でも資料の作成最中から頭の中で進行のシュミレーションはしています。明日はうちの室長もいてくれるし、恐らく大丈夫だとは思います」
二人の会話にも、私はただ作り笑いで頷くしかできませんでした。非常~~~に居心地の悪い時間が流れていきます。

そんなことを思っていると。

「う、し、失礼・・・・・・。僕ちょっとお手洗いに行って来ますね」
マーリンが席を立ち、事務所の奥のトイレの表示を見つめます。
「ついでに皆の飲み物を取ってきますよ」
そう言って去っていくマーリンの後ろ姿を見つめていると、「やっぱり私のいないところではそこそこいっぱしの大人みたいな振る舞いができるのか」とぼんやり思わざるをえません。普段私に対してもあれくらいの気遣いを見せてほしいのですが・・・・・・。

(ん・・・・・・。でも、そういえば昔はマーリンが淹れてくれたお茶とかをよく二人で飲んでいた気がする)
そんなことを思い出しもするのでした。
さて、教授と二人きりにされてしまったわけですが、マーリンとピリピリした関係になっている今、ほとんど初対面とはいえコミュニケーション能力の高い方と一緒にいたほうがなんぼかマシというものです。私はまた営業スマイルを浮かべて口を開きました。
「彼がいつもお世話になっています。皆さんでよく会合なんかを催されているのですか?」
「ははは。うちの室長がそういう集まりが好きなタイプでね。まあ、我々研究者というものはどうかすると部屋に籠りがちで他者との会話なんかがおろそかになってしまうから、ありがたいよね」
教授は朗らかに答えてくれます。久々に話が通じる人間と出会った気分で、ほっと肩の力が抜けます。
「しかし、セシーヌさんも大変だねえ。こんなことに巻き込まれて。未来の夫のためとはいえ」
「うう・・・・・・」
痛いところを突かれて、思わず苦笑しました。
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