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一瞬良くない考えに取り付かれた頭をいかんいかんと左右に振り、私はちゃかちゃかと一つめのコンテナのチェックを終えます。
やってる間に気づいたのですが、これはうっかり倉庫全体のコンテナの量を見回して、“ああ~、ここまでやり終えたからあとはこのくらいかあ~”などと確認などしてはいけないやつです。そんなことしたらただでさえ途方もなくしんどい作業なのに、もっと心がどんよりしてしまいます。なるべく自分の両手の範囲だけ、手元だけを見ながらやるべきです。
しかしながら、箱を開け、中の物を出し、無心で宛名を見てまた元通りに直す、という単純作業をしていると、やはり気が滅入ってくるというもの。私は五つ目まで進んだところでうっかり自分に課した禁をやぶって、その場で大きく伸びをしてしまいます。
途端に目に入る灰色のコンテナの山、山、山。
「これ本当に全部中開けるの?正気~~~~~????」
ほらもー!こうなるのが分かってたのに~~!!!
自らの愚行を嘆きながら頭を手で抱えて反り返ると、数m離れたところでしゃがんで黙々と作業をしている我が婚約者、・・・・・・いえ、“元”婚約者の姿が目に入りました。そういえば、先ほど自宅で婚約破棄を言い渡されてからまだ三時間ほどしか経っていないのでした。本当に、今日と言う日は時が怒涛のように流れていきますね。
私は凝り固まった肩をポキポキ動かしながら、マーリンの元へ近づきます。
「あなた、前髪にめっちゃでっかいホコリ付いてますよ。ほらじっとして。取るから」
しかし、眉根をぐっと寄せたマーリンは伸ばした私の手から鬱陶しそうに顔を背け、自分で前髪の汚れを取ろうとします。
「全然取れてないですよ。ほらちょっとじっとしてってば。私が取りますから」
再度手を伸ばそうとすると、マーリンがジロリと私を睨むではありませんか。
「お前はいつもそうやって僕を子供扱いする」
「へえ?」
気が抜けた声が出てしまいます。てか、前髪にそんなホコリつけて凄んだところで全く迫力ないっつうのに。
なんのこっちゃと頭の中を疑問符だらけにしている私ですが、思えばこうやってマーリンが突拍子もないことを言い、私がきょとんとするというシチュエーションが、いつものマーリンのおしゃべりスイッチが入る流れなのでした。
「今日のことは完全に僕が悪いんだ。なのにお前、親切にもこんなところまでついてきておまけにこんな重労働まで進んでやって。なんだか僕が馬鹿みたいじゃないか」
「はい。そうですね」
澱みなく答えると、マーリンがギリリと奥歯を噛み締めます。
「ずるい。ずるいよ。僕はいっつもいっぱいいっぱいなのに。お前ときたらどこ吹く風。何かトラブルがあっても平気な顔で解決していくじゃないか」
「んんん?」
何やら話がよく分からない方向へと進んでいます。
「僕が悩んでうんうん言ってるときも、お前はいつも横で“大丈夫、心配ありませんよ”とか言って優しく微笑んでるし!」
「それは良いことなのでは?」
「お前は何も分かってない!」
マーリンはぷいっとそっぽを向き、とっとと自分の作業に戻ってしまいます。
「マーリン・・・・・・」
今までに味わったことのない感覚が私に襲来します。彼の我がままは今に始まったことではありませんが、何だかこれまでとちょっと様子が違う気がするのです。
やってる間に気づいたのですが、これはうっかり倉庫全体のコンテナの量を見回して、“ああ~、ここまでやり終えたからあとはこのくらいかあ~”などと確認などしてはいけないやつです。そんなことしたらただでさえ途方もなくしんどい作業なのに、もっと心がどんよりしてしまいます。なるべく自分の両手の範囲だけ、手元だけを見ながらやるべきです。
しかしながら、箱を開け、中の物を出し、無心で宛名を見てまた元通りに直す、という単純作業をしていると、やはり気が滅入ってくるというもの。私は五つ目まで進んだところでうっかり自分に課した禁をやぶって、その場で大きく伸びをしてしまいます。
途端に目に入る灰色のコンテナの山、山、山。
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しかし、眉根をぐっと寄せたマーリンは伸ばした私の手から鬱陶しそうに顔を背け、自分で前髪の汚れを取ろうとします。
「全然取れてないですよ。ほらちょっとじっとしてってば。私が取りますから」
再度手を伸ばそうとすると、マーリンがジロリと私を睨むではありませんか。
「お前はいつもそうやって僕を子供扱いする」
「へえ?」
気が抜けた声が出てしまいます。てか、前髪にそんなホコリつけて凄んだところで全く迫力ないっつうのに。
なんのこっちゃと頭の中を疑問符だらけにしている私ですが、思えばこうやってマーリンが突拍子もないことを言い、私がきょとんとするというシチュエーションが、いつものマーリンのおしゃべりスイッチが入る流れなのでした。
「今日のことは完全に僕が悪いんだ。なのにお前、親切にもこんなところまでついてきておまけにこんな重労働まで進んでやって。なんだか僕が馬鹿みたいじゃないか」
「はい。そうですね」
澱みなく答えると、マーリンがギリリと奥歯を噛み締めます。
「ずるい。ずるいよ。僕はいっつもいっぱいいっぱいなのに。お前ときたらどこ吹く風。何かトラブルがあっても平気な顔で解決していくじゃないか」
「んんん?」
何やら話がよく分からない方向へと進んでいます。
「僕が悩んでうんうん言ってるときも、お前はいつも横で“大丈夫、心配ありませんよ”とか言って優しく微笑んでるし!」
「それは良いことなのでは?」
「お前は何も分かってない!」
マーリンはぷいっとそっぽを向き、とっとと自分の作業に戻ってしまいます。
「マーリン・・・・・・」
今までに味わったことのない感覚が私に襲来します。彼の我がままは今に始まったことではありませんが、何だかこれまでとちょっと様子が違う気がするのです。
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