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「おいエリス、なにしてる」
ノア様は、何だかとても怖い顔でこちらを見ています。
どうしよう、この状況。
「トルテさんとお話してたんだよ」
エリス様は何ともないように話している。
「どいていただけますか。エリス様」
「はい。乱暴にしてすみません」
エリス様はニコッと笑って、体を退けてくれた。
「エリス。悪ふざけがすぎるぞ」
「妬いているのか?」
ノア様は睨みながら腰の剣へ手をかけた。
手当てしたばっかりなのに、また流血騒ぎになったら大変だ。
「こいつに何かしたのか」
「なにかしたら、いけない? そんな事、ノアに関係ないだろう?」
ノア様は眉間に皺を寄せて、ニヤニヤと笑うエリス様を睨んでいた。
「はぁ、トルテ。お前仕事に戻らなくていいのか」
「は、はい! そうでした。では、失礼致します」
ノア様に助け舟を出され、すぐにその部屋を後にした。
ああ、びっくりした。
あんなに綺麗な顔がすぐ近くにあったら、心臓が持たない。
ーーー
トルテが部屋を出て行った後、エリスと俺が二人きりになる。
「何のつもりだ、エリス」
「何のって?」
「なぜ、あいつに構うんだ」
「それって、ノアに関係ある?」
確かに、俺とあいつには何の繋がりも無い。
「私に押し倒されて、キスのひとつも許してくれないとはね……彼女を落とすのには骨が折れそうだ」
「おい、あいつに変な真似はするな」
「変な真似? 心外だな。私は本気だよ」
そう言いながら服のホコリを払い、ドアノブに手をかけ部屋を出るエリスの後を追う。
「……あいつは、観察対象だろ」
捻り出して出たのが、これくらいしかない事に落胆する。
「それって、ノアが言えた事?」
ぐうの音も出ない。散々関わってきたのは自分だ。
「あの時は、挑発するためにトルテさんの名前を出したけど。もう、あんな事は絶対に言わないよ」
「どういうことだ」
「軽々しく名前を出せなくなったって事」
遠回しな言い方に腹が立つ。
いや、こいつのこういう所は昔から変わっていないが。
「彼女可愛いよね。才色兼備かと思えば隙もあってさ。ミハイル王子が彼女の虜になるわけだ」
「いい加減にしろ」
相手がエリスだからだろうか。俺とは真逆で、人気もあるエリスが彼女を気に入ってしまうのが無性に嫌だと感じた。
どの男からも奪われたくない。
触れられたくない。
「彼女は誰のものでも無いんだから、俺のものにしたって構わないだろう?」
廊下を歩くエリスは、満面の笑みで横にいる俺にそう言って出て行った。
「なぜ、あいつなんだ。王宮の女は他にもいる。お前はご夫人方のサロンにも良く招かれるじゃないか」
「それはさ。ノアが良く分かっているんじゃないか?」
「な、何がだよ」
すると、エリスが立ち止まって俺の顔を見た。
「……彼女じゃなきゃダメな理由だよ」
そう口にすると、再びエリスは歩き出す。
そう。他の誰かじゃだめなんだ。あいつじゃないと。
「おいっ待て!」
ノア様は、何だかとても怖い顔でこちらを見ています。
どうしよう、この状況。
「トルテさんとお話してたんだよ」
エリス様は何ともないように話している。
「どいていただけますか。エリス様」
「はい。乱暴にしてすみません」
エリス様はニコッと笑って、体を退けてくれた。
「エリス。悪ふざけがすぎるぞ」
「妬いているのか?」
ノア様は睨みながら腰の剣へ手をかけた。
手当てしたばっかりなのに、また流血騒ぎになったら大変だ。
「こいつに何かしたのか」
「なにかしたら、いけない? そんな事、ノアに関係ないだろう?」
ノア様は眉間に皺を寄せて、ニヤニヤと笑うエリス様を睨んでいた。
「はぁ、トルテ。お前仕事に戻らなくていいのか」
「は、はい! そうでした。では、失礼致します」
ノア様に助け舟を出され、すぐにその部屋を後にした。
ああ、びっくりした。
あんなに綺麗な顔がすぐ近くにあったら、心臓が持たない。
ーーー
トルテが部屋を出て行った後、エリスと俺が二人きりになる。
「何のつもりだ、エリス」
「何のって?」
「なぜ、あいつに構うんだ」
「それって、ノアに関係ある?」
確かに、俺とあいつには何の繋がりも無い。
「私に押し倒されて、キスのひとつも許してくれないとはね……彼女を落とすのには骨が折れそうだ」
「おい、あいつに変な真似はするな」
「変な真似? 心外だな。私は本気だよ」
そう言いながら服のホコリを払い、ドアノブに手をかけ部屋を出るエリスの後を追う。
「……あいつは、観察対象だろ」
捻り出して出たのが、これくらいしかない事に落胆する。
「それって、ノアが言えた事?」
ぐうの音も出ない。散々関わってきたのは自分だ。
「あの時は、挑発するためにトルテさんの名前を出したけど。もう、あんな事は絶対に言わないよ」
「どういうことだ」
「軽々しく名前を出せなくなったって事」
遠回しな言い方に腹が立つ。
いや、こいつのこういう所は昔から変わっていないが。
「彼女可愛いよね。才色兼備かと思えば隙もあってさ。ミハイル王子が彼女の虜になるわけだ」
「いい加減にしろ」
相手がエリスだからだろうか。俺とは真逆で、人気もあるエリスが彼女を気に入ってしまうのが無性に嫌だと感じた。
どの男からも奪われたくない。
触れられたくない。
「彼女は誰のものでも無いんだから、俺のものにしたって構わないだろう?」
廊下を歩くエリスは、満面の笑みで横にいる俺にそう言って出て行った。
「なぜ、あいつなんだ。王宮の女は他にもいる。お前はご夫人方のサロンにも良く招かれるじゃないか」
「それはさ。ノアが良く分かっているんじゃないか?」
「な、何がだよ」
すると、エリスが立ち止まって俺の顔を見た。
「……彼女じゃなきゃダメな理由だよ」
そう口にすると、再びエリスは歩き出す。
そう。他の誰かじゃだめなんだ。あいつじゃないと。
「おいっ待て!」
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