落ちこぼれ一兵卒が転生してから大活躍

きこうダきこう

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最終章

おまけ 結婚式

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 兄ちゃんが騎士団団長となり僕が近衛兵隊に転属し、そしてアリスが騎士団を退団してはや数年。僕やアリス、そして当事者らにとって待ちに待った日がやって来たのだった······。
 

 事前にパーシバル近衛兵隊隊長に許可をもらってジェシーにも一声かけ、数日前ジニー神父様と共に王都を発ってようやくウッド村がある森が見える辺りまでやって来た。

 そのまま森に入り「もうじき村に着きますから」と神父様に声を掛けて暫くした後、村の入口が見えて入口付近にアリスが佇んでいた。

 そのアリスの姿を見掛けたので「おーい! アリスーっ!」僕が声を掛けると「あっ、レックスー! 神父様ー!」アリスも手を振って返してきた。

「久しぶり。何とか間に合ったかい?」「ええ。まだ時間は大丈夫よ」と僕達がやり取りをした後アリスが「神父様も遠いところを本当にありがとうございます」神父様にお礼を述べた。

 神父様も「いいえ。私の方こそ招待してもらえて嬉しい限りですよ」と答えたところで僕達はアリスに今日の主役の1人であるアッシュ兄ちゃんがいる控え室に案内してもらった。

 
 控え室前に着いて「お兄ちゃん。レックスと神父様が着いたわよ」とアリスが伝えると、「おう! 入ってもらってくれ!」と中から返答があったのでドアを開けた。

 すると、「「うわぁ!」」「ほぉ!」部屋へ入った順番に僕達は兄ちゃんの晴れ姿を見て驚きの声を上げた。

「どうだ、レックス。俺の晴れ姿をみて」兄ちゃんが真っ先に僕へ意見を求めてきたので、「うん。凄く似合ってるしカッコイイよ」と意見を述べたら「へへっ。ありがとな」と返してきた。

 僕とやり取りをした後、「神父様もこの度はご出席して頂きまして、ありがとうございました」と神父様にお礼を伝えたところ、さっきのアリスとのやり取り同様「いいえ。私の方こそアッシュ君とメリッサさんの新たな門出をお祝いする式に招待してもらえて嬉しい限りですよ」「そう言ってもらえると、こちらこそ本当に嬉しい限りです」とやり取りをした。

 その神父様とのやり取りが一段落したところで、「ところで兄ちゃん」「ん? 何だ? レックス」今回の話を聞いた時から疑問に思っていた事を兄ちゃんに尋ねてみた。

「結婚式をウッド村で開くのは分からなくもないけど、何で王都からの招待客が僕と神父様の2人だけなの?」

 そう僕に聞かれ、兄ちゃんはあぁやっぱり聞いてきたかと言わんばかりの表情や仕草をし、同じ部屋にいたレオおじさんやお姉ちゃんのお父さん、父さんも似たような反応を示した。

「そうなのよ。私もその事を聞かされた時は何で? って聞いたんだけど、『当日レックス達が来てから話す』としか言わないのよ」とアリスも少々怒り気味にそう告げた。

「悪かったな、アリス。······正直この事は、俺のわがままから始まった事なんだ」「兄ちゃんの、わがまま?」「あぁ」と兄ちゃんは理由を語りだした。

 
「レックス。お前の前世では俺とメリッサは出会ってはいなかったんだよな?」「っ!」と聞かれ、「······うん。少なくとも僕が生きていた間は······」と答えた。

 続けて「それに、この村もトロルの大群に滅ぼされてるはずなんだよな?」「······うん」

「だから本来出会うはずのなかった俺達を出会わせてくれて、その上結婚に至らせてくれた事に対して神様に感謝の気持ちを伝え、そして誓いを立てるなら本来出来るはずのなかったウッド村で、しかも本当なら祝ってもらえないはずだった村の皆だけに祝ってもらおうと決めてたんだ」「兄ちゃん」

「ただし」「ただし?」そこで兄ちゃんは神父様を見つめ「前の人生でお世話になっていた神父様だけは招待しようと思ってたんだ」「アッシュ君」

「だから王都からの招待客は僕と神父様だけにしたんだね」「ああ。まぁ他の連中には王都に帰ってから結婚したと報告して、それで祝いたい奴らに祝ってもらえばそれで良いだろうからな」「まぁ、確かにそうだね」

「だろ。で、俺のこの考えをまずメリッサに伝えたら、あいつも賛同してくれてな。それでその後あいつのご両親に結婚の許しを貰いに行った時にこの話をしたら、お二人も賛同してくれたんだ」「おじさん」そう聞いて僕はおじさんの方を見た。
  
 するとおじさんは僕の方を見てニコリと笑って「君の事はあの戦勝パーティーの席でハウル様から聞いていたからね。アッシュ君からその提案を聞いた時にはすぐに了承し、今回も私と妻の2人だけで来る事にしたんだよ」と仰ってくれた。

「と言うわけだ」そこまで言ったところで兄ちゃんは再び真剣な顔つきとなった。

 
「けどな、レックス」「ん? 兄ちゃん?」「俺もあいつも、お前には本当に心の底から感謝してるんだからな」

「えっ?」「俺達が出会えたのも、そもそもはお前が村にいた時の姿を見て俺があいつを助けたのがきっかけだったんだからな」「そうだったね」再会した当初から何度も兄ちゃんから聞いてるからなぁ。

 すると突然兄ちゃんは僕を抱きしめてきた。「に、兄ちゃん?」「ホントに、ホントにありがとなレックス。俺達を出会わせてくれて」「······うん」正直、兄ちゃんが自発的にお姉ちゃんを助けた事がきっかけのはずなんだけど······まぁいっか。

 そう思いながら暫く兄ちゃんに抱きしめられ、アリスを始め周りにいた父さんやおじさん達はそんな僕達を静かに見守り続けたのだった。

 
 暫くしたら「······さてと、俺との再会の挨拶はこれぐらいでもう良いだろ」「えっ?」

 そう言って兄ちゃんは笑みを浮かべ「あいつの所にもさっさと顔を見せに行ってやってくれ」と言われたので、「そうだね。行こっか、アリス」「うん!」「じゃあ、また後でね」「おう!」と僕達はドアの前まで向かった。

 そしてドアの所まで来たところで後ろを振り返り、ニヤ顔をしながら「アッシュ殿」と言った。

 それを聞いて兄ちゃんは一瞬疑問に思ったが、すぐに思い出して「お、お、お前······まだ"あの事"根に持ってんのかぁーーっ!!」と怒鳴ってきた。

「冗談だって冗談。じゃあね!」と軽く言ってアリスと共に部屋を出て行った。

「ったくあいつめぇ」と怒りが収まっていないアッシュに「何の事だ? アッシュ」レオが聞いたので、「実は······」レックスが騎士団から最初に依頼を受けた時の話を皆に話し、それを聞いて全員が納得したのだった。
 
「それにしましても······」神父様が徐に話しだし、「レックス君のタイムリターナーの経験は、彼自身だけでなく周りの人達の人生をも、良い意味で大きく変化させた事になりましたねぇ」と言い、「本当に、そうですね」アッシュも同意したところで再び皆でレックス達が出て行ったドアを見据えたのだった······。


 一方部屋を出た僕達は、アリスに先ほどの事を説明し納得されつつも呆れ返られたのだった······。

 そんな会話をしている内にお姉ちゃんの控え室前に着いた。

「お姉ちゃん。レックスを連れて来たけど、入って良い?」とアリスが尋ねると、「良いわよ! 入って!」兄ちゃん以上に元気な返答があったのでドアを開けた。

 すると「うわぁ! 凄く綺麗よ、お姉ちゃん!」「ありがとう」アリスの驚く声が聞こえて僕も部屋に入ったら······ドアを閉めるのも忘れ、動くことも何も言うこともなくお姉ちゃんの姿に見とれてしまったのだった······。それだけアリスが驚いたぐらいお姉ちゃんの姿は美しく綺麗であった。

 そのため「いらっしゃい、レックス君」と言われたが返答する事が出来ず、「······クス、レックス、······レックス!」アリスに体をつつかれながら何回か呼ばれて我に返り、ドアをようやく閉めた。

「全くぅ。いくらお姉ちゃんの姿に見とれたからって、ボーッとしすぎよ!」とアリスに言われたが、頭の中では未だボーッとしていたのだった。

「フフフッ。しょうがないわよ、アリスちゃん」とお姉ちゃんがフォローしてくれた上で、「それで、改めてどう? レックス君。私の姿を見て」と聞かれたので思わずその時真っ先に思っていた「······兄ちゃんには勿体無い」という言葉が出てしまったのだった······。

 そのため「あ、あんたねぇ」「レックス君」アリスには呆れ返られおばさんには苦笑いを浮かべられたのだった。

 
 しかしそんな2人の反応とは裏腹に、「フフッ。やっぱりそう思うわよね」何とお姉ちゃんは僕の言った事を肯定し受け入れたのだった。

 流石にそれを聞いて「お、お姉ちゃん!?」「ちょ、ちょっとメリッサ!?」アリスは驚きお姉ちゃんのお母さんは慌てた様子で娘の名前を呼んだ。

「しょうがないわよ。だって騎士団の団長っていう立場ではあるけど、王都の"大貴族の娘"と、ある村の"いち青年"との結婚何だから、本来はレックス君が言ったような思いになるのが普通でしょ?」と皆に説明してくれた。

 それを聞いて流石に皆納得したのだった。「だけど······」そこでお姉ちゃんはまた僕を見据え「そんな2人を引き合わせてくれたのは、他ならぬレックス君なのよ」と言った後、ゆっくりと僕の方に歩み寄って来て······「レックス君」と呟いた後兄ちゃん同様僕を優しく抱きしめ「本当に、ありがとう。アッシュやレックス君、アリスちゃんと出会わせてくれて」と言ってきた。

 それに対し僕は「ううん。僕の方こそお姉ちゃんのお陰で色々な事をやり抜く事が出来たんだから······」と返し、お姉ちゃんが僕を体から離した後「おあいこだよ」と伝えた。

「フフッ。それもそうね」とお姉ちゃんが言い返してくれたところで僕とアリスは部屋を出て、結婚式場に向かったのだった······。

 レックス達が部屋を出て行った後も暫くドアを見据えていたメリッサの肩にローテン婦人が手を置き、「さっ、もう良いでしょ? メイクをし直しても」「ええ、お母様」とメリッサは答えた。

 そうしてメリッサはレックス達が来たら涙を流してしまう恐れがあるという事で待ってもらっていた最終メイクをしてもらい、開始時間を待った。

 ······そして、結婚式の開始時間が訪れた。


 僕とアリスも2人への挨拶を終えて結婚式会場の集会所に着き、主役の2人が来るのを待った。

 暫くして2人がやって来て、結婚式が始まった。それからは特に問題もなく淡々と進行が進み······2人が口づけを交わし合ったところで結婚式は無事終了した。

 
 その後集会所前に式の参列者や村人らが全員集まり2人が出て来てお姉ちゃんによるブーケトスが行われた。

 多くの女子女性陣がブーケを取ろうと揉みくちゃになり······結果的に偶然飛んで来たブーケをキャッチしたアリスの物となったのだった······。

 それには必死で取ろうとしていた人達も、主役の2人や他の村人からもドッと笑いが起き出したのだった。

 僕も皆につられて笑いだした時、ガサガサッ! 突然近くの茂みが揺れ出した。それに気付いてそちらを見たら、そこからとても懐かしい姿が現れたのだった。

 その姿を見て驚いた後、「兄ちゃーーん! お姉ちゃーーん! ーーーっ!」僕は大声を出して2人に茂みの方を見るよう叫んで指で示した。

 それに気付いた2人や村人は僕が示した方向を見た。そこには······ベアーがいたのだった。

 さらにその直後、隣の茂みから森に帰ってきていたベアーズ······とその"彼女"が現れたのだった······。

 それらを見て兄ちゃん達は驚き、その直後兄ちゃんは片手を上げてベアー達に手を振り、お姉ちゃんは微笑みを浮かべて手を振ったのだった。

 そんな兄ちゃん達の姿を見た後ベアーもベアーズも「グワァーーーッ!」「ガァーーーッ!」と雄叫びをあげて2人を祝福してくれたのだった。そんな2匹の様子を見て皆が笑いだした。

 その皆の様子や雰囲気を眺めて僕は天を見上げて(神様。本当に、本当に皆をトロルの襲撃から守らせて頂き、そして······)兄ちゃんの隣にいるお姉ちゃんを見つめて(お姉ちゃんと出会わせて頂きまして、ありがとうございました!)と神様にお礼を述べたのであった······。


 そして、この兄ちゃんとお姉ちゃんの結婚式から数年の内に僕やアリスの結婚式がそれぞれウッド村以外 (僕とジェシーのは2人の強い希望から孤児院横の教会で、アリスとマーシュのはマーシュの故郷の町)にて執り行われたのだった······。
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