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最終章
第221話 タイムリターナーの真意
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パーティー会場でハウル様が皆に僕の事を話している頃、当の僕は······孤児院横の教会の中にいた。
一番前の席に座って天井の方を見上げながら(本当に良かった。導きの玉に見せられた予知夢を回避させられて。でも、まさかハインリヒ先生の言っていた事態にもう出くわす事になるなんて)と思っていた。
導きの玉にアレクさんが魔王に殺される予知夢を見せられた時、ふと養成学校3年の夏季休暇前筆記試験3問目の内容を思い出し、他人の命 (アレクさん)を取るか仲間の命 (自身)を取るか考えた。
その時、当時解答した内容である"たとえ他人を犠牲にして自分達が助かっても、恐らく仲間達からは何故自分達を助けたのだと言われる恐れがあるため、依頼人の命を優先します"を思い出し、アレクさんを助ける事に決めたのだった。今回はそれが功を奏した結果となり本当に良かったと思っていた。
そこへ、「レックス君」「あ、神父様」神父様が教会に入って来られた。
「どうやら、君のタイムリターナーの役目も無事終わらせる事が出来た見たいですね」「はい。何とか無事に終わりました」
「良かったですね。そして、これからは君にとって新しい未知なる人生を歩む事となるのですね?」「そうなりますね」
「不安ですか?」「いいえ。確かにこれからは未知なる人生かもしれませんが、僕の周りには素晴らしい仲間達がいますので、全く不安は感じてはおりません」
「それは良かったですね」「はい!」そう神父様には答えたが、正直1つだけ気になっている事はあった。
そう思っていると後方から「本当に、良くやってくれたのぉ。レックスよ」かなり以前にも聞いた懐かしい人の声が聞こえてきた。
それに気付いて「そ、その声は!?」と後ろを振り返ったが、誰もいなかった。
が、足下を見たらベアーズがちょこんと座っていたので、「ベアーズ。今、誰かいなかったか?」と聞いたが首を傾げたので「確かに今、初代様の声が聞こえたような気がしたんだけど······」と言ったらまた「儂の声を覚えててくれたか」と足下から聞こえてきたためベアーズを見た。
「え?······ま、ま、まさか?」と思っていると、ベアーズがにこりと笑って「そのまさかじゃよ」とベアーズが喋った直後、ベアーズが眩しい光に包まれた。
流石に眩しすぎたため目を瞑り、再び目を開けた時には目の前に座って息切れを起こして体を小刻みに揺らしているベアーズと、その横に初代様が立っていたのだった。
「しょ、初代様!?」「久しぶりじゃな、レックスよ。そして······」初代様は神父様の方を見て「ジニーよ」と声を掛けた。
神父様もその声を聞いて「そ、そのお声は、もしや!?」と言うと初代様もニコリと笑ってその通りと言わんばかりの反応を示した。
それを見て僕も恐らく神父様が死んだ時に僕同様神の使いとして話し掛けてきた声だったんだなと理解した。
そのやり取りの後、「でも初代様。いつからベアーズの体の中に入っておられたんですか?」と聞くと、「ん? 今回はついさっき借りたのじゃが、その前はこ奴がお主の体に引っ付いて養成学校で生活するようになってから」「え゛っ」「卒業するまでずっとじゃよ」と答えられた。
それを聞いて「養成学校で生活するようになってって、確かコイツが養成学校で生活するようになったのって······」1年の冬季休暇前試験の時以降だったはず。と言う事は······。
「あの頃からぁ!?」かなり前から長い間入っていたと知ってとても驚いた。
「その通りじゃ。その頃からこ奴の体を借り、その時その時にお主の手助けをしてきたわけじゃよ」「そ、そうだったんですか?」
「そうじゃよ。例えばブラックスコーピオン討伐クエストの折、崖下にあった奴らの家族がいた洞窟を見つけてやったり」
「あっ!」「ピエールという子の為に鉱石に関する頼み事を探し当ててやったり」
「ああっ!」「ダークエルフとの戦いの折にはヴァンパイアバットにロックサイ、こ奴の父親に応援を頼みに行ったり」
「あーーっ!!」「極めつけは、マーシュという者のためにデザートフラワーを取りに来た際に咥えて待っておってやったりとな」
「······」どれもこれも身に覚えがありすぎてとうとう固まってしまった。
「しかもデザートフラワーの件に関しては、こんな髭まで落としておいてやったのにのぉ」そう言って初代様は白く光輝いた毛 (髭)を見せてきた。
「あっ! そ、それは······」そう、その毛の事は僕もあの騒動の後部屋に戻ってきた際に気付きはしたが、すぐに考えるのをやめそれからは気にしなくなったのだった。
「と、あの頃は色々とお主の事を助けてやってたのじゃよ」「そ、そうだったんですか。ても、どうしてそこまで?」
「転生させる時に言うたじゃろ。『お主が死んだ事で世界に発生する悪影響をなんとしても阻止したい』と」
そう、それだ! 正直それが魔王軍との決戦から帰って来て以降ずっと気になっていた事だ。
そのため、「あの、初代様。1つ伺っても良いでしょうか?」「何じゃ? レックス」「その、僕が死ぬ事で発生していた悪影響とは、結局一体何だったのでしょうか?」と初代様に聞いてみる事にした。
すると初代様も「んー、まぁ良いじゃろう話してもな。それに······」「それに?」「まだその悪影響を回避出来たかは分からぬのじゃ」「ええっ!?」ど、どういう事だ。僕があの戦いで死ななかったら大丈夫なはず何じゃあ?
「実はのぉ、その悪影響というのはアッシュ・ハーメルンが大きく関わる事なのじゃ」「ア、アッシュ兄ちゃんが!?」ますます訳が分からなくなってきた。
「お主の前の人生でも今回も先の決戦が終わった後、アッシュ・ハーメルンを王国騎士団の次期団長に就任させようと神はお考えになられておるのじゃ」「兄ちゃんを、騎士団団長に!?」確かに、あれだけの実力や実績があるだろうから当然だよな。
「じゃが、前回はいくら当時の団長が就任を頼んでもあ奴は拒み続けたのじゃ」「えっ。ど、どうしてですか?」
「流石に拒み続けられたので団長もある時しびれを切らして理由を尋ねてみたら、『ずっと一緒に生きてきて、最後の時もすぐ傍にいた1人の者ですら守れなかった俺が、多くの団員の命を背負う何て事は出来ません』と答えたのじゃ」「そ、それって?」「そう。そなたの事じゃよ、レックス」初代様からその事を聞いて驚いた。
「しかも、当時あの男とそなたの間で何か大きな揉め事が起こっておったみたいで、その事を解決させる事が一生出来なくなってしまった事も理由のようじゃったしのぉ······」
(ハッ!)それを聞いて、恐らくアリスの怪我の一件の事だと思った。
「それで仕方なく当時の団長は別の者に団長を就任させたのじゃが······その事によって後々の世界が大混乱に陥る事となってしまったんじゃよ」「そ、それが世界に発生した悪影響だと?」
「そうじゃ。そのため神はやはりあの時アッシュ・ハーメルンを何としてでも騎士団団長に就任させなければと決意なされ、そのための障害となったレックス、お主の死を無かった事にしようとお主をタイムリターナーにする事に決めたのじゃよ」そこまで聞いてようやくレックスも全て納得したのだった。
「あれ、という事は······もし今後団長が兄ちゃんに団長就任を要請してもそれを兄ちゃんが断り続けたりしたら?」「そう。お主のこれまでの経験が全て無駄に終わってしまうという事じゃ」
「そ、そんなぁ」「恐らく今回は大丈夫だとは思うが、まだ安心は出来ないという事じゃよ」「は、はぁ」そうかもしれませんが、さっきの話を聞いたらやっぱり責任重大じゃありませんか。
「まぁ今後の事はともかく、レックスよ」「はい」「これまでの長い間、我々の要望通り先の決戦終了まで無事生き残ってくれた事、神に代わってお礼を申し上げる。本当にありがとう」
そう言って初代様が頭を下げられたので、「いえ、お礼を言うのは僕の方ですよ。赤ん坊の頃から人生をやり直させて頂けたお陰で、僕にとっては本当に素晴らしい人生を過ごす事が出来ましたから」と伝えた。
すると初代様は笑顔になって「そう言ってもらうと、我々もそなたをタイムリターナーとして選んだ甲斐があったというものじゃ」と仰った。
そして、「さて、では儂はもう戻らせてもらうとしよう。これでもう会う事は無いと思うが、レックス、そしてジニーよ、さらばじゃ」と言った直後初代様の体が眩く輝き出し、輝きが消えた時には初代様の姿はなくなっていた。
姿は見えなくなったが、(本当にありがとうございました、初代様)教会の天井を見ながら初代様にお礼を述べたのだった。
「それにしましても、まさかそのような事情だったとは」「ええ。僕も本当に驚いていますよ」神父様と初代様から聞いた事について感想を述べ合った。
その後「て言うか······」僕は足下にいたベアーズを掴み上げ「まさかお前の中に初代様がずっといたなんてな」とベアーズをジト目で見たが、当のベアーズはキョトンとした表情を浮かべて首を傾げていたのであった。
「お前なぁ。全く······」と呟き項垂れた直後、「レックス!」教会の入口にジェシーが立っていた。
「ジェシー」「やっぱりここにいたのね」
「どうして分かったの?」「私じゃなくてメリッサさんが教会だろうって見当をつけたのよ」
「ハハッ。流石はお姉ちゃんだ」「そのメリッサさんもハウル様から『今頃レックスも神に感謝を伝えておるはずじゃろう』って聞いたから見当をつけれたのよ」
「ハウル様もパーティー会場に来てるの!?」「ええ。レックスがこっそりアレクさんに世界樹の枝を渡した事について説明して下さる為にね」「あっ······そ、そのため」
「あと、皆にレックスの秘密をお話になられる為にね」「えっ、えーーっ!?」「フフッ。ハウル様も神様から頼まれて説明に来られたみたいだし、もうバレても何の影響も出ないから問題無いんですって」
「そ、そうなんだ」「ええ。だから皆もハウル様の話を聞いた直後は暗い雰囲気になったんだけど、ハウル様から皆でパーティーを楽しむ事がレックスに対して感謝を伝える事にもなるんだって仰ったら、フィンラル様もそれに同意なされて皆また騒ぎ出したのよ」「ハハッ。そっか」確かに、その方が僕も嬉しいしな。
と僕達の話が一段落したところで「ではお二人は別のパーティー会場にいらっしゃいませんか?」と神父様が尋ねてきた。
「「別のパーティー会場?」」2人して聞き返し、「ええ。私が本来ここに来たのも君をそこへ招待するためだったんですから」「別のって······もしかして?」僕が聞き返したら、神父様は何も言わなかったが笑顔になられたのを見て、やはり子供達によるパーティーだと確信した。
それはジェシーも同じように思ったみたいで、2人で同時にお互いの顔を見合って「「はい!」」と返事をした。
「それじゃあ皆待ちくたびれているでしょうから、早速行きましょうか」「はい! 行こっ、ジェシー」「うん!」
ジェシーの手を握った瞬間、プチッ! スルッと僕の腕にまだ半分繋がった状態で巻かれていたミサンガの残り半分が突然切れ、地面に落ちたのだった。
流石にそれを見た僕もジェシーも驚き、「な、何で今ミサンガが切れたんだ?」「ホントよねぇ?」と二人とも理由が分からなかった。
しかし少しして「······あっ、そうか!」僕が大声を上げた。
「何? レックス」ジェシーが聞いてきたので「ほら、ジェシーにも話したじゃない。僕がミサンガに込めた願い事」「えっ? 確か······」「もう一度君や子供達と再会出来ますようにだったでしょ?」と話し、「あっ!」ようやくメリッサも思い出した。
「君とは王都に帰って来てすぐに会ったけど、子供達とはまだ一度も再会してないんだ」「だからこの後子供達に再会出来る事になったから」「うん。ミサンガが切れたんだよ」レックスの説明を聞いてジェシーも納得したのだった。
「なら、早くその願い事を果たしに参りましょうか?」と神父様に促されて僕達はパーティー会場に向かい、会場に着いてからはケリーやジョンを始め子供達と長いことパーティーを楽しんだのだった······。
一番前の席に座って天井の方を見上げながら(本当に良かった。導きの玉に見せられた予知夢を回避させられて。でも、まさかハインリヒ先生の言っていた事態にもう出くわす事になるなんて)と思っていた。
導きの玉にアレクさんが魔王に殺される予知夢を見せられた時、ふと養成学校3年の夏季休暇前筆記試験3問目の内容を思い出し、他人の命 (アレクさん)を取るか仲間の命 (自身)を取るか考えた。
その時、当時解答した内容である"たとえ他人を犠牲にして自分達が助かっても、恐らく仲間達からは何故自分達を助けたのだと言われる恐れがあるため、依頼人の命を優先します"を思い出し、アレクさんを助ける事に決めたのだった。今回はそれが功を奏した結果となり本当に良かったと思っていた。
そこへ、「レックス君」「あ、神父様」神父様が教会に入って来られた。
「どうやら、君のタイムリターナーの役目も無事終わらせる事が出来た見たいですね」「はい。何とか無事に終わりました」
「良かったですね。そして、これからは君にとって新しい未知なる人生を歩む事となるのですね?」「そうなりますね」
「不安ですか?」「いいえ。確かにこれからは未知なる人生かもしれませんが、僕の周りには素晴らしい仲間達がいますので、全く不安は感じてはおりません」
「それは良かったですね」「はい!」そう神父様には答えたが、正直1つだけ気になっている事はあった。
そう思っていると後方から「本当に、良くやってくれたのぉ。レックスよ」かなり以前にも聞いた懐かしい人の声が聞こえてきた。
それに気付いて「そ、その声は!?」と後ろを振り返ったが、誰もいなかった。
が、足下を見たらベアーズがちょこんと座っていたので、「ベアーズ。今、誰かいなかったか?」と聞いたが首を傾げたので「確かに今、初代様の声が聞こえたような気がしたんだけど······」と言ったらまた「儂の声を覚えててくれたか」と足下から聞こえてきたためベアーズを見た。
「え?······ま、ま、まさか?」と思っていると、ベアーズがにこりと笑って「そのまさかじゃよ」とベアーズが喋った直後、ベアーズが眩しい光に包まれた。
流石に眩しすぎたため目を瞑り、再び目を開けた時には目の前に座って息切れを起こして体を小刻みに揺らしているベアーズと、その横に初代様が立っていたのだった。
「しょ、初代様!?」「久しぶりじゃな、レックスよ。そして······」初代様は神父様の方を見て「ジニーよ」と声を掛けた。
神父様もその声を聞いて「そ、そのお声は、もしや!?」と言うと初代様もニコリと笑ってその通りと言わんばかりの反応を示した。
それを見て僕も恐らく神父様が死んだ時に僕同様神の使いとして話し掛けてきた声だったんだなと理解した。
そのやり取りの後、「でも初代様。いつからベアーズの体の中に入っておられたんですか?」と聞くと、「ん? 今回はついさっき借りたのじゃが、その前はこ奴がお主の体に引っ付いて養成学校で生活するようになってから」「え゛っ」「卒業するまでずっとじゃよ」と答えられた。
それを聞いて「養成学校で生活するようになってって、確かコイツが養成学校で生活するようになったのって······」1年の冬季休暇前試験の時以降だったはず。と言う事は······。
「あの頃からぁ!?」かなり前から長い間入っていたと知ってとても驚いた。
「その通りじゃ。その頃からこ奴の体を借り、その時その時にお主の手助けをしてきたわけじゃよ」「そ、そうだったんですか?」
「そうじゃよ。例えばブラックスコーピオン討伐クエストの折、崖下にあった奴らの家族がいた洞窟を見つけてやったり」
「あっ!」「ピエールという子の為に鉱石に関する頼み事を探し当ててやったり」
「ああっ!」「ダークエルフとの戦いの折にはヴァンパイアバットにロックサイ、こ奴の父親に応援を頼みに行ったり」
「あーーっ!!」「極めつけは、マーシュという者のためにデザートフラワーを取りに来た際に咥えて待っておってやったりとな」
「······」どれもこれも身に覚えがありすぎてとうとう固まってしまった。
「しかもデザートフラワーの件に関しては、こんな髭まで落としておいてやったのにのぉ」そう言って初代様は白く光輝いた毛 (髭)を見せてきた。
「あっ! そ、それは······」そう、その毛の事は僕もあの騒動の後部屋に戻ってきた際に気付きはしたが、すぐに考えるのをやめそれからは気にしなくなったのだった。
「と、あの頃は色々とお主の事を助けてやってたのじゃよ」「そ、そうだったんですか。ても、どうしてそこまで?」
「転生させる時に言うたじゃろ。『お主が死んだ事で世界に発生する悪影響をなんとしても阻止したい』と」
そう、それだ! 正直それが魔王軍との決戦から帰って来て以降ずっと気になっていた事だ。
そのため、「あの、初代様。1つ伺っても良いでしょうか?」「何じゃ? レックス」「その、僕が死ぬ事で発生していた悪影響とは、結局一体何だったのでしょうか?」と初代様に聞いてみる事にした。
すると初代様も「んー、まぁ良いじゃろう話してもな。それに······」「それに?」「まだその悪影響を回避出来たかは分からぬのじゃ」「ええっ!?」ど、どういう事だ。僕があの戦いで死ななかったら大丈夫なはず何じゃあ?
「実はのぉ、その悪影響というのはアッシュ・ハーメルンが大きく関わる事なのじゃ」「ア、アッシュ兄ちゃんが!?」ますます訳が分からなくなってきた。
「お主の前の人生でも今回も先の決戦が終わった後、アッシュ・ハーメルンを王国騎士団の次期団長に就任させようと神はお考えになられておるのじゃ」「兄ちゃんを、騎士団団長に!?」確かに、あれだけの実力や実績があるだろうから当然だよな。
「じゃが、前回はいくら当時の団長が就任を頼んでもあ奴は拒み続けたのじゃ」「えっ。ど、どうしてですか?」
「流石に拒み続けられたので団長もある時しびれを切らして理由を尋ねてみたら、『ずっと一緒に生きてきて、最後の時もすぐ傍にいた1人の者ですら守れなかった俺が、多くの団員の命を背負う何て事は出来ません』と答えたのじゃ」「そ、それって?」「そう。そなたの事じゃよ、レックス」初代様からその事を聞いて驚いた。
「しかも、当時あの男とそなたの間で何か大きな揉め事が起こっておったみたいで、その事を解決させる事が一生出来なくなってしまった事も理由のようじゃったしのぉ······」
(ハッ!)それを聞いて、恐らくアリスの怪我の一件の事だと思った。
「それで仕方なく当時の団長は別の者に団長を就任させたのじゃが······その事によって後々の世界が大混乱に陥る事となってしまったんじゃよ」「そ、それが世界に発生した悪影響だと?」
「そうじゃ。そのため神はやはりあの時アッシュ・ハーメルンを何としてでも騎士団団長に就任させなければと決意なされ、そのための障害となったレックス、お主の死を無かった事にしようとお主をタイムリターナーにする事に決めたのじゃよ」そこまで聞いてようやくレックスも全て納得したのだった。
「あれ、という事は······もし今後団長が兄ちゃんに団長就任を要請してもそれを兄ちゃんが断り続けたりしたら?」「そう。お主のこれまでの経験が全て無駄に終わってしまうという事じゃ」
「そ、そんなぁ」「恐らく今回は大丈夫だとは思うが、まだ安心は出来ないという事じゃよ」「は、はぁ」そうかもしれませんが、さっきの話を聞いたらやっぱり責任重大じゃありませんか。
「まぁ今後の事はともかく、レックスよ」「はい」「これまでの長い間、我々の要望通り先の決戦終了まで無事生き残ってくれた事、神に代わってお礼を申し上げる。本当にありがとう」
そう言って初代様が頭を下げられたので、「いえ、お礼を言うのは僕の方ですよ。赤ん坊の頃から人生をやり直させて頂けたお陰で、僕にとっては本当に素晴らしい人生を過ごす事が出来ましたから」と伝えた。
すると初代様は笑顔になって「そう言ってもらうと、我々もそなたをタイムリターナーとして選んだ甲斐があったというものじゃ」と仰った。
そして、「さて、では儂はもう戻らせてもらうとしよう。これでもう会う事は無いと思うが、レックス、そしてジニーよ、さらばじゃ」と言った直後初代様の体が眩く輝き出し、輝きが消えた時には初代様の姿はなくなっていた。
姿は見えなくなったが、(本当にありがとうございました、初代様)教会の天井を見ながら初代様にお礼を述べたのだった。
「それにしましても、まさかそのような事情だったとは」「ええ。僕も本当に驚いていますよ」神父様と初代様から聞いた事について感想を述べ合った。
その後「て言うか······」僕は足下にいたベアーズを掴み上げ「まさかお前の中に初代様がずっといたなんてな」とベアーズをジト目で見たが、当のベアーズはキョトンとした表情を浮かべて首を傾げていたのであった。
「お前なぁ。全く······」と呟き項垂れた直後、「レックス!」教会の入口にジェシーが立っていた。
「ジェシー」「やっぱりここにいたのね」
「どうして分かったの?」「私じゃなくてメリッサさんが教会だろうって見当をつけたのよ」
「ハハッ。流石はお姉ちゃんだ」「そのメリッサさんもハウル様から『今頃レックスも神に感謝を伝えておるはずじゃろう』って聞いたから見当をつけれたのよ」
「ハウル様もパーティー会場に来てるの!?」「ええ。レックスがこっそりアレクさんに世界樹の枝を渡した事について説明して下さる為にね」「あっ······そ、そのため」
「あと、皆にレックスの秘密をお話になられる為にね」「えっ、えーーっ!?」「フフッ。ハウル様も神様から頼まれて説明に来られたみたいだし、もうバレても何の影響も出ないから問題無いんですって」
「そ、そうなんだ」「ええ。だから皆もハウル様の話を聞いた直後は暗い雰囲気になったんだけど、ハウル様から皆でパーティーを楽しむ事がレックスに対して感謝を伝える事にもなるんだって仰ったら、フィンラル様もそれに同意なされて皆また騒ぎ出したのよ」「ハハッ。そっか」確かに、その方が僕も嬉しいしな。
と僕達の話が一段落したところで「ではお二人は別のパーティー会場にいらっしゃいませんか?」と神父様が尋ねてきた。
「「別のパーティー会場?」」2人して聞き返し、「ええ。私が本来ここに来たのも君をそこへ招待するためだったんですから」「別のって······もしかして?」僕が聞き返したら、神父様は何も言わなかったが笑顔になられたのを見て、やはり子供達によるパーティーだと確信した。
それはジェシーも同じように思ったみたいで、2人で同時にお互いの顔を見合って「「はい!」」と返事をした。
「それじゃあ皆待ちくたびれているでしょうから、早速行きましょうか」「はい! 行こっ、ジェシー」「うん!」
ジェシーの手を握った瞬間、プチッ! スルッと僕の腕にまだ半分繋がった状態で巻かれていたミサンガの残り半分が突然切れ、地面に落ちたのだった。
流石にそれを見た僕もジェシーも驚き、「な、何で今ミサンガが切れたんだ?」「ホントよねぇ?」と二人とも理由が分からなかった。
しかし少しして「······あっ、そうか!」僕が大声を上げた。
「何? レックス」ジェシーが聞いてきたので「ほら、ジェシーにも話したじゃない。僕がミサンガに込めた願い事」「えっ? 確か······」「もう一度君や子供達と再会出来ますようにだったでしょ?」と話し、「あっ!」ようやくメリッサも思い出した。
「君とは王都に帰って来てすぐに会ったけど、子供達とはまだ一度も再会してないんだ」「だからこの後子供達に再会出来る事になったから」「うん。ミサンガが切れたんだよ」レックスの説明を聞いてジェシーも納得したのだった。
「なら、早くその願い事を果たしに参りましょうか?」と神父様に促されて僕達はパーティー会場に向かい、会場に着いてからはケリーやジョンを始め子供達と長いことパーティーを楽しんだのだった······。
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