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第26章 決戦

第214話 集結

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 王都を旅立った僕達はヒト族の領土を北上して亜人領内に入った。そして暫く進んだ後に陽が暮れてきたので、ある森の中で夜営する事にした。

 夜営準備が完了して休息を取り出したところで僕は辺りをキョロキョロと見渡した。

 そんな僕を見てジャックが「どうした? レックス。キョロキョロと」と聞いてきた。

「前に亜人領へ来た時もこの森で一晩過ごしたもんだからつい」「えっ、この森に来た事があるのか?」

「うん。ほら、卒業試験で聖なる火山ホーリーヴォルケーノに向かっていた時にね」「あー、あの時か」「何の事だ?」デビットが聞いてきたので、その時の事を2人に話してやり、その話題で盛り上がって夜を過ごしたのだった······。

 翌日には森を抜けて歩みを進めた。またこの頃からゴブリンやオークなどの魔物らと遭遇する事が頻繁に発生したが、僕達騎士団に所属している者や有志の中で屈強な男らの手によってあっけなくせん滅させる事が出来た。

 そうして歩みを進め聖なる火山がハッキリ見える距離までやって来た。今回はその聖なる火山を回り込むように進む事になっているので聖なる火山を横目に見ながら進み、その際僕は(本当に運命を回避させれたら来てくれるのかなぁ?)以前に湖のほとりでファイアードラゴンと対話した時に交わした約束の事に想いを馳せていた······。

 
 それからさらに数日歩みを続け、ようやく「見えてきたぞ!」団長が叫んだので前方を見ると、広大な森が見えてきた。

「あそこが集合場所の森だ!」と聞いて皆達成感に満ち溢れたのだった。

 森に入ってからも暫く歩き続けたところで、団長が「遅くなってすまない」と誰かに声を掛けた。

「おぉ、来たか」「まぁしょうがないだろ。それだけの大人数を引き連れて来たのだからな」と声を掛けられたエルフ族とドワーフ族の恐らくそれぞれの代表者らが答えた。

 そして「ヒト族はあちらのスペースを利用してくれ」と言われたので「分かった。皆、付いて来てくれ!」の団長の合図で再び歩き出し、自分達の野営地スペースに付いたところで野営準備を行い、その後は指示があるまで休息や準備をしているように言われて解散となった。

 
 僕も暫くはジャックやデビットと会話し、その後散歩に行くと2人に告げ、兄ちゃんを見掛けて散歩に誘ったら一緒に行くと言われたので2人して散歩に出掛けた。

 歩きながら周りを見渡し、前世での光景とを比較して(あの時もこんな感じだったなぁ)と思いつつ、兄ちゃんとも「本当に多くの種族や人数が集まったなぁ」「うん。それだけ皆が魔王やその配下の魔物達に苦しめられているんだよ、きっと」「だろうな」などと話しながら歩いていた。

 すると前方から、「レックスーー! アッシュさーーん!」「「ロース!」」ロースが僕達を呼びながら駆け寄って来た。

「久しぶり、2人とも」「うん。ロースもやっぱり参戦するんだね?」「あぁ。けど今回は僕だけじゃないんだけどね」「えっ、それどういう事?」

「私も参加するという事だよ、レックス君」そこへロースのお父さんであり砂漠のエルフの里の長であるヨートス様が現れた。

「「ヨートス様!」」「久しぶりだね、2人とも」「ヨートス様も参加されるんですか?」

「ああ。フィンラル様から仰せつかったからね」「フィンラル様から?」

「まぁそうでなくても参加するつもりでいたがね」「えっ、どうしてですか?」「エルフ族の代表フィリップとは親友関係なんだよ」「そうなんですか!?」

「ああ。先のダークエルフとの戦いの折にも共に戦ったし、今回聖剣を探しに向かう際わざわざ村に寄ってくれたので労いの言葉を掛けてやったからね。そのあいつから呼び掛けられたとなれば応じなければと思ってね」「確かにそうですね」

 
 そう答えた後、「それともう1つ······」と目を閉じ、再び目を開いた後僕を見据え「君の事だよ、レックス君」と答えた。

「ぼ、僕の、事?」「ああ。······君のの原因はこの戦いにあるんだろう?」「「っ!!」ひょっとして、フィンラル様からお聞きになられたのですか?」「ああ。詳しい事は聞いてはいないけどね」

 そう言ってヨートスはフィンラルから話を聞かされた時の事を思い返した。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 数日前、ヨートスはフィンラルに呼ばれてエルフの王国の彼の自室を訪れた。

「ヨートス。もうじき始まる魔王軍との戦いにはお前も参加するつもりか?」
「はい。あいつが呼び掛けた事ですので、息子のロースと共に参加するつもりです」
「そうか。まぁロースも色々経験して成長しただろうから、エルフ族の戦士の1人として十分戦力となってくれるだろうに」
「お褒めの言葉ありがとうございます」
「その際だがヨートスよ」
「はい」
「ロースや同じエルフ族以上に、レックス君の事を特に気に掛けてやってくれ」
「レックス君の? どうして······(ハッ)ま、まさか!?」
「事情を知っているだけに察しがいいな。その通りだ。彼のタイムリターナーとなった原因が、この戦いにあるみたいなんだ」
「そうでしたか。······分かりました。レックス君の事も出来る限り気に掛けるように致します」
「うん、頼んだぞ。ヨートス」
「はい!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「フィンラル様からも君の事を気に掛けてやってくれと頼まれたからね」「フィンラル様」

 そこまで黙って話を聞いていたロースが、「ねぇ父さん。何の話?」と唯一事情を知らないだけにそうヨートス様に尋ねた。

「ん? ああ。この戦いが無事終わった後お前にも説明してあげるよ」「何だよそれ」「「はははっ」」まぁ、この戦いの後だったら構わないだろう。

 
 そう思っていたら遠くの方から「レックスーーっ!」聞き覚えのある声で呼ばれたのでそちらを向くと、「ポ、ポピー!?」がこちらに駆け寄って来ていた。

 そして、「久しぶり!」といつものように僕に抱き付いてきた。

「久しぶりだけど、ポピーも来たんだ」「うん。お父様に命じられて最前線で指揮を取るようにって」「そっか」まぁ少数種族の王子ともなればそうなるよなと納得した。

 するとポピーが「ねぇ、レックス」「ん? 何だい?」「あの事、どうなったの?」と言って抱き付いていた腕に力を込めた。

(ああ、そうか)ポピーにもタイムリターナーの事を話していたから心配するのも当然かと納得した。

 そのため、ポピーの頭の上に手を置いてやり、「大丈夫だよポピー。多分あの事は回避させる事が出来そうだから」と声を掛けてやった。

 すると「えっ!?」とポピーは驚き、「本当かい!? レックス君!」とヨートス様も僕に聞き返してきた。

「はい。あれのきっかけとなった出来事も判明しまして、それを回避させるように行動してきましたので、多分大丈夫になったと思われます」と2人に答えてあげた。

 それを聞いて「そうかい」とヨートス様はホッとし、ポピーも「良かったぁ!」と心の底から喜んでいた。

 そんな僕達の様子を見て兄ちゃんも安堵しており、逆にロースは更に訳が分からず首を傾げ続けていたのだった。

 
 そうしてロースやヨートス様とポピーと別れて陣営に戻ろうとしたら、「レックス君!」懐かしい声で呼ばれたのでそちらを振り向き、「アレクさん!」声を掛けてきたアレクさんの名前を呼んだ。

 アレクさんが僕達の方に歩み寄って来ている時に「あの人が、アレクさんか?」アレクさんを見た事が無かった兄ちゃんが聞いてきたので「そうだよ」と答えてあげた。

「久しぶりだね、レックス君」「はい。アレクさん、聖剣入手本当におめでとうございます!」

「ありがとう。だけど、聖剣を入手出来たのも君とのお陰だよ」と導きの玉を取り出した。

「あっ、それ」と導きの玉を返してもらった。「正直、この玉には本当に途中助けてもらってばかりだったよ」「えっ、どうしてですか?」

「実は君からその玉を預かってからというもの、よく夜に夢を見るようになったんだ」「夢を、ですか?」「うん。しかもその夢の内容の事が後々実際に起こったりしてたんだよ」

(っ!? 予知夢か!)アレクさんの話を聞いて、アレクさんの見た夢が導きの玉が見せた予知夢だったと理解した。

「そのお陰で何度も危機的状態を未然に回避させる事が出来たんだ」「そうだったんですか」それなら本当に導きの玉を渡して正解だったんだと喜んだ。

 
「それに······」アレクさんが言い出して一呼吸置き、周りを見渡しながら「これだけ多くの種族や人達に集まってもらえたのも、レックス君、君のお陰なんだよ」「ぼ、僕の!?」そうアレクさんから言われて流石に驚いた。

「覚えているかい? 君の卒業試験で聖なる火山に向かっていた時の最後の夜に2人で話した内容を?」「はい。それぞれどうして冒険者や騎士団になりたいと思ったのかと、それぞれの思い出話だったと」「うん。その時君がダークエルフ達との戦いの際、多くの魔物や種族の力を借りて倒す事が出来て、『他の種族らと協力する事が大切なんだ』って言ってたよね?」「そ、そう言えば······」そんな事を言った事があったような······。

「実は僕達も途中何度も言い合いやケンカをしていてね。特に聖剣が眠っていると言われていた迷宮の前に着いた時には、誰が聖剣を手に入れるのかで本当に大喧嘩をしてしまって、そのまま皆バラバラになるところだったんだよ」「「えーーっ!?」」流石にそれを聞いて兄ちゃんもビックリしていた。

「けど、その時君から聞いたその言葉を思い出して3人を説得したんだよ。それに最初に応じてくれたのが、実際その戦いに参戦していたエルフ族のフィリップだったんだ」確かにさっきヨートス様からもそう聞いていた。

「その後他の2人も賛同してくれて一緒に迷宮に入り、結局僕が聖剣を手に入れる事になったんだけど、誰からも異論は出なかったんだ」そうだったんだ。

「それで迷宮内での事やこれまでを振り返って、僕達だけで挑んでも魔王を倒せるかどうか分からないだろうという結論に達し、大勢の人に協力を呼び掛ける事にしたんだ」「それであのお触れだしを出すように頼んだのですね?」

「ああ、そうなんだ。だからこれだけの人を集められたのも、君からのあの言葉があったからなんだよ」改めてそう言われ、嬉しい気持ちなった。

「それじゃあ、魔王軍との戦いではお互い頑張ろう!」「「はい!」」と2人で返事をした後アレクさんはその場を離れた。

「まさかそんな事があったなんてな?」「うん。それにしても、まさか今回のこの多くの種族や人の集まりのきっかけが僕にあったなんて、信じられないよ」「そりゃそうだろうなぁ」

 まさか、ここにきてまで僕の過去の行動で周りに大きな影響を与える事となったなんてと心底驚いていた。

 その後改めて陣営に向かい、途中でドワーフ族のエルリック王子ともすれ違ったので、挨拶と兄ちゃんの紹介をして別れた。

 
 その夜。団長によって僕達は一同に集められ、明朝魔王城に向かうと伝えられた。

 そして支援、魔法、武力の各部隊毎の配置や役割などを大まかに伝えられ、その後は各部隊に別れて作戦会議などが行われた。

 僕達武力部隊は連合軍内の前線部隊中央部分に配置し、魔物達を倒しつつも他の種族の部隊へ応援に行けるような態勢を取る事となった。

 また実際そうなった場合に備え、事前に何人かをすぐ応援に駆け付けれるように担当種族が決められ、僕とジャック、デビットに他数名が海人族担当に当てられ、その中で何と僕がその集団の責任者 (小隊長)に選ばれたのだった。

 理由は団長曰く、最も彼らと友好関係が取れているだけにすぐ連携がとれ、その上で他の者へも指示を出せれると判断したからだそうだ。それを聞いて僕も納得し、引き受ける事にしたのだった。

 他の種族の担当者も次々に当てられ、最後に前線で部隊を率いる責任者 (総隊長)として······兄ちゃんが選出された。兄ちゃんも躊躇う事なく「分かりました」と引き受けたのだった。

 最後に団長から他の種族の配置状況を聞いた上で兄ちゃんが僕らの配置場所をそれぞれ伝えた上で解散となった。

 その後自分のテントに戻りながら前世の事を思い出し、(それにしても、前は兄ちゃんが副団長の1人として一個小隊を指揮して僕は別の部隊の一隊員の1人だったのが、今回は兄ちゃんが総隊長で僕が小隊長の1人って······いくらなんでも変わりすぎだろ!)と驚いていたのだった。

 
 そうしてテントに戻り眠りについたのだが、その夜中にまた導きの玉によって予知夢を見させられたのだ。その予知夢の内容が余りにも強烈なものであったため、すぐに跳ね起きてしまった。

(い、今のも、もしかして······)と思いながら鞄に目をやったら、やはり中が青白く光っていたので導きの玉が見せた予知夢だと判断した。それ故に、(だとしたら······)を真剣に悩み、考え出した。

 暫く考えた末、(よし!)ある結論に達し、皆を起こさないように鞄の中からを取り出してテントを抜け出した。

 
 暫くしてから戻ってきて、(これであの夢は回避出来るだろう)と言い聞かせて眠りについた。

 そして夜が明け、運命の日が訪れたのだった······。
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