上 下
211 / 224
第26章 決戦

第211話 閑話ー資格審査を終えて~勧誘~ー

しおりを挟む
 一方その頃参加資格審査を終えたサンドリア城内······。

「ふぅ。······くっ! いてててて」(あの野郎。本当に思いきりぶつかってきやがって)と自室にてレックスとの対決で負った傷を気にしながらグレン王子は鎧などを脱いでいた。

 そこへ、トントン!「グレン王子、エドガーです」「おう、入れ!」と言われエドガー隊長が部屋に入ってきた。

「失礼致しま······グレン王子! その傷は!?」エドガー隊長はグレン王子の体の傷を見て驚いた。

「大したこと無い。レックスとの対決で負った傷だ」「そ、そこまで激しい対決だったのですか?」「あぁ。まぁ、な······」と少々照れ臭そうにエドガー隊長に対決時の事を話した······。


時は遡り、レックスとグレン王子との対決は······。「試合······開始!」「「うぉーーーっ!!」」両者一斉に雄叫びをあげながら相手に突っ込んだ。

 そしてレックスのダガーとグレン王子の小剣とがぶつかり合い、そのまま両者一歩もその場から動かない状態となり、暫くして両者一旦それぞれ後方に下がり、グレン王子がそのままレックスに突っ込んで行ったが、レックスはそれをかわし(その際僅かにダガーで斬り付け傷を与えた)てスキル"ダブルスラスト"を放った。

 しかしそれをグレン王子は小剣でそれぞれ防いだ。その後「ハァ、ハァ、や、やるなぁ」と息を切らしながら呟いた。

「ハァ、どうも」レックスもグレン王子程ではないが息を切らしてそう言葉を返した。

 それからは再びダガーや時たま爪を用いてグレン王子に攻撃を仕掛け、逆にグレン王子が小剣で斬り付けてくるのを防いだりして時間だけが過ぎていった。

 
 試合が始まって大分時間が経過し、「ハァ、ハァ、ハァ······」レックス以上にグレン王子の息が切れ始めたのをレックスは感じ取り、(今なら······)そう思ったところで片手でエアーブロウの準備をしだした。

 少しして息も落ち着いてきた頃にレックスがエアーブロウの発動準備をしている事に気づいたグレン王子は、「あれは······っ!」何か分かるやすぐにレックスへ斬りかかったのだが、一歩レックスの方が早くエアーブロウを発動させたのだった。

「っ! チィッ!」しかしそのエアーブロウをグレン王子は何とか横へかわして直撃を免れた。しかしその際バランスを崩して転がった状態となったのだった。

 その隙にレックスはグレン王子に近付き、転がった彼に爪を突き付けた。

 それに気付いたグレン王子は「······フッ。参った。俺の敗けだ」そう言葉を発したところで審判役の兵士が「それまで! 勝者、レックス・アーノルド!」とレックスの勝利を宣言し、試合は終わったのだった······。


「そ、そうだったのですか」「あぁ。本当に見事にやられたよ」とレックスとの試合の事を聞いてエドガー隊長も唯唯驚いていたのだった。

「ところで、お前の方はどうだったんだ?」とグレン王子から問われ、「······正直、私もアッシュ・ハーメルンに完敗でした」とエドガー隊長は答えたのだった。

「まぁ今回はその方が魔王軍との戦いで活躍してくれるだろうから有り難いが、さすがに本来なら国の王子や近衛隊の隊長が一騎士団員に敗れたとあっては不味いだろうにな」「さ、左様でございますね」

 などと会話をした後、「ところでグレン王子。審査前に仰っておりましたと言うのは?」と尋ねたのだった。

 そう、今回エドガー隊長がグレン王子の部屋を訪れた理由は、資格審査が行われる前に······。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 
「エドガー!」名前を呼ばれて振り返ったら、「っ! グレン王子!」がいた。

 そして、「この資格審査が終わったら俺の部屋に来てくれ。話したい事がある」とグレン王子はエドガー隊長に伝え、「わ、分かりました」「頼むな」エドガー隊長も応じてグレン王子はその場を離れたのだった······。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「ああ。エドガー、正直······レックスは近衛隊ででもやっていけると思うか?」「レ、レックスが近衛隊でですか!?」「ああ」突然のグレン王子からの問い掛けにエドガー隊長は一瞬驚いた。

 それから気持ちを落ち着かせてグレン王子からの問い掛けについて考えだし、そして······「恐らく、大丈夫ではないでしょうか」と答えたのだった。

「その根拠は?」「これまでの奴の騎士団内での活躍などを振り返っても職務を全う出来る事は間違いないでしょう。その過程でマリア王女様とも頻繁に接する事がありましたし、ジェシー王女様に至っては言わずもがなですので王族との謁見も問題ないかと。あと、そうした過程でお城に何度も訪れておりますので、城内の警備や王族の護衛の職務もすぐに応対出来ると思いますので」「なるほど。よく分かった」

「······あの、グレン王子。本気でレックスを近衛隊にとお考えなのですか?」「ああ。しかもを用意してな」「と、特別な役職!?」「ああ」とグレン王子は自分の考えた特別な役職名とその職務内容をエドガー隊長に説明した。


 それを聞いたエドガー隊長は「そ、そう言う事ですか! それなら確かに近衛隊がうってつけかもしれませんね」

「だろ? にとってもな。もちろん近衛隊に転属となったら俺や父上達の護衛などをしてもらう事も出てくるかもしれないが、基本はその職務に専念してもらえば良いだろうに」「そうですね。それにその職務なら他の者達も納得するでしょうし」

「ならお前も特に異存は無しで良いんだな?」「ええ。ございません」「よし。なら今度パーシバルへ奴自身の事を話すついでにレックスの事も伝えてもらうように話しておこう。ご苦労だったな。もう良いぞ」「はっ、失礼致します!」エドガー隊長は部屋を出て行った。


 エドガー隊長が出て行った後グレン王子は窓から外の景色を見ながら「まっ、これぐらいの特別措置を取ったところで、誰も文句は言わないだろう。これまでのあいつのこの国への貢献度を考えたら、な」と呟いたのだった······。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

グレイス・サガ ~ルーフェイア/戦場で育った少女の、夢と学園と運命の物語~

こっこ
ファンタジー
◇街角で、その少女は泣いていた……。出会った少年は、夢への入り口か。◇ 戦いの中で育った少女、ルーフェイア。彼女は用があって立ち寄った町で、少年イマドと出会う。 そしてルーフェイアはイマドに連れられ、シエラ学園へ。ついに念願の学園生活が始まる。 ◇◇第16回ファンタジー大賞、応募中です。応援していただけたら嬉しいです ◇◇一人称(たまに三人称)ですが、語り手が変わります。  誰の視点かは「◇(名前)」という形で書かれていますので、参考にしてください ◇◇コンテスト期間中(9月末まで)は、このペースで更新していると思います  しおり機能で、読んだ場所までジャンプするのを推奨です…

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

処理中です...