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第26章 決戦

第210話 有志参加資格審査

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 ケリーが孤児院で過ごす事になった翌日。

「とうとうこの日が来たな」「うん」「そうだね」僕達3人はサンドリア城前に来ていた。団長から伝えられた魔王軍と戦う有志への参加資格審査を受けるために······。

 それぞれ受付を済ませ、今回も武力、魔法、支援の希望する部隊別で審査が行われるためアリスとはここで別れ、兄ちゃんと武力部隊希望者の控室に向かった。

 
 控室に入ったら既に多くの人がおり、「やっぱりすごい人数だね」「ああ。何せ10歳以上なら誰でも参加出来るんだからな」「確かに」そう考えれば養成学校入学試験や騎士団入団試験の比じゃないか。

 そう思っていたら、「レックス! アッシュさん!」「あ、ジャック」ジャックが近寄って来た。

「やっと来たか」「うん。先に着いてたんだね」「あぁ。あと向こうにデビットも来てるぜ」

「えっ、デビットも応募してたんだ!?」「みたいだぜ。あとアッシュさん、オリバー······さんも来ているみたいです」

「え、あいつも応募してたんだ」「みたいです。僕らも何も聞いてはいませんでしたので驚いたんですが」

「そうか。じゃあレックス、また後でな」「うん」兄ちゃんと別れてジャックとデビットの下に向かった。

 その際、先のケリーの家族捜索の折に一緒になったネールから自分も応募したと聞かされた話題となり、お互い驚いていたのだった。その後デビットと久しぶりの再会を果たし、時間となるまで3人で談笑しあった。

 
 そして時間となり「それでは、これより武力部隊希望者の参加資格審査を始める!」と城の兵士が告げた。

 僕らへの審査方法は、お城の方が用意した相手 (お城の兵士など)と真剣勝負をし、勝てたら合格で討伐隊への参加が認められるとの事だ。

 早速受付番号別に用意された控室に向かうよう指示を受け、偶々3人とも同じ部屋であったので一緒に向かった。部屋に入ると兄ちゃんも同室であったので、4人で話したりしながら順番を待っていた。

 
 暫くしてデビットが呼ばれて控室を出て行き、その後も次々と呼ばれて控室を出て行った。しかし中々僕達は呼ばれる事はなかった。

「なかなか呼ばれないね」「あぁ。そうだな」「下手したら、最後まで残るかもな。少なくとも俺 (アッシュ)とお前 (レックス)はな」

「ははっ。かもしれないね。これまでの活躍を考えれば······」「確かに、そうかもな」「つまり、それだけ対戦相手も強敵を用意されてるかもな」「······あぁ」それは有り得る、かも······。

 
 などと話していたら結局僕達3人が最後まで残った。そしてようやく「次、ジャック・スミス!」「はい! それじゃあお先に」「うん」「頑張れよ」とジャックが控室を出て行った。

「······とうとう2人きりになっちゃったね」「そうだな」「本当に誰と戦う事になるんだろう?」「恐らく、どっちかはエドガー隊長と当たるんじゃねぇか?」「確かに。あの人ぐらいしかいないか、僕達の相手を出来るのは」「だろうな」

 などと話していたらようやく「次、アッシュ・ハーメルン!」「はい! それじゃあレックス、お先に」「うん。頑張ってね」「おう!」と兄ちゃんも控室を出て行った。

 最後に残った僕は(本当に、誰になるんだろう?)と対戦相手の事を考えていた。そしてついに、「ではレックス・アーノルド! 会場へ」「はい!」と呼ばれたので審査会場へ向かった。

 
 会場に着いて相手を待っていると、「長いこと待たせたな、レックス」と反対の通路から声が聞こえた。しかも、(い、今の声って······)聞き覚えのある声であった。

 そして姿が現れたところで「グ、グレン王子!?」やはりの人物であった事に驚いた。

「そう驚く事も無いだろう。お前ぐらいの実力なら俺ぐらいしか相手になる奴はいないだろう?」「は、はぁ······」確かにそうかもしれませんが······。

「それに、お前はもう既に審査をしてるんだからな」「はぁ······えっ、えーーーっ!?」冷静になったところで流石に今のグレン王子の発言を聞いて驚いてしまった。

「当然だ。お前やアッシュの実力や実績を鑑みれば応募してきた時点で合格に決まっているだろ」た、確かにそうかもしれないが。

「しかし他の者への手前、特別扱いするわけにもいかないからな。皆と同じように審査を受けてもらうようにしたんだ」「そ、そうだったんですか」

「それでアッシュにはエドガーを、そしてお前には俺を当てる事にしたんだ。しかし2人とも万が一俺達に負けても合格にするつもりでいたんだよ」な、なるほど。

「但し!」そこでグレン王子の表情が厳しくなった。「もし俺との対決で手を抜いていると感じたら、不合格とするからな。そのつもりでかかってこい!」と伝えられたので、僕も真剣な顔つきになった。

 それを見てグレン王子が審判係の兵士に顔で合図を送り、「それでは、グレン王子対レックス・アーノルドの試合······開始!」の合図を皮切りに「「うぉーーーっ!!」」両者一斉に雄叫びをあげながら相手に突っ込んだ······。


数十分後······。

「······ハァ。······ハァ。······ハァ」疲れきった様相で僕は合格者控室に向かっていた。

(さ、流石に数十分グレン王子と真剣にやり合ったら疲れるよなぁ)と思いながら重い足取りで歩いていた。

 そして控室の入口にいた兵士が僕を見掛けるや、苦笑いを浮かべながらドアの取っ手に手を掛け、「どうぞ、こちらでお待ちください」とタイミングを計ってドアを開けてくれた。

 ドアが開いて一部の人が入口の方を見て、入ってきたのが僕だと分かると、「「レックスー!」」一部の人の僕を呼ぶ大声が聞こえたが、顔を上げて確認する事は出来なかった。

 その人達が近くに立ち止まったところで、ようやく下半身の服装などから皆 (アリスに兄ちゃんにジャックにデビット)だと判断でき、「やぁ、みんな」と手を上げただけで返事をした。

「え、えらい疲れきってるが、誰と対戦したんだ?」とジャックが聞いてきたので、「······グレン王子とだよ」と答えると、「「え゛っ」」と皆で驚いた声を上げた。

「グ、グレン王子!?」「そりゃ疲れるわな」「そ、それで? ここに来たって事は?」「うん。······何とか勝っちゃった」ようやく顔を上げられるようになり、皆を見て引きつった笑顔を見せながらそう答えた。

「か、勝ったのか!? グレン王子に?」「凄いな」「まぁ、勝てても負けても僕と兄ちゃんは応募した時点で合格になってたみたいだけどね」

「「ええっ!?」」「お、おいレックス。それどういう事だ?」と兄ちゃんが聞いてきたので、グレン王子から聞いた事を話した。

「そ、そうだったのか······」兄ちゃんが初めて聞くようなリアクションをとっていたので、どうやらエドガー隊長からは何も聞かされてはいなかったみたいだ。

 
 とその時前方の方が騒がしくなったので僕らも向いたら、パーシバル団長らが現れたのであった。

 そして、「諸君、審査の方はお疲れだった。ここに残っている者達は城の方が用意した相手に勝利したり、条件を達成出来た者、つまり審査に合格し魔王軍と戦う有志への参加資格を得られた者達だ!」と告げた。

 そこで一部の人達が叫びだしたが団長がそれを制して続けた。

「現在、他の種族でも我々のように有志の選抜選考が行われており、全ての種族で有志が揃い次第再び協議を行い魔王の下へ向かう日程を決める。その際、その日の一週間から10日前にはその日にちを君達に通達させてもらう。それまでは特にこちらからは何も要求はしないため、各自が好きに過ごしてくれたまえ」と言われ一部の人が騒ぎだした。

「魔王軍との戦いに備えて訓練するも良し。ゆっくり過ごすも良し。大切な者と過ごすも良し。全て君達の自由に過ごしてくれたまえ。とにかく、次にこの場にいる者が全員集まるのは、魔王の下へ進軍するために王都へ再び集まってもらう時だ!」の発言に全員が息を飲んだ。

「その時には各々の力を十分に発揮し、魔王軍を討ち倒してもらいたいっ!」「「おぉーーーっ!!」」団長の最後の檄に全員が答えた。

「以上で、有志参加資格審査を終了する」の発言の後、城の兵士から日程の通達先を伝えて解散するように言われたので、僕達も順番がきて騎士団本部へと告げて本部に戻る事にした。


 その戻りの道中、アリスから審査の内容が優れていたので何と治療班の班長の1人に抜擢されたと打ち明けられ、僕や兄ちゃんはもちろん、ジャックやデビットもアリスを称賛した。

 それを聞いて僕は、(そっか。今回もアリスは前回同様班長に抜擢されたか)と前回の魔王軍との戦いの折に治療班の班長の1人として皆を引っ張りながら治療に当たっていたアリスの姿を思い出していた。

 そうして本部に戻り、デビットも今夜は本部で過ごすとの事で久しぶりに同室の4人が揃う事となった。部屋に戻りライアンがおり、「おう。どうだった?」と聞かれたので今日の思い出話に花を咲かせたのだった。

 
 その日の夜、団長から有志参加者全員に召集がかけられ僕達3人も指定の大部屋に向かった。

 全員が揃ったところでパーシバル団長が入って来て、「全員揃ったな。先程の会場でも言った通り君達も魔王軍との戦いまでは好きに過ごしてくれたまえ。もちろん、今まで通り任務に赴きたいのであればそれぞれの隊長、武力部隊員は私に直接申してくれれば編成メンバーに入れさせてもらうからね」と伝えられ少しざわついた。

「後は本部に残って訓練するも良いしゆっくり過ごすも良し。また本部や王都を離れて故郷や親元に戻るのも良いだろう。ただし、いつ召集の通達が来るか分からないから、数日に一度は本部へ確認をしに来てもらいたい。話は以上だ」と伝えられ大部屋を後にした······。

 そしてジャックらと共に部屋に戻りながら(好きに過ごすように、かぁ······)これからの過ごし方について考えたのだった······。
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