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第26章 決戦

第208話 ケリーの家族捜索2

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「一週間後、かぁ······」「うん。恐らくその審査に受かったらもう捜索なんて出来ないだろうから、それまでに探さないと」「だな」という事で僕達は早速ジャックにも事情を話して協力を要請した。

 ジャックも「分かった。俺なら別に構わねぇよ」と答えてくれた。さらに「だったら、にも協力してもらおうぜ」「あいつって?」「ジェシーが絡む頼みなら何でも引き受ける奴だよ」「······あぁ。かぁ」「そっ!」「?」流石に兄ちゃんは分かってはいないみたいだけど、僕は誰の事なのか分かった。そして翌日······。

 
「うぉりゃーーーっ!!」ドガーン! 話題の人物である······ライアンが近くの瓦礫を投げ飛ばした。

 その後も「うぉりゃーっ! とりゃあーっ! うぉーーりゃあーーっ!!」ドガーン! バコーン! ドォーン! 次々と瓦礫を退かしていったのであった······。

 それを見ていた僕達は流石にあ然とするしかなかった。暫くして「す、凄ぇー」「てか、張り切りすぎじゃない? ライアン」「はははっ。確かにそうかもなぁ」それぞれ感想を言い合った。

 ジェシーやケリーらも僕達よりもさらに離れたところでライアンの作業を見ていた。とはいえ、いつまでもライアン1人に任せているわけにもいかず、僕達も別れて瓦礫などの撤去作業に取り掛かった。

 
 人数が増えた事もあって何とかその日の内にケリーの家の瓦礫などの撤去作業は完了したのだった。しかし······。

「誰も下敷きになっていなかったな」「うん。やっぱり、森とかに避難する際にはぐれたのかもしれないね」「あぁ、それぐらいしか考えられねぇだろ」

 念のため村の他の場所の瓦礫やら木材なども退かしてみたが、人影は見当たらなかった。

「こうなったら、明日からは森の中を片っ端から探すしかないね」「あぁ」「そうだな」「えぇ」「······おぅ」(ライアン?)ライアンだけが妙な返答をしたのが気になったが、取り敢えずその日は王都に帰る事にした。

 
 そして翌日······やはり昨日のツケが回ってライアンは筋肉痛により参加出来なかった。

 仕方なく代わりと言ってはなんだが、アリスが特に任務も用事も無いとの事だったので、アリス(とついでにマーシュも)を誘って森の中を捜索する事にした。

 取り敢えず二人一組 (僕とジェシー達、アリスと兄ちゃん、ジャックとマーシュの組み合わせ)で捜索する事にした。それぞれ捜索してみて倒れている木の下や草むらの中など捜してみたが、結局その日も見つける事は出来なかった。

 また、途中休憩の際にアリスへ有志の参加資格審査の日が五日後になった事を伝え、それから有志参加の話題になり、その中でジャックも応募した事を聞かされ(やっぱりジャックも応募したか)と思ってしまった。

 
 翌日にはライアンも回復して捜索に参加出来るようになった。またその日は特に任務も無かった事もあり、ネールも捜索に参加してくれたのだった。

 そのためこの日も二人一組 (ジェシー達とライアン、僕と兄ちゃん、ジャックとネールの組み合わせ)で捜索したが、やはり手掛かりすら見つけ出す事が出来なかった。

 そしてその翌日······。

 
「ふぅ。大丈夫? ケリー」「うん」「流石に1人だときついなぁ」僕はケリーやベアーズと共に森の中を1人で捜索していた。

 今日は兄ちゃんやジャック達は団長からどうしても赴いてもらいたい任務があると言われてそちらに向かう事となり、またジェシーも国王様から取り組んでもらいたい公務があるとの事でそちらを行うため来られず、結局僕とベアーズ、そしてケリーの二人と一匹で捜索する事となったのだった。

 大分二人と一匹で捜索してみたがやはり成果は無かった。かなり歩き回った事もあり「ちょっと休憩しようか?」「······うん」お互い疲れてきたので近くの倒木に座って休憩する事にした。

 その際、(こんな事になるんだったら、アレクさんから導きの玉を返してもらっておくべきだったかなぁ)とアレクさんが騎士団本部に僕を訪ねに来たが、たまたま任務に赴いていて不在だったために導きの玉を返そうとしたが、結局持ち帰られてしまわれた事を後悔していた。

 しかし、(無い物に頼ったってしょうがないし、それは3年のあの時経験してるはずだよなぁ)と騎士団養成学校3年でクエストを引き受けて行っていた時、マックス先生から暫くベアーズと離れてクエストを行うよう言われ、その際もベアーズがいてくれたらと考えたが結局ベアーズがいなくてもクエストを完了出来ていたので、いないモノに頼っても仕方がないと学んだはずだった。

 
 そんな事を考えていたら、つんっ! つんっ! ケリーが僕の体を突っついてきた。

「ん? 何? ケリー」と尋ねたら、「どうしてここまでしてくれるの?」と聞いてきた。

(確かにケリーからしたらそう思うよなぁ。けど······)僕にはそうしたい、いや、しなければならない理由がはっきりしているのだった。

 そしてある事を暫く考えた後に、「ケリー、今から僕が話す事なんだけど、一部の人はもう知っている事だけど、取り敢えず誰にも話さないって約束してくれるかい?」「おねえちゃんにも?」「うん」と答えてケリーは少し考え、「わかった」と答えてくれたので僕は······ケリーにも僕の秘密を全て話す決意をしたのだった。


「実は、僕が住んでいた村も僕がもう少し子供だった頃魔物に襲われたんだ」「えっ」ケリーに前の人生の出来事を伝え始めた。

「その時には僕と一緒に捜していた銀色の髪のアッシュって男の人と、金色の髪のアリスって女の人の3人だけが生き残って他の人は皆殺され家とかも全て破壊されたんだ」目の前の村の悲惨な光景を見ていた時の事を思い出していた。

「少ししてから僕と同じ騎士団の人が調査のために村にやって来て、その人達によって僕らは王都の孤児院に連れて行かれたんだ」騎士団の人が用意してくれた馬車に乗せられ王都の城門を通った時の事を思い出した。

「それで孤児院で暮らしだしたある日、アッシュ兄ちゃんが騎士団に入るための養成学校に入りたいと僕達に言ってきて、僕達にも入るように言ってきたんだ。それに僕もアリスも賛成して養成学校に入り、3人とも卒業出来て騎士団に入団したんだ」"前の人生での"養成学校時代の事を思い出していた。

「それで僕達が騎士団に入って少しした頃に今回と同じように各地を魔物が襲い出したんだ。その頃あちこちで聖剣と呼ばれる昔から争いを収めるために使われてきた剣がどこかにあると噂が流れて、多くの人がその剣を探し始めたんだ。その後その聖剣をアレクって言う人が見つけ出し、その人やその人と一緒に聖剣を探した他の種族の人が皆で魔王を倒しに行こうと呼び掛け、僕達はそれに応じて魔王を倒しに向かったんだ」と当時の事を思い返していた。

 その頃からケリーは僕の話している内容に違和感を持ち出していた。

「そして魔王が住んでいる城の目前に着いて魔王軍と対決しだしたんだけど、僕はその戦いの途中で······味方の誰かに殺されちゃったんだ」「えっ?」そこまで聞いて流石にケリーも驚いた。

「味方の誰かに殺された事で僕は死んじゃったんだけど、実は僕が死んだ事は神様も予期していない事だったんだよ」「かみさまも?」「うん。そう神様の使いって人に教えてもらったんだ」死んだ後に神の使いであった初代ハウル様と話していた時の事を思い出していた。

「しかも僕が死んだ事で多分魔王を倒した後だと思うんだけど、その世界に大きな悪い影響が及んで皆が困る事になるんだと教えてもらったんだ。その事を回避させるために、神様が僕を赤ちゃんの時から人生をやり直す機会を与えてくれたんだ」「······え、えーっ!?」流石にこれまでで一番驚きの声を上げた。

「そりゃ驚くよね。でも実際僕は赤ちゃんの頃に生まれ変わってこれまで生きてきたんだよ。しかも、今の話を聞いてても分かるように前の人生の記憶を持ってね」と言ってケリーもあっ! と思い出しさらに驚いた。

「だから当然村が魔物に襲われる事を知っていたからそれをなんとか阻止したいと思って考えて行動したんだ。その結果、村の皆の協力のお陰もあって村が滅ぼされる事態を回避させる事が出来たんだ」それを聞いてケリーは自分事のように喜んでくれた。

「それからは、神様の使いからは魔王軍と戦う時までは自由に生きれば良いって言われたから、結局前の人生通り養成学校に入って騎士団に入団したんだ。そのお陰で本当に僕にとってはとても良い人生を送れたと思ってるんだ」養成学校に入学するために初めて王都を訪れた日から今日までの様々な出来事を思い返した。

「······けど、その事でもしかしたら他の誰かが悲しい思いをしてしまったんじゃないかと思ったりしたんだ。ケリー、君のようにね」突然言われてケリーも驚きの表情を浮かべた。

「もしかしたら僕の前の人生では君の家族は今も生きていたかも知れないけど、僕が人生をやり直した事で君は独りぼっちとなってしまっただろ?」そこでケリーは暗い表情となった。

「ケリーだけじゃなく、僕が人生をやり直した事で命や人生を助けれた人もいれば奪ってしまった人もいるんだと最近になって思うようになったんだ。だからこそ、そんな人達の力になりたいと強く思いだし、あの避難拠点であるブライトフューチャーの提案も考え出せたんだ」そこでまたケリーは普通の表情に戻って僕を見た。

「だから今回ジェシーからケリーの家族を捜索しに行きたいと提案を受けた時、すぐに行こうと言ったんだ。たとえどんな姿であってもケリーを家族に会わせてやりたいと思ったからね」とまたケリーは驚きの表情を浮かべた。

「まだ家族を見つけられてはいないんだけど······これまでの捜索でを見つけたんだよ」ケリーの家の跡地の瓦礫を撤去していた際に見つけたロケットペンダントをケリーに渡した。

「あっ! これ、ママの······」「ママが持っていた物だったんだ」「······うん」と答えてからそのロケットペンダントをじっと見つめたままケリーは微動だにしなくなった。

 そして暫くしてから突然、ポロ、ポロ、ポロと涙を流し出し、「······パパ。······ママ」と呟いたのだった。

「ケリー」と僕も呟いた直後にとうとうケリーは「う、うわーん!!」と泣き出したのだった。

 僕はそんなケリーを慰めるように抱き締め、そして(僕らもあの時はこんな風に落ち込んだりアリスなんかは号泣してたよなぁ)と前の人生でトロルに滅ぼされたウッド村にて両親のなれの果ての姿を見てアリスが号泣していた事を思い返していた。

 その時、突然僕の腰に帯刀していた聖なる短剣が光だした······。
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