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第25章 大奮闘
第184話 魔物の襲来
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レックスが導きの玉に予知夢を見せられている頃、王都から北西の方向に存在する村にて······。
その村内のある民家の中で1組の夫婦が寝入ってると、ズシーン! ズシーン! 遠くの方から聞こえる足音のような音でご主人が目を覚ました。
寝ぼけながら先ほど聞こえた音を気にしていたら、ドシーン! と今度は大きな揺れに見舞われ、流石に隣で眠っていた奥さんも起きだし、2人で外に出てみた。
他の家からも人々が出てきたところでその内の1人が「お、おい! あ、あれ!」村近くの森の方向を指した。
全員がその方向を見たら······森の奥から何とオークの集団が村に迫っていたのだった。
「オ、オークの大群だーーっ!」誰かがそう叫んだことで、村中は大パニックに陥ったのだった。
その後本当にオークの集団が村にやって来て村を囲っていた柵を壊し、持っていた斧で家々を壊しだしたり、逃げ惑う人々を襲いだしたのだった······。
同時刻、北東方向の山岳地帯に存在する村の1つででも······。
「ト、トロルの集団だーーっ!」こちらはトロルの集団が村を襲っていて、こちらでも村中は大パニックとなっていた。
こうした事態が起こっていたという事をお城や僕達騎士団の耳に入ってきたのは、それぞれの村が襲われてから2日経っての事だった。
すぐにパーシバル団長は各村に武闘部隊から2小隊ずつ調査に向かわせ、僕達第1小隊は兄ちゃんらの小隊と北西の村に調査へ向かった。
急いで村に駆け付けたが、「「······」」「「······」」村の入口に着いて村の様子を見たところで、全員が目の前の悲惨な光景を見て言葉も出なかった。
「ひ、酷ぇ」「こ、こんなにも荒らすなんて」「ああ」「全くだ」
皆が思い思いの事を呟いているなか、僕も同じ気持ちを持ちつつ、(前の人生での僕達の村がトロルに襲われた直後と同じ光景だ)とも思い、当時村の光景を見て僕と兄ちゃんは立ち尽くし、アリスは号泣していた時の事を思い出していたのだった。
しかしいつまでも立ち尽くしている訳にもいかず、兄ちゃんの一言で全員我に返り、生存者がいないかなど村の中を調査する事となった。
けれども、発見出来たのはオークが持っていたであろう斧によって背中などを斬られた死体や、倒壊などした家屋の下や中から押し潰されて亡くなったと思われる人々の死体ばかりであった。結局生存者は1人も発見出来ず、一通り村内を調査して本部に帰還した。
帰還後兄ちゃんとオリバー隊長がパーシバル団長の所へ報告に行き、「そうか、そっちもか。北東の村の方も生存者は1人もいなかったそうだ」「そうでしたか」
するとオリバー隊長が「団長」「何だ? オリバー」「ひょっとして、あの時ハイオーガキングが倒れる間際に言い放ったのは、この事なのでは?」「あっ!」「うん。かもしれないな」
そう、大量の魔物達がエルフ族との領境辺りを南下して来ていた時、奴らを率いていたハイオーガキングが倒れる間際にーー我ヲ倒シタトコデモウ遅イ。貴様ラノ国ハ、ジキ滅ブ、ダ、ロウーーと言い放ったのだ。兄ちゃんにも僕が後々その事を話したので既に知っていた。
「恐らく今回の襲撃はその始まりなのかも知れないな」「始まり······では!」「まだこれからも起こり得ると?」パーシバル団長は黙って頷いた。それを見て2人は絶句したのだった······。
しかしそのパーシバル団長の悪い予想は現実のものとなってしまった。
ヒト族領の北東部で最も大きい街であるアルペンタウン。流石に大きい街だけあって自分達で傭兵を雇い、街の警備を担わせていた。
その警備に当たっている彼らの1人が街の少し先の方を見て「なぁ······あの影って?」ともう1人に尋ねた。「え? ······あれは、まさか!?」彼らが見た先には、オークとトロルの集団が街の方に近付いて来ていた。
「オ、オークとトロルの大群!?」「す、すぐ皆に知らせないと!」彼らからオークとトロルの大群が街に向かっている事が伝えられ、住民は避難をし、この街に設置されているギルドにいた冒険者らは迎え撃つ準備をした。
程なくして双方が街の入口付近でぶつかり合い、何とか次々とオークやトロルを倒していったが、一部は街の中に入ってしまい、建物を破壊し出してしまったのだった······。
知らせを聞き付けまた僕達と兄ちゃん達がアルペンタウンに赴いた時には、入口付近は酷い有り様となっていた。街中も一部だけが破壊されてはいたが、怪我などしたのがギルドにいた冒険者らの一部のみであり、死者は1人もいなかったとの事だ。
その事を聞いただけで僕達は一瞬安心してしまったが、以前に襲撃を受けた村と同じである事に変わりはないのだと思いだしたのだった。
流石に事態を重く見だした国も、お城にて城内の各部署や各方面の責任者らが一堂に会して緊急の会合が行われた。その場には襲撃にあった村や街を調査した騎士団のトップであるパーシバル団長も出席していた。
早速パーシバル団長から襲撃を受けた村や街の被害状況が報告され、それを聞いた出席者は全員暫く黙り込んでしまった。
その後、「まさか、そこまで酷い状況だとは······」「しかし、一体なぜ魔物達が突然集団で村や街を襲いだしたんだ?」「一体どうすれば······」など各々が感想や呟きなど言いたい事を言い出した。
「とにかく、だ」グレン王子が言い出すと、全員が静まりグレン王子を見だした。「今の所魔物達は領土の北方地域しか襲撃していないのだろ、パーシバル?」「はい。そのようです」
「つまり、今は取り敢えず北方地域に存在する町や村の警備を強化すれば、取り敢えず最悪な被害は押さえ込める事になるはずだろ?」「た、確かに」「仰る通りです。グレン王子」「という事だ。その辺りの事はお前達騎士団に任せるからな。頼んだぞ、パーシバル」「はっ!」
そう言われた後パーシバル団長は、グレン王子に促された事もあって今後の策を練るため途中退席し、本部に戻った。
そして部屋に向かいながら(警備を強化すべきではあるが、他の任務にも取り組む必要があるだろうし。さて······)と考えていたら、ちょうどレックス達第1小隊が出動する場面を目撃した。
その中でレックスが真っ先に馬 (ウッディ)を連れて来たのを見て、(そういえば、彼には既に固定の馬がいるんだったな)と納得していた。その後オリバー、そしてジャックらが出て来て出動した。
彼らの出動する様子を見て(固定の······か)その場である事を考え、「······よし!」ある計画を思い付いたのだった。
すぐにパーシバルはハリー、シュピーゲルの両隊長とアッシュを召集して自身の考えを説明した。
説明を聞いて3人は納得と理解をし、ハリーとシュピーゲルは早速そのように動く事にした。
アッシュもその場を離れようとしたら、「アッシュ。第1小隊が戻って来たらレックス君を私の所に連れて来てくれ」「レックスをですか?」
「ああ。彼には"特別任務"を任せようと思っていてね」「と、特別任務!?」「うん」パーシバルはアッシュにその内容と理由を説明し、アッシュも納得し改めてその場を離れた。
アッシュがいなくなってからパーシバルもすぐにその場を離れ、本部を出てお城に赴きある人物の部屋の前で止まった。
そして、コンッ、コンッ!「パーシバルです。今よろしいでしょうか? ジェシー様」「はい。どうぞ」と言われパーシバルは部屋の中に入った。
部屋の中には偶然マリア様もおり「どうしたの? パーシバル」マリア様がパーシバルに尋ねた。「実は、ジェシー様にお願いしたい事がございまして」と言った直後、パーシバルはベアーズを見た。
見つめられたベアーズは首を傾げ、「え?」ジェシーも驚きの声を上げたのだった······。
その後第1小隊が帰還しオリバーが解散させたところで、アッシュがレックスに声を掛けて共に団長室へ向かった。
「団長、レックスを連れて来ました」「入ってくれ」と部屋に入り団長の前まで行ったところで、「実はもうじきアッシュらから発表されると思うが、今回各部隊の小隊を編成し直す事にしたんだ」「部隊を!?」
「ああ。君も直接現場に行った事があるから分かっているだろうが、各村や町が魔物に襲われていて、グレン王子よりそれらの警備を強化するよう言われたんだ」「グレン王子から」
「それで考えた末、今のところ魔物達は北方地域の村や町だけを襲っているため、その方面出身の武闘部隊や魔法部隊に所属している者を各自の故郷の警備専属にしようと考えているんだ」
「えっ!?」「その方が地元の人達とも協力はしやすいだろうし、どこから魔物達が襲ってくるのか予想もしやすいだろう」「た、確かに」
「あと諜報支援部隊員も各所に2人ずつ配備し、何かあればその1人か2人に本部へすぐ連絡してもらう事にし、その後本部に滞在している者達で現地に赴くようにしようと考えている。魔物達の警備以外にも我々にはやらなければならない事があるからね」「そ、そうですね」
「そうした任務は北方以外の地域や王都の出身者ならびに他の種族の者に担当してもらうつもりで考えている」これらの説明を聞いて全て納得できる事ばかりであった。
「その上でレックス君。君にはこれらとは別に1人である特別任務に就いてもらいたいんだ」「と、特別任務!?」流石に特別と聞いてとても驚いた。
「と、特別任務とは?」「うん。それは······君にはこちらからその都度指定した地域へ赴き、そこで様々な活動を行ってもらおうと考えている」「さ、様々な活動?」
「ああ。その地域の人達からの情報収集や警備に当たっている隊員らとの情報交換。それに万が一魔物を見掛けた場合の討伐、そして······」「そして?」「今後発生する事になるであろう何かを捜索する活動などだ」
最初の2つはすぐ理解出来たが、最後の捜索活動の部分は違和感を覚えたので「あの、何かを捜索とは?」と質問した。
「生存者だったり亡くなられてしまわれた人であったり、もしくは大切にしていた物であったり、対象は様々だ。要は何かを探したくてその場から離れられないという人達を安心して避難させるために、その人達が探しているモノを探すという事だよ」(っ!)その説明を聞いて改めて納得した。
しかし、「でも、それをなぜ僕1人で?」と当然の質問をぶつけた。実力はそこそこあるとはいえ、今年入団したばかりで一番下っ端であろう僕に······。
「一番の理由は、君には既に出動する時すぐに乗って行ける特定の馬がいるという点だよ」「あっ! ウッディ······」「そう。その事は特に考慮してね。それだとすぐにでも出動してもらいたいと思った時に出動出来るだろうし、もし何日も馬と共に過ごさなければならなくなった時、その馬と息があっていなければ最悪の場合、馬にどこかへ行かれてしまって大変な事態に陥ってしまう事も有り得るからね」「そ、そうですね」
「それに、君にはもし魔物達に遭遇しても奴らを倒せるだけの実力が備わっているしね。何せ、“彼”を倒したぐらいなんだから」とパーシバル団長はアッシュ兄ちゃんをチラ見した。
(アハハハハ)「そしてもう1つ」「もう1つ?」「先ほど言った捜索活動にあれを使えると考えたからだよ」
「あれ?」「先日君とアッシュが効果の検証をしていた······」「導きの玉!」
「そういう事だ。以上のすぐに出動できる俊敏性、戦闘の実力、捜索活動を有利に実施できる点。これらの事を総合的に考慮した上で君を指名させてもらったんだよ」「······分かりました」パーシバル団長の説明を聞いて納得した。
「うん。では改めてレックス君。特別任務、引き受けてくれるね?」「はい!」「よろしく頼むよ」「分かりました!」
「とは言えだ。君1人だけで行動させた場合、もし君に何かあっても我々には分からないからね。君にパートナーを付けさせてもらうよ」
「パ、パートナー!?」「あぁ。君に何かあった場合、本部の我々に知らせるためだけの存在となるかもしれないけどね」
「そ、そのパートナーとは?」「もう既に君の"足下"にいるよ」「えっ、あしも······と?」と言われ足下を見たら······「っ! べ、ベアーズ!?」がいたのだった。
「さっきジェシー王女様から借りて来たんだ」「そ、そうなんですか?」
「それで、暫く君が預かる事を同意してもらってね」「は、はぁ」「というわけだ。その子の事も頼むよ」「わ、分かり、ました」
「あともう1つ。王都に戻り馬を置いて私の所へ報告をする前か後に城へ赴き、マリアの所にも行って報告をして欲しいんだ」「マリア様へ?」
「ああ。彼女は一応国王様から領土内の内政業務の補佐を担うよう仰せつかっているから。その活動の役に立つだろうから、ね」「あっ!」そういえば以前ジェシーがそんなこと言っていたっけ。
「分かりました」「それじゃあ、諸々の件これから頼んだよ」「はい!」
こうして、僕に新たな(特別)任務が言い渡されたのだった······。
その村内のある民家の中で1組の夫婦が寝入ってると、ズシーン! ズシーン! 遠くの方から聞こえる足音のような音でご主人が目を覚ました。
寝ぼけながら先ほど聞こえた音を気にしていたら、ドシーン! と今度は大きな揺れに見舞われ、流石に隣で眠っていた奥さんも起きだし、2人で外に出てみた。
他の家からも人々が出てきたところでその内の1人が「お、おい! あ、あれ!」村近くの森の方向を指した。
全員がその方向を見たら······森の奥から何とオークの集団が村に迫っていたのだった。
「オ、オークの大群だーーっ!」誰かがそう叫んだことで、村中は大パニックに陥ったのだった。
その後本当にオークの集団が村にやって来て村を囲っていた柵を壊し、持っていた斧で家々を壊しだしたり、逃げ惑う人々を襲いだしたのだった······。
同時刻、北東方向の山岳地帯に存在する村の1つででも······。
「ト、トロルの集団だーーっ!」こちらはトロルの集団が村を襲っていて、こちらでも村中は大パニックとなっていた。
こうした事態が起こっていたという事をお城や僕達騎士団の耳に入ってきたのは、それぞれの村が襲われてから2日経っての事だった。
すぐにパーシバル団長は各村に武闘部隊から2小隊ずつ調査に向かわせ、僕達第1小隊は兄ちゃんらの小隊と北西の村に調査へ向かった。
急いで村に駆け付けたが、「「······」」「「······」」村の入口に着いて村の様子を見たところで、全員が目の前の悲惨な光景を見て言葉も出なかった。
「ひ、酷ぇ」「こ、こんなにも荒らすなんて」「ああ」「全くだ」
皆が思い思いの事を呟いているなか、僕も同じ気持ちを持ちつつ、(前の人生での僕達の村がトロルに襲われた直後と同じ光景だ)とも思い、当時村の光景を見て僕と兄ちゃんは立ち尽くし、アリスは号泣していた時の事を思い出していたのだった。
しかしいつまでも立ち尽くしている訳にもいかず、兄ちゃんの一言で全員我に返り、生存者がいないかなど村の中を調査する事となった。
けれども、発見出来たのはオークが持っていたであろう斧によって背中などを斬られた死体や、倒壊などした家屋の下や中から押し潰されて亡くなったと思われる人々の死体ばかりであった。結局生存者は1人も発見出来ず、一通り村内を調査して本部に帰還した。
帰還後兄ちゃんとオリバー隊長がパーシバル団長の所へ報告に行き、「そうか、そっちもか。北東の村の方も生存者は1人もいなかったそうだ」「そうでしたか」
するとオリバー隊長が「団長」「何だ? オリバー」「ひょっとして、あの時ハイオーガキングが倒れる間際に言い放ったのは、この事なのでは?」「あっ!」「うん。かもしれないな」
そう、大量の魔物達がエルフ族との領境辺りを南下して来ていた時、奴らを率いていたハイオーガキングが倒れる間際にーー我ヲ倒シタトコデモウ遅イ。貴様ラノ国ハ、ジキ滅ブ、ダ、ロウーーと言い放ったのだ。兄ちゃんにも僕が後々その事を話したので既に知っていた。
「恐らく今回の襲撃はその始まりなのかも知れないな」「始まり······では!」「まだこれからも起こり得ると?」パーシバル団長は黙って頷いた。それを見て2人は絶句したのだった······。
しかしそのパーシバル団長の悪い予想は現実のものとなってしまった。
ヒト族領の北東部で最も大きい街であるアルペンタウン。流石に大きい街だけあって自分達で傭兵を雇い、街の警備を担わせていた。
その警備に当たっている彼らの1人が街の少し先の方を見て「なぁ······あの影って?」ともう1人に尋ねた。「え? ······あれは、まさか!?」彼らが見た先には、オークとトロルの集団が街の方に近付いて来ていた。
「オ、オークとトロルの大群!?」「す、すぐ皆に知らせないと!」彼らからオークとトロルの大群が街に向かっている事が伝えられ、住民は避難をし、この街に設置されているギルドにいた冒険者らは迎え撃つ準備をした。
程なくして双方が街の入口付近でぶつかり合い、何とか次々とオークやトロルを倒していったが、一部は街の中に入ってしまい、建物を破壊し出してしまったのだった······。
知らせを聞き付けまた僕達と兄ちゃん達がアルペンタウンに赴いた時には、入口付近は酷い有り様となっていた。街中も一部だけが破壊されてはいたが、怪我などしたのがギルドにいた冒険者らの一部のみであり、死者は1人もいなかったとの事だ。
その事を聞いただけで僕達は一瞬安心してしまったが、以前に襲撃を受けた村と同じである事に変わりはないのだと思いだしたのだった。
流石に事態を重く見だした国も、お城にて城内の各部署や各方面の責任者らが一堂に会して緊急の会合が行われた。その場には襲撃にあった村や街を調査した騎士団のトップであるパーシバル団長も出席していた。
早速パーシバル団長から襲撃を受けた村や街の被害状況が報告され、それを聞いた出席者は全員暫く黙り込んでしまった。
その後、「まさか、そこまで酷い状況だとは······」「しかし、一体なぜ魔物達が突然集団で村や街を襲いだしたんだ?」「一体どうすれば······」など各々が感想や呟きなど言いたい事を言い出した。
「とにかく、だ」グレン王子が言い出すと、全員が静まりグレン王子を見だした。「今の所魔物達は領土の北方地域しか襲撃していないのだろ、パーシバル?」「はい。そのようです」
「つまり、今は取り敢えず北方地域に存在する町や村の警備を強化すれば、取り敢えず最悪な被害は押さえ込める事になるはずだろ?」「た、確かに」「仰る通りです。グレン王子」「という事だ。その辺りの事はお前達騎士団に任せるからな。頼んだぞ、パーシバル」「はっ!」
そう言われた後パーシバル団長は、グレン王子に促された事もあって今後の策を練るため途中退席し、本部に戻った。
そして部屋に向かいながら(警備を強化すべきではあるが、他の任務にも取り組む必要があるだろうし。さて······)と考えていたら、ちょうどレックス達第1小隊が出動する場面を目撃した。
その中でレックスが真っ先に馬 (ウッディ)を連れて来たのを見て、(そういえば、彼には既に固定の馬がいるんだったな)と納得していた。その後オリバー、そしてジャックらが出て来て出動した。
彼らの出動する様子を見て(固定の······か)その場である事を考え、「······よし!」ある計画を思い付いたのだった。
すぐにパーシバルはハリー、シュピーゲルの両隊長とアッシュを召集して自身の考えを説明した。
説明を聞いて3人は納得と理解をし、ハリーとシュピーゲルは早速そのように動く事にした。
アッシュもその場を離れようとしたら、「アッシュ。第1小隊が戻って来たらレックス君を私の所に連れて来てくれ」「レックスをですか?」
「ああ。彼には"特別任務"を任せようと思っていてね」「と、特別任務!?」「うん」パーシバルはアッシュにその内容と理由を説明し、アッシュも納得し改めてその場を離れた。
アッシュがいなくなってからパーシバルもすぐにその場を離れ、本部を出てお城に赴きある人物の部屋の前で止まった。
そして、コンッ、コンッ!「パーシバルです。今よろしいでしょうか? ジェシー様」「はい。どうぞ」と言われパーシバルは部屋の中に入った。
部屋の中には偶然マリア様もおり「どうしたの? パーシバル」マリア様がパーシバルに尋ねた。「実は、ジェシー様にお願いしたい事がございまして」と言った直後、パーシバルはベアーズを見た。
見つめられたベアーズは首を傾げ、「え?」ジェシーも驚きの声を上げたのだった······。
その後第1小隊が帰還しオリバーが解散させたところで、アッシュがレックスに声を掛けて共に団長室へ向かった。
「団長、レックスを連れて来ました」「入ってくれ」と部屋に入り団長の前まで行ったところで、「実はもうじきアッシュらから発表されると思うが、今回各部隊の小隊を編成し直す事にしたんだ」「部隊を!?」
「ああ。君も直接現場に行った事があるから分かっているだろうが、各村や町が魔物に襲われていて、グレン王子よりそれらの警備を強化するよう言われたんだ」「グレン王子から」
「それで考えた末、今のところ魔物達は北方地域の村や町だけを襲っているため、その方面出身の武闘部隊や魔法部隊に所属している者を各自の故郷の警備専属にしようと考えているんだ」
「えっ!?」「その方が地元の人達とも協力はしやすいだろうし、どこから魔物達が襲ってくるのか予想もしやすいだろう」「た、確かに」
「あと諜報支援部隊員も各所に2人ずつ配備し、何かあればその1人か2人に本部へすぐ連絡してもらう事にし、その後本部に滞在している者達で現地に赴くようにしようと考えている。魔物達の警備以外にも我々にはやらなければならない事があるからね」「そ、そうですね」
「そうした任務は北方以外の地域や王都の出身者ならびに他の種族の者に担当してもらうつもりで考えている」これらの説明を聞いて全て納得できる事ばかりであった。
「その上でレックス君。君にはこれらとは別に1人である特別任務に就いてもらいたいんだ」「と、特別任務!?」流石に特別と聞いてとても驚いた。
「と、特別任務とは?」「うん。それは······君にはこちらからその都度指定した地域へ赴き、そこで様々な活動を行ってもらおうと考えている」「さ、様々な活動?」
「ああ。その地域の人達からの情報収集や警備に当たっている隊員らとの情報交換。それに万が一魔物を見掛けた場合の討伐、そして······」「そして?」「今後発生する事になるであろう何かを捜索する活動などだ」
最初の2つはすぐ理解出来たが、最後の捜索活動の部分は違和感を覚えたので「あの、何かを捜索とは?」と質問した。
「生存者だったり亡くなられてしまわれた人であったり、もしくは大切にしていた物であったり、対象は様々だ。要は何かを探したくてその場から離れられないという人達を安心して避難させるために、その人達が探しているモノを探すという事だよ」(っ!)その説明を聞いて改めて納得した。
しかし、「でも、それをなぜ僕1人で?」と当然の質問をぶつけた。実力はそこそこあるとはいえ、今年入団したばかりで一番下っ端であろう僕に······。
「一番の理由は、君には既に出動する時すぐに乗って行ける特定の馬がいるという点だよ」「あっ! ウッディ······」「そう。その事は特に考慮してね。それだとすぐにでも出動してもらいたいと思った時に出動出来るだろうし、もし何日も馬と共に過ごさなければならなくなった時、その馬と息があっていなければ最悪の場合、馬にどこかへ行かれてしまって大変な事態に陥ってしまう事も有り得るからね」「そ、そうですね」
「それに、君にはもし魔物達に遭遇しても奴らを倒せるだけの実力が備わっているしね。何せ、“彼”を倒したぐらいなんだから」とパーシバル団長はアッシュ兄ちゃんをチラ見した。
(アハハハハ)「そしてもう1つ」「もう1つ?」「先ほど言った捜索活動にあれを使えると考えたからだよ」
「あれ?」「先日君とアッシュが効果の検証をしていた······」「導きの玉!」
「そういう事だ。以上のすぐに出動できる俊敏性、戦闘の実力、捜索活動を有利に実施できる点。これらの事を総合的に考慮した上で君を指名させてもらったんだよ」「······分かりました」パーシバル団長の説明を聞いて納得した。
「うん。では改めてレックス君。特別任務、引き受けてくれるね?」「はい!」「よろしく頼むよ」「分かりました!」
「とは言えだ。君1人だけで行動させた場合、もし君に何かあっても我々には分からないからね。君にパートナーを付けさせてもらうよ」
「パ、パートナー!?」「あぁ。君に何かあった場合、本部の我々に知らせるためだけの存在となるかもしれないけどね」
「そ、そのパートナーとは?」「もう既に君の"足下"にいるよ」「えっ、あしも······と?」と言われ足下を見たら······「っ! べ、ベアーズ!?」がいたのだった。
「さっきジェシー王女様から借りて来たんだ」「そ、そうなんですか?」
「それで、暫く君が預かる事を同意してもらってね」「は、はぁ」「というわけだ。その子の事も頼むよ」「わ、分かり、ました」
「あともう1つ。王都に戻り馬を置いて私の所へ報告をする前か後に城へ赴き、マリアの所にも行って報告をして欲しいんだ」「マリア様へ?」
「ああ。彼女は一応国王様から領土内の内政業務の補佐を担うよう仰せつかっているから。その活動の役に立つだろうから、ね」「あっ!」そういえば以前ジェシーがそんなこと言っていたっけ。
「分かりました」「それじゃあ、諸々の件これから頼んだよ」「はい!」
こうして、僕に新たな(特別)任務が言い渡されたのだった······。
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