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第24章 王国騎士団

第173話 任務3~火薬調達~

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 クラーケンの一件から1週間後、次なる任務が言い渡された。今回は支援部隊との合同任務であり、その内容は······。

「「火薬の調達!?」」「そうだ。王都の北西部にある洞窟内に保管している火薬が必要となってそれを支援部隊の一個小隊が取りに行く事になった。ただその洞窟内にどうやらアースラットというネズミ状の魔物と、スライムが棲みつき出した事が分かった。そのため我々も同行する事となり、我々はその小隊の護衛兼······」「「護衛兼?」」「照明係だ」ドテッ! 照明係と聞いて流石に全員ずっこけてしまった。

「しょ、照明係ってどういう事ですか!?」「当然火薬を取りに行くんだから火気厳禁だろう」

「まぁ」「しかし洞窟内は暗いから明かりが必要で、明かりを灯すためには松明しかないだろ?」

「えぇ、確かに」「だったら火薬を運ぶ者と明かり用の松明を灯す者は別の者が良いに決まっているだろうが」

「そりゃあ」「しかし今回調達してくる火薬の量は一個小隊全員の力が必要との事だ」

「そ、そうなんですか?」「その上魔物も出没するとなれば武闘部隊が同行した方が良いに決まっているだろ」

「はい」「じゃあ誰が松明を灯す役割を担えるんだ?」

「······」「という事だ」「「······りょ、了解」」何となくオリバー隊長に言いくるめられたように感じているが、取り敢えず言いたい事は了承した。

「あと、今回火薬の運搬ということで現地までは歩いて行く事となったから、明日は本部正面入口に集合する事。良いな!」「「了解!」」「では解散」

 オリバー隊長が去った後、「他の部隊と合同任務何て初めてだな」「あぁ。内容が内容だけど、楽しみだな」「そうだね」などと感想を言いながら部屋に戻った。

 
 そして翌朝僕達の方が早く集合場所に集まった。支援部隊が来る前にオリバー隊長から特にスライムに対しての注意事項が伝えられ、スライムには普通の武器はほとんど効かないため、もし遭遇したらジャックのクロスボウやデビットとライアンの槍に松明の火を移して対処する事にした。

 ちょうどスライムについての話が終わった時に「よぉ、オリバー。待たせたか?」支援部隊側の小隊長さんが声を掛けてきた。

「いや。今スライムに関する話をし終えたからちょうど良かったよ」「そうか。今回はよろしく頼むよ」「「よろしくお願いします!」」

 お互い挨拶をし、「で、あれがウチの小隊メンバーだ」と支援部隊側のメンバーを紹介され、彼らが近付いてお互いの顔を見合わせた直後「「あっ」」「「あっ!」」僕とジャックそして······支援部隊側のマーシュとオスターがそれぞれ驚きの声を発したのだった。

 
 それから洞窟に着くまでお互いの自己紹介やら雑談を交わしたりしながら向かい、暫くして目的の洞窟前に辿り着いた。

「よし、ではこれからだが······」オリバー隊長は洞窟内での行動についての説明を行った。

 まず僕が先頭を歩き、その後ろを松明を持ったオリバー隊長、デビットと続き、その後ろを支援部隊の一行、そして松明を持ったジャックにライアンの順に並んで進む事とした。

 そして僕が集中スキルを発動させながら進み、スライムに遭遇したら事前に話したように対応し、アースラットに遭遇したら基本はデビットの鞭とライアンの斧で一掃し、火薬の調達後は槍や各種剣を用いて地道に討伐していく事となった。

 オリバー隊長の説明が終わったところで順次洞窟に入って行った。洞窟に入って少ししてから集中スキルを発動させて進んだ。

 途中でやはりアースラットの群れを前方に感知したのでデビットが鞭を使って攻撃し、こぼれた奴を僕やオリバー隊長が倒した。

 その後も前方から、そしてたまに後方の脇道からアースラットが襲って来たが、それぞれ事前の打ち合わせ通り主にデビットの鞭やライアンの斧で一掃した。

 その間スライムとは偶然にも一度も遭遇する事なく無事に火薬の保管場所に到着出来た。

 
「よーし! 準備に取り掛かるぞ!」「「了解!」」支援部隊小隊長の合図とともにマーシュら支援部隊側が火薬の持ち運び作業に取り掛かった。その間僕達は念のために周りを警戒した。

 暫くして支援部隊側の作業が終わったようなので、これまで以上に注意を払いながら出口に向かった。

 帰りはスライムどころかアースラットとも今のところ一度も遭遇する事はなかった。

 恐らくもうすぐで出口に辿り着くというところで「っ! 止まれ!」オリバー隊長が急に進行を止めた。

「どうした? オリバー」支援部隊小隊長が尋ねると、「レックス、集中スキルではこの辺りでは何も感知出来てないのか?」「は、はい。何も······」「なら覚醒で感知してみろ」と言われたので集中スキルの覚醒を発動させてみたら、すぐ隣の方で無数の反応を感知した。

 そのため「こ、こっちの方から無数の反応を感知しました!」とオリバー隊長に伝えた。

(やはりな)オリバー隊長は顔を強張らせ隣の壁のような場所を見ながら「この壁は恐らくスライムどもの擬態だろう」と言った。

「えっ!?」それを聞いて全員が驚き支援部隊小隊長が「な、なぜ分かったんだ?」と尋ねた。

「来る時ここを通った際、後ろを振り向いたら二股に道が分かれていたはずなのに、今は一本道になっていたからおかしいと感じたんだよ」と答えた。

 それを聞いて僕は(そ、そこまで見てたんだ!?)とさらに驚いたが、どうやら皆も同じ気持ちのようだった。

「と、取り敢えずどうするんだ? コイツら」「まず支援部隊は少し離れててくれ。ライアン! 支援部隊の警護を頼む!」「りょ、了解」

「レックス! お前は両手でエアーブロウを放てれるよう溜めておけ!」「りょ、両手で?」

「そうだ。訓練最終日にアッシュと戦った時のように意識して溜めれば簡単だろ」「わ、分かりました!」

「ジャック! デビット! お前達はレックスが溜め終わるまでスライムの相手をして時間を稼ぐんだ!」「「了解!」」オリバー隊長はそれぞれに指示を出した。

 
 早速レックスは······"ある人物"との出来事を思い出しながらエアーブロウの発動準備に取り掛かった。

 その間にまずジャックがクロスボウに矢をセットし、その上で松明の炎を矢に移したところでスライム目掛けて······放った。

 すると炎の付いた矢は壁に擬態していると思われるスライムの群れの一部に刺さった。直後、矢が刺さった辺りが急に燃え広がりだした。そして、その辺りのスライムが次々と崩れだしたのだった。

 その後炎を免れたスライム達が僕達に向かって来た。そのスライム達を槍に炎を移していたデビットのスキル"乱れ打ち"で撃退しつつ、改めて矢に炎を移したジャックのクロスボウでも撃退していった。

 
 そうして2人がスライム達を相手にしている内に、ブゥーン! と僕が溜めていた両方のエアーブロウがかなりの大きさとなった。

 それを見たオリバー隊長は「良し! デビット、ジャック、スライム達から離れろ!」「はい!」「レックス! 2人が離れたらすぐに放て!」「了解っ!」と3人に指示を出した。

 直後、デビットとジャックは隙を見てスライム達から離れ、すぐにレックスが「食らえーーっ!」と両方のエアーブロウを同時に前に放った。

 そのエアーブロウによって前方のスライムや、たまたまスライム達の後ろに存在していたアースラットの群れは洞窟の出口方向に激しく吹き飛ばされたのだった。

 その光景を自身も吹き飛ばされないよう注意していたオリバー隊長が確認し、他の者に「今のうちに素早く慎重にこの場を離れるぞ!」「「はいっ!」」と伝え、皆が急いで火薬を気にしながら出口に向かった。

 僕もまた「······チッ」と舌打ちをした後に皆に続いて出口に向かった。

 そうして何とか全員洞窟から無事出る事が出来たのだった。

 
「「よ、良かったぁー!」」「何とか出れたー」皆安心しきっていたが、「まだ安心している場合じゃないぞ! 騎士団本部に戻るまでは何があるか分からんのだからな!」オリバー隊長の檄が飛んだのだった。

 それを聞いて特に僕達4人は気を引き締め直した。そしてその後も火薬に注意を払いながら歩き続け······無事本部に帰還したのだった。

 
「今日は両隊ともよく無事に任務をやり遂げたな。これからもこのように別の部隊や小隊と組んで任務を行う事もあるだろうから、今日の経験を忘れないようにな!」「「はい!」」

 オリバー隊長からの労いの言葉を受けた後、「それじゃあ支援部隊は火薬を火薬庫に運ぶのを手伝ってくれ」「「はい!」」

「武闘部隊はここで解散だ」「「はい!」」それぞれの隊長が自分達の隊員に伝え、マーシュ達はそのまま火薬を持って隊長に付いて行き、オリバー隊長は本部内に向かい、僕達はその場に留まった。

「何とか終わったな」「あぁ。それにしても、レックス!」「ん? 何?」「何じゃねぇだろうが! あんなにも大きなエアーブロウ作りやがって!」

「そうだぞ! そんなにも副隊長に何か恨みを持ってんのか!」「えっ? 何で?」「何でって。あの時も副隊長への恨みを思い出しながら作ってたんだろ?」

「あ、いや、あの時は兄ちゃ······副隊長との事を考えてた訳じゃあ無いよ」「「えっ?」」「じゃあ、何を?」

 そう聞いてきたので、僕はチラッ! との方を見た。皆もつられて視線を送った先には······オリバー隊長がいた。

「「······えっ?」」「養成学校時代のオリバー隊長との事を思い出したら、あんなにも大きなエアーブロウが出来ちゃったんだ」「「······ウソ」」

「おまけに」「「お、おまけに?」」「オリバー隊長も一緒に吹き飛ばされそうだったから、そのまま一緒に吹き飛んじゃえぇ! と思ったけど吹き飛ばなかったから、ついつい皆が出口に向かい出した後舌打ちしちゃったぐらいだったから」「「······え゛っ?」」「アハハハハッ!」「「······」」

 この時他の3人は揃って(レックスと隊長の間に何があったんだー!)と思ったが、心に留めておこうと思い3人とも無言でその場を離れたのだった······。

 ちなみに、「······レッ、レックスめぇーーっ」先ほどのレックス達の会話はオリバーにも聞かれており、(お、覚えていやがれ、あのヤロォー)とオリバーの怒りを買ってしまったのだった······。 
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