落ちこぼれ一兵卒が転生してから大活躍

きこうダきこう

文字の大きさ
上 下
157 / 224
第23章 卒業

第157話 新たな旅立ち

しおりを挟む
 寄宿舎に戻ってからも当然騎士団入団試験に向けての勉強をずっとやっていた。

 基本は見張りという名目でジェシーが部屋に居続け、どうしても抜けなければならなくなった場合にアリスと交替していた。アリスとはその時やたまに部屋に来て一緒に勉強をしたり、アリス以外にも騎士団入団を目指しているマーシュやジャック、さらにはメリーやアイラなどとも勉強 (会)を行ったりしていた。

 特に全員が長いこと上級の内容しか学習してこなかったので、下級の内容を補い合いながら楽しく勉強をしていた。

 そうした日々を過ごし······ついにこの日を迎えた。


「ただ今より、サンドリア王国騎士団養成学校卒業式を行う。卒業生入場!」僕達の卒業式が執り行われた。

 普段は滅多に訪れない集会などを行う場所である講堂内には、先生方にドワーフ族の王やエルフ族の王であるフィンラル様を始めとした来賓の方々。また王都内に住んでいる生徒らの親などが出席して僕達を出迎えてくれていた。

 最初にジルコニー校長先生からのお祝いの挨拶が述べられ、続いてフィンラル様やドワーフ族の王様らからの祝辞が述べられた。

 そして最後に、現騎士団団長のパーシバル団長が壇上に立ち、「卒業生諸君、卒業おめでとう。騎士団団長のパーシバル・クンツェンだ。ここにいるほとんどの者は我々の騎士団に入団するために学習してきたと思われる。現在我々騎士団は特に魔物の活動が活発になってきているため、その対処に当たる事が多くなっている」

(僕やアレクさんが忠告した事だ)と思った。「しかし、それ以外にも騎士団としてはやらなければならない事があり、また君達も入団してやりたい事はそれぞれあるだろう。それらに精一杯力を尽くしてくれる事を期待している!」と挨拶を述べられた。

 こうして卒業式は無事終わった。その後僕達は一旦寄宿舎などに戻って着替えをし、お城の大広間で行われる卒業パーティーに出席した。


 パーティー会場には既に先生方が待っていて、また食べ物や飲み物も多種多様大量に用意されていた。そして、ほぼ全員が集まったところで「卒業生諸君、卒業おめでとう! 乾杯!!」「「「乾杯!」」」の合図でパーティーが始まった。

 皆用意された物を飲食したり友人らとの会話で盛り上がっていた。僕もアリスと食べ物を食べたりしながら、「で、は一体いつから来てたんだ?」と隣で黙々と食べ物を食べているベアーズをジト目で見ていた。

 なぜか先に来て並んでいた先生方の列にコイツもちゃっかりいやがったのだ。そして乾杯の合図までしっかり待っていて、合図の直後に黙々と食べ始めたのだ。

「フフフッ、本当にそうね。でもベアーズも少なくともこの場にはいてもおかしくはないんじゃない? ずっと私達と過ごしてきたんだから」「まぁそれもそっか」と話していたら、「レックス!」とロースがやって来た。

「やぁ、ロース」「もう足は大丈夫なの?」「うん。つい一昨日ドクトリー先生からも許可をもらって松葉杖を返したところだよ」「そっか。何とか入団試験には間に合ったんだね」「うん。でも入学前の期間も合わせて4年間一緒に過ごしてきたけど、これでロースとも滅多に会えなくなるね」「うん。でもフィンラル様も祝辞で述べてたじゃない。『これからは我々もヒト族ともより協力をしていく所存です』って」「確かに言ってたね」

 そう、卒業式でフィンラル様が「以前は我々エルフ族は他種族とは滅多に接する事はありませんでした。しかし近年発生致しましたダークエルフらの襲撃の折りには、養成学校の関係者始めヒト族の協力によって被害を最小限に抑えられたのは事実であり、そして先日のダークエルフとの大決戦でも多くのモノの協力で勝利を収めました。こうした経験からも今後は我々もヒト族ともより協力をしていく所存です」と述べていた。

「だからこれからも一緒に戦う事があるかもね」「そうだね。まぁその時はよろしく」「こちらこそ」と会話を交わしてロースは離れていった。アリスもそのすぐ後に友達の所へ行ってしまった。

 そして1人きり(ベアーズはすぐ隣にいるが)になったがすぐにジャックが近付いて来た。

「よぉ、レックス」「ジャック」「お前とは2年間しか一緒じゃなかったけど、その間に色んな事があったよな」「うん。本当にそうだったね」本当に僕にとっても色々起こりすぎた2年間だった。

「まぁでも、騎士団に入ればまた一緒になるだろうけどな」「そうだね。取り敢えずまずは明日からの入団試験を頑張らないとね」「そうだな······」まだ何か言いたそうな雰囲気であったが、それを打ち消すぐらい周りが急に騒ぎだした。

「「オォーー!」」騒ぎの先にはネールとライアンに護られたジェシーがいたのだった。

 ジェシーらの姿を見て、「あれじゃあそりゃ皆騒ぐよなぁ」「そうだな」と言った後、「······レックス」「うん?」「ジェシーの事、これからも頼むな」「っ! ······うん。分かったよ」「フッ」そう会話を交わして僕達もジェシーらの姿を見続けていた。

 そんな僕達に気付いて「レックス! ジャック!」ジェシーが寄って来た。そして暫く3人で話した後、ジェシーもジャックも他所に移動した。

 僕も直後にその場を離れて友人らと会話したり、飲食物を堪能してパーティーを楽しんだ。


 いよいよ明日からは次なる舞台、王国騎士団での生活が始まる······かもしれないんだ。その期待感と明日からの試験が無事合格出来るかの不安感で心がいっぱいになっていた。










 そんなパーティーの最中、「レックス、ちょっと」突然アリスが僕の手を引っ張って誰も来なさそうなパーティー会場の隅に連れて来た。

「何だよアリス。こんな所に連れて来て」「レックス。正直魔王軍との決戦まで、後どれぐらいの猶予があるの?」と聞いてきた。

「っ!」自分の中ででももう間もなくだと意識はしていたけど、他人から言われたら改めて実感が湧いてきた。その上で······。

「確か僕達の誕生日が訪れる前には始まっていたはずだよ」「じゃあ、もうあんまり猶予が」「でも」「でも?」「夏の暑い時期は確か過ぎていたはずだったよ」「それじゃあ」コクッ「多分なんだけど、恐らくあと······」

 運命の魔王軍との決戦の日まで、あと約6ヶ月。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

追放された運送屋、僕の【機械使役】は百年先の技術レベルでした ~馬車?汽船? こちら「潜水艦」です ドラゴンとか敵じゃない装甲カチカチだし~

なっくる
ファンタジー
☆気に入っていただけましたら、ファンタジー小説大賞の投票よろしくお願いします!☆ 「申し訳ないが、ウチに必要な機械を使役できない君はクビだ」 ”上の世界”から不思議な”機械”が落ちてくる世界……機械を魔法的に使役するスキル持ちは重宝されているのだが……なぜかフェドのスキルは”電話”など、そのままでは使えないものにばかり反応するのだ。 あえなくギルドをクビになったフェドの前に、上の世界から潜水艦と飛行機が落ちてくる……使役用の魔法を使ったところ、現れたのはふたりの美少女だった! 彼女たちの助力も得て、この世界の技術レベルのはるか先を行く機械を使役できるようになったフェド。 持ち前の魔力と明るさで、潜水艦と飛行機を使った世界最強最速の運び屋……トランスポーターへと上り詰めてゆく。 これは、世界最先端のスキルを持つ主人公が、潜水艦と飛行機を操る美少女達と世界を変えていく物語。 ※他サイトでも連載予定です。

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

2回目の人生は異世界で

黒ハット
ファンタジー
増田信也は初めてのデートの待ち合わせ場所に行く途中ペットの子犬を抱いて横断歩道を信号が青で渡っていた時に大型トラックが暴走して来てトラックに跳ね飛ばされて内臓が破裂して即死したはずだが、気が付くとそこは見知らぬ異世界の遺跡の中で、何故かペットの柴犬と異世界に生き返った。2日目の人生は異世界で生きる事になった

処理中です...