落ちこぼれ一兵卒が転生してから大活躍

きこうダきこう

文字の大きさ
上 下
146 / 224
第22章 告白

第146話 クリスマスの夜に・・・

しおりを挟む
 二度目の騎士団からの依頼以降も捜索系クエストをこなし続け、マックス先生からの"Sランク系捜索クエストを1人で"という課題も無事完了させられた。

 そうして冬季休暇前の試験日を迎えた。今回も試験問題は3問で1問目は夏季休暇前試験時に予告されていた問題であった。

 そのため"卒業後はサンドリア王国の騎士団に入団し、非常時は他の者とその対応に当たり、平常時には遭難者や遺失物などの捜索業務に従事したいと考えています。"と答え、他の2問も大丈夫だろうと思える解答を書けた。

 そうして試験が終了し、後日結果が発表され無事合格だった。

 そして数日後から冬季休暇が始まり、休暇に入ってすぐ今年も孤児院でクリスマスパーティーが開催された。

 今年は兄ちゃんはお城で開かれているパーティーへの警備と参加で来れないし、アリスはマーシュと食事 (デート)と言っていたので、参加しているのは僕とお姉ちゃんとコリーの3人にベアーズ。そして······。


「はい、ジョンくん」「ありがとー。ジェシーおねえちゃん!」お城でパーティーが開かれているのだが、ジェシーも孤児院でのクリスマスパーティーに参加していたのであった。

 当然お城のパーティーに比べて料理も内容も質素で簡素なもののはずだが、それでもジェシーは心の底から楽しんでいたのだった。

 そしてパーティーも終わって僕とジェシーは2人で寄宿舎に帰っていた(もちろんベアーズも)。


「とっても楽しかったわね。みんなも嬉しそうだったし。こっちに参加して本当に良かったわ」「でもよく国王様とか許してくれたね?」「うん。レックスやベアーズと"孤児院の"パーティーに参加するって言ったら、二つ返事で許してくれたわ」

(孤児院のって言ったから許してもらえたのかなぁ? それともまだジェシーの傷を治した事への恩義を感じてるのかなぁ?)と思った所で、とにもかくにも渡すなら今だと思ってジェシーに話し掛けた。

「······あのさ、ジェシー」「何? レックス」「本当はジャックと一緒で傷が全快したお祝いで渡すつもりでいたんだけど、渡しそびれてクリスマスプレゼントと兼ねる事になっちゃったんだけど、これ」と言ってずっとポケットに入れ続けていた物を取り出した。

「っ! それって?」「ジャック同様海底洞窟の地底湖に落ちていたそこそこの大きさの真珠を1個拾ったんだ。それでお姉ちゃんに教えてもらいながら首飾りを作ったんだよ」「レックスの手作り!」と驚きながら首飾りを両手で受け取った。

 それを眺めて「嬉しい」と言って僕も手伝いながら首に掛けた。

 その後改めて真珠部分を両手で包んで「レックス、本当に、ありがとう。絶対に一生大事にするわ」と涙を溜めながら言った。

「喜んでもらえて良かったよ」そう言った直後ジェシーは涙を流しながら僕の方を見て「レックス」と呟いて僕に抱き付いて来た。

 そして「今年に入って、あなたと出会えて本当に良かったって今でも思っているわ」と言われたが、僕は坑道から出た時同様ただ呆然と立ち尽くしているだけだった。

 さらに「それにあの坑道の崩落事故の時、レックス達も生き埋めになってしまったかもって聞こえてきた時には本当に心配して、もう会えないんじゃないかと本気で思ったのよ」そこまで言われたところで、「ジェシー」と呟いた。

 直後、「レックス」と言ってジェシーは僕の顔を見て「······大好き······」とひと言呟いたのだった。

 それを聞いて僕は目を見開き驚いた。そしてジェシーはゆっくり目を閉じた。

(ジェシー)目の前のそんなジェシーの様相を見ながら、(やっぱり、僕も君の事が好きになったよ。だけど······)そこまで思って前世で騎士団の誰かに小剣で腹を刺された場面を思い出した。

(あの出来事を話さずに付き合ったりしたら、いずれジェシーを悲しい思いにさせるだけだ!)と心で強く思い、やはりここは······。

       ケジメをつけなければ         


 そう思って僕は一度ジェシーの両肩に手を置いて彼女の体を僕から離した。

 突然の僕の行動にジェシーは驚いて「レックス?」と聞いてきた。

「ジェシー、僕も君の事が大好きだよ。だからこそ、今から僕が大事な話をするから、それを聞いた上で改めて僕への気持ちを考えて欲しい。それでも僕を好きと言ってくれるなら、僕も君の気持ちを真剣に受け止めるよ」と伝えた。

「大事な話?」と聞いてきたので無言で頷き、そして「今のままだと、僕はもうすぐ······死んでしまうんだ!」「えっ?」

「もうじき、多くの種族が連合軍を結成して魔王の軍勢と戦う事になって、僕もその戦いに参加する事になるんだ。その時、仲間の誰かによって僕は······殺されてしまうんだよ!」「ころ、される?」

「うん。ただ僕の死は神様も予期していない出来事だったと後から言われたんだ。だからその出来事を無かった事にするために、僕の人生を······赤ん坊時代からやり直す機会を与えてくれたんだ!」

「人生を、やり直す? ······じゃあ」無言で頷き「今の僕は、2度目の人生を送っているんだよ。もうすぐ訪れる、誤った死の運命を回避するために!」「っ!」それを聞いてやはりジェシーは凄く驚いていた。

「そのための行動はこれまでもしてきたんだけど、まだ具体的にどうすれば良いのかは分かってないんだ。だから、もしこのままあの戦いが始まれば、また誰かに殺されてしまう事になるかもしれないんだ」

 そこまで言ってジェシーを見たが、驚いたり今の話を疑うような表情ではなく、真剣な顔つきで僕を見つめていた。

「だからもし今君と付き合ったとしてもすぐに、しかも悲しい別れ方をしてしまう事になるかもしれないんだ」この事を聞いてやはりジェシーの表情は驚きを隠せないでいた。 

「正直、君にそんな悲しい思いをさせたくなくて僕の秘密を話したんだ」(っ! レックス)それを聞いてジェシーは僕に感謝の気持ちを抱き、そしてあるを固めたのだった······。

「それでも、僕と付き合っても良い······っ!」僕が話を言い終わる前に、ジェシーは僕にキスをしてきたのだった。

 突然の事態だったが、(ジェシー)彼女の行為の真意を理解したため彼女のキスを素直に受け入れ、僕は目を閉じジェシーを抱き締めたのだった。

 暫くしてジェシーが唇を離した。そして、「たとえあなたにどんな未来が待っていても構わないわ。だって······」と言って再び僕を見つめ出し満面の笑顔で「今のあなたを、好きになったのだから」と答えてくれた。

「ジェシー」「レックス」そう呼び合ったところで、どちらからともなく再びキスをした。  

 こうして、僕はこの日ジェシーと正式に恋人同士となったのだった······。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

おっさんの異世界建国記

なつめ猫
ファンタジー
中年冒険者エイジは、10年間異世界で暮らしていたが、仲間に裏切られ怪我をしてしまい膝の故障により、パーティを追放されてしまう。さらに冒険者ギルドから任された辺境開拓も依頼内容とは違っていたのであった。現地で、何気なく保護した獣人の美少女と幼女から頼られたエイジは、村を作り発展させていく。

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

転生王子はダラけたい

朝比奈 和
ファンタジー
 大学生の俺、一ノ瀬陽翔(いちのせ はると)が転生したのは、小さな王国グレスハートの末っ子王子、フィル・グレスハートだった。  束縛だらけだった前世、今世では好きなペットをモフモフしながら、ダラけて自由に生きるんだ!  と思ったのだが……召喚獣に精霊に鉱石に魔獣に、この世界のことを知れば知るほどトラブル発生で悪目立ち!  ぐーたら生活したいのに、全然出来ないんだけどっ!  ダラけたいのにダラけられない、フィルの物語は始まったばかり! ※2016年11月。第1巻  2017年 4月。第2巻  2017年 9月。第3巻  2017年12月。第4巻  2018年 3月。第5巻  2018年 8月。第6巻  2018年12月。第7巻  2019年 5月。第8巻  2019年10月。第9巻  2020年 6月。第10巻  2020年12月。第11巻 出版しました。  PNもエリン改め、朝比奈 和(あさひな なごむ)となります。  投稿継続中です。よろしくお願いします!

処理中です...