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第22章 告白

第145話 騎士団からの依頼2~依頼完了~

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 壁際の周りよりへこんだ所を黒い短剣で突ついたらメキメキと亀裂が入り出し、壁の一部が崩れるという出来事を僕達はただ呆然と見とれていた。

 暫くしてようやく兄ちゃんが、「や、やった。やったぞレックス! 外と繋がったぞ!」「う、うん。や、やったん、だよね」兄ちゃんは喜び出したけど、僕はまだ状況を受け入れられずにいた。

 そこへ「何だ! 今の音は!?」外の少し遠くの方から声が聞こえた。

 そして次の瞬間、「っ! ア、アッシュ殿! それにレックス殿!」騎士団の団員らが現れ、僕達の名前を叫んだ。

「ご無事でしたか!」「ああ、何とかな。あと向こうに先遣隊が倒れている。恐らく気絶しているだけだと思うが」「わ、分かりました! おい、すぐ団長に報告だ!」「はっ!」1人が野営地に向かい、他の団員は兄ちゃんの案内で先遣隊が倒れている地点に向かった。

 僕は一応団長さん達が来るのをその場で待つ事にした。

 暫くして団長さん達が来たので一緒に兄ちゃん達が向かった場所に向かい、先遣隊員を外に運んだところで魔王配下の魔物と対峙した事を伝えた。

 それを聞いて流石に団長さんも驚き、さらにそいつを倒したと聞いて更に驚いていた。

 その魔物が倒れている広間まで僕が案内し、広間に着いて魔物が倒れているのを団長さん達が確認したところで僕達は解放されたのだった······。
 

「ようやく外に出た心地になったな」「そうだね」と野営地の方向に歩いていたら、「レックスー!」と叫びながらジェシーがこちらに駆けて来た。   

「ジェシー!」僕も叫び返したら突然ジェシーが僕に抱き付いて来たのだった。

 そして「良かった! 無事で本当に良かった!」と涙を流しながら言ってきた。

 突然の事態に僕が戸惑っていたら、隣にいた兄ちゃんが脇腹を軽く肘で小突いて、小さく顔を横に振ってみせた。

 僕もその動きを理解してジェシーを抱き締めたのだった······。

 そんな僕達の様子を少し離れた所で見ていたアリスに兄ちゃんが近付いて、アリスの頭をポンポンと撫でて「お前もお疲れ」と言ったら、「うん!」と明るい笑顔を兄ちゃんに見せた後、2人でまた僕達を見つめ出したのだった。

 こうして今回の騎士団からの依頼もひとまず完了となった。

 その後僕達は兄ちゃんに一声掛けて後の事を任せ、クリスタルの洞窟に寄って王都に帰った。

 そしてギルドに寄ってレナさんに事の子細を話して依頼書をもらい、2人とも別れた。


 翌日は流石に昨日の疲れが残っているため1日部屋でのんびり過ごす事にしていたら、同じく1日休みをもらった兄ちゃんが久しぶりにお姉ちゃんを連れて僕の部屋を訪れ、昨日の一件の事後報告をしてくれた。

「じゃあ、やっぱり昨日のあいつは」「ああ。団長達が昨日城にあった文献で調べて、ようやく魔王が連れて来た魔物の1体で、"フレイムリザード"って奴だと分かったんだ」

「けど、そんな奴が何であの坑道にいたんだろう?」「そこまでは分かってないが、以前のワーウルフや今回のフレイムリザード、他にもこれまで見掛けなかった魔物が頻繁に出現しているみたいなんだ」

「そうなの!?」「うん。それで団長も何かの前触れかもしれないと思って警戒心を強めたんだ」

 確かに、恐らく1年後の今頃にはあの魔王軍との一大決戦が起こっているだろうから······。

「だからこそ団長も更に期待を持ち出したみたいだぜ、お前が騎士団に入団するのをな」「あはは、そうなんだ。まぁ僕も今回の一件でを手に入れれたしね」

 そう言ってあの坑道の広間に置かれていた岩の板に突き刺さっていた黒い短剣を取り出した。

「それが最後の?」「うん、そうだよお姉ちゃん」お姉ちゃんが聞いてきたのでそう答え、3つの物を書いた紙を取り出して他の物の事も話し出した。

「青い玉は今海人族の国王様に調べてもらっているし、白い枝は手元にあって後日何であるかフィンラル様に聞くつもりだし、そしてこの黒い短剣も次の休暇の時にハウル様に聞いてくるつもりでいるんだ」

「まさか1年以内に全て揃っちまうとはな」「うん。本当に良かったよ」「そうね」3人でそれぞれ感想を述べあった。


「······さて、それじゃあ昨日の事後報告や真面目な話はこれぐらいでもう良いだろう」「えっ?」

 突然兄ちゃんがそう言い出したので僕は不思議に思っていたら、腕を肩に回してきて「レックス、メリッサから話は聞いているぞ。お前、前々からジェシー王女と知り合いだったってぇ?」

(あ、ヤバイ)「つまり、前回俺達と騎士団員の捜索をした時には既に知り合いだったんだよなぁ?」兄ちゃんがそう話している間、僕は目を瞑って固まっていた。

「それをお前は"また"隠していたんだよなぁ?」「······」「で、一体いつから知り合いだったんだぁ!」と言いながら両手で首を絞め出してきた。

「く、苦しい、苦しい」「自業自得だぁ!」「そ、そんなぁ······」そんな僕達のやり取りをお姉ちゃんは笑って見てるだけだった······。

 ようやく兄ちゃんが手を外したところで、ジェシーと知り合いになった経緯を話した。

「それじゃあ」「うん。兄ちゃん達の卒業パーティーを開いた翌日に街でチンピラ達に襲われてたところを助けて知り合って、新学期に正体が分かったんだ」

「そんな時から分かってたのか」「うん。でも流石に相手の身分が身分だから、兄ちゃんには伝え辛くて話さなかったんだよ」

「まぁ仕方ねぇか、それは」「そうよ、アッシュ」お姉ちゃんが擁護してくれた事でこの話も打ち切りとなった。

「じゃあ俺達は帰るわ」「うん。じゃあまた」と挨拶を交わしたら、「アッシュ、先に外に行ってて」とお姉ちゃんが言ったので「分かった。外で待ってるよ」兄ちゃんだけが部屋を出た。

 2人きりになったところでお姉ちゃんが「それで、レックス君。ジェシーちゃんへの全快祝いは渡せた?」例のプレゼントの事を聞いてきた。

「それが、渡す機会を逃しちゃってまだ渡せてないんだ」「そっか。早く渡せると良いわね」「うん」

「多分、それを受け取ったらジェシーちゃんもきっと物凄く喜ぶと思うから」「そうかなぁ」

「うん。さっきのレックス君とジェシーちゃんの出会い方を聞いたら余計にね」「えっ?」「だって、私とアッシュとの出会い方にそっくりだったから」

(あー)お姉ちゃんにそう言われ改めて思い出してみたら、確かに男達に絡まれていた所を助けたのが兄ちゃんとお姉ちゃんの出会い方だったなぁ。

 しかもその後の授業の代わりであるクエストをお互い助け合ったりしたのも2人と似ているような······。

 そう考えていたらお姉ちゃんが肩に手を当ててきて、「頑張ってね」と言って部屋を出て行った。

 1人きりになったところでジェシーとの思い出を思い返した。

 男達に絡まれていた所を助けた時。新学期初日にベアーズの所で出会った時。ポピーからの依頼を受け一緒に海底洞窟へ行った時。夏季休暇中の村や王都での出来事。お城の部屋を訪れた時。そして······。

 ーー良かった! 無事で本当に良かった!ーー坑道から出て再会した時に抱き付かれた後に涙を流してそう言われた時。

 全ての思い出を振り返ったうえで、お姉ちゃんの言う通りかも知れないし、それでいて僕自身も(もしかすると······)と考え込み出したのだった······。
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