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第22章 告白

第143話 騎士団からの依頼2~崩落捜索~

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 ある日の夕刻、王都より北東部の高山地帯。

 この地に設けられた王国騎士団の野営地は慌ただしい雰囲気となっていた。

 野営地のテント外にいる団員らはあちこちで慌ただしく動き回ったり報告や連絡をし合っていた。

 騎士団団長パーシバルのいるテント内も重苦しい雰囲気が漂っていた。

 そこへ「報告します!」「状況は!」「はっ! やはりあちこちで落盤が発生しており、遭難者の安否は確認出来ずとの事です!」「やはりか。とにかく引き続き調査の継続をするよう伝えてくれ」「分かりました!」と報告に来た団員はテントを出た。

「いかが致します? 団長。これ以上継続しても事態が悪化するだけかと······」

 そう団員に問われ少し考えた後団長は「本部に連絡してアッシュをこちらに召集しろ! それから」「それから?」「ギルドに連絡して"彼"に来てもらうよう頼んでくれ」「彼? あっ!」団長は無言で頷き「また彼の力を借りねばならないだろう······」


 翌日、いつものようにベアーズとギルドにクエストを探しに来た。ちょうどボード前にジェシーを見掛けたので声を掛けようとしたら、「レックス君っ!」受付からレナさんが呼んだのでそちらに向かった。

 ジェシーもレナさんの声で僕に気付いて受付の方を見ていた。

「レックス君、すぐに北東部の高山地帯に向かって欲しいの」「何かあったんですか?」

「どうやら騎士団がその辺りに調査隊を派遣したんだけど、そこの坑道で崩落事故が発生したみたいで、団員の何人かが生き埋め状態になったみたいなの」「ホントですか!?」

「それで昨夜急きょ明日君に伝えて現場に来てもらうよう頼んでくれと連絡が入ったの」「分かりました。すぐ向かいます!」

「お願いね。依頼書は帰って来るまでに作成しておくから」「はい!」と言ってベアーズとすぐにギルドを出た。

 ギルドを出たところで「レックス!」ジェシーが声を掛けてきた。

「私も一緒に行くわ。怪我人が多くいたら治療出来る人も必要のはずでしょ?」「分かった。行こう!」「うん!」と2人で向かった。

 また途中でアリスとも遭遇したので、「アリス!」「あ、レックスにジェシー。どうしたの慌てて?」

「実は北東部の高山地帯で崩落事故が発生して、騎士団員が生き埋めになっているみたいなんだ」「うそ!?」

「それで今から現場に行くんだけど、アリスも来てくれる? 治療班の手伝いをしてもらうために」「うん、分かった!」

「じゃあ準備が出来たらクリスタルの洞窟前に来て!」「分かった!」と言って一旦アリスとは別れた。

「レックス、どうしてそんな所で待ち合わせを?」「その洞窟に用事があってこれから行くからだよ」

 そして洞窟前に着いたところで「ジェシーはここで待ってて」「う、うん」と言って僕はベアーズと洞窟に入った。

 程なくしてアリスも洞窟前にやって来た。「ジェシー、レックスは?」「それが、ベアーズと洞窟に入ったきり出てこなくて」

「きっとを呼びに行ってるだけだから大丈夫よ」「あの子達?」そこへちょうどレックス達が戻って来た。

「お待たせ!」とレックスが出て来て、ベアーズが出て来た時に全身に黒いモノが引っ付いているのが見て分かり、ジェシーが堪らず「きやっ!」と悲鳴を上げた。

「大丈夫だよジェシー。これ皆ヴァンパイアバットなんだ」「ヴァ、ヴァンパイアバット?」そう聞いてジェシーはよく見たら、確かにヴァンパイアバットだと分かった。

 ヴァンパイアバットの事は先のダークエルフ達との騒動の時に知ったので、「この子達を呼びに来たのね」「うん。それじゃあ急ごう!」改めて北東部の高山地帯を目指した。


 その高山地帯には同じく召集を受けたアッシュがレックス(達)を待っていた。そしてレックスの姿が見えたので「おーい! レックスぅ!?」と呼び掛けたが、レックス以外に2人の女性が同行しているのに驚き、さらにその正体も分かったのでさらに驚いた(アリスはともかく、何でジェシー王女様まで!?)。

 レックスもアッシュに気付き「兄ちゃーん!」と呼び掛けた。

「お待たせ!」「あ、ああ。なぁレックス、何でアリスやジェシー王女様まで一緒なんだ?」「2人には治療班のお手伝いをしてもらおうと思って連れて来たんだ」

「あ、そうなんだ。取り敢えず、団長の所に行こう」「うん!」と皆で団長さんのいるテントに向かった。

「団長、レックス達が来ました!」「来てくれたか(達?)」兄ちゃんが入って報告した後、僕達も入った。

「失礼します!」「よく来てくれたレックスく、ジェシー王女様!?」「お久しぶりです、パーシバル団長さん」

「な、なぜあなた様が? それに、そちらの女性は?」「初めまして。サポート科3年のアリス・テレンシアと言います」「サポート科······はっ!」そこで団長さんは2人が来た理由を理解し、傍にいた団員に「すぐ2人を治療班の所に案内して差し上げるんだ!」「は、はいっ! こちらです」と団員の1人に案内され、僕に一言ずつ声を掛けて2人はテントを出た。流石は騎士団の団長さんだと感心した。

「それで、どういう状況何でしょうか?」僕が質問したら最初から説明して下さった。


 数日前にこの近辺から奇妙な雄叫びが聞こえだしたと相談が寄せられ、騎士団から先遣隊を組んで調査したところ、この辺りの坑道内から雄叫びが聞こえる事が判明し、坑道を調査しようとしたら崩落事故が発生したとの事だ。

「最初の崩落に巻き込まれた団員を捜索するために結成した捜索隊も、後々発生した崩落事故によって生き埋め状態になってしまったのだ」

「そんな······」「そこまで酷い状況に」

「ああ。流石にこれ以上はと判断し、君に頼らせてもらおうと決めたんだ、レックス君」そこまで話して僕を見た。

「そして、元々の目的であった奇妙な雄叫びの調査の件もあって君にも来てもらったんだ、アッシュ」今度は兄ちゃんを見た。

「正直君達2人だけに頼る事になってしまい情けないんだが、何とかこの事態を打開する力を貸して欲しい」と団長さんは頭を下げた。

「騎士団の一員としては当然の事です、団長!」「僕も、騎士団に入団する者としては理解しています」とそれぞれが答えた。

「ありがとう」団長さんがお礼を言ったところでテントの外に出た。


「とはいえ、2人だけでどうする?」「2人だけじゃないよ」「え? ああ、ベアーズもか」

「いや、もっとを連れて来てるんだ」「え? もっとって?」

だよ」と指した先にいたベアーズの体の周りが真っ黒状態だった事にアッシュも一瞬驚いていた。

 だけどすぐに「もしかしてあれ、ヴァンパイアバット達か?」「そうだよ」「コイツらを連れて来てたのか! なら百人力かもな」「うん!」と言って僕達は坑道の入口まで向かった。

 坑道の入口に着いたところで、まずヴァンパイアバット達に坑道に入ってもらって中の様子を確かめさせた。暫くして何匹かが出て来た。

 出て来た順番に僕達も現場に向かって様子を確かめ、特に問題もなくすぐに発見して救助出来た人もいればやはり落盤が発生していてその先にいた人もいた。その時は応援を呼んで岩などをどかした後に救助した。

 そうして先ほど団長が話していた捜索隊のメンバーは全員無事発見する事が出来たのだった。

 その知らせや僕達の一連の動きを見て団長さんはもちろん、周りの団員らも残りの先遣隊の発見も期待しだした。


 その時、「グギャー!!」坑道の中から物凄い雄叫びが聞こえてきた。

「い、今のは?」「恐らく、今のが相談された雄叫びだろう」と団長さんが説明してくれた。

 その直後、1匹のヴァンパイアバットが物凄い勢いで坑道から出て来てベアーズと何か話をし出した。

 話を終えた後、ベアーズが僕に何か訴えるように見てきた。

 それを見て僕と兄ちゃんは何かあった、もしくは起ころうとしていると判断し、「団長! 中で何かあったみたいなので俺達で様子を見て来ます!」と兄ちゃんが団長さんに言った。

「分かった。くれぐれも気を付けるんだぞ」「「はいっ!」」そう答えて僕と兄ちゃん、ベアーズは今戻って来たヴァンパイアバットに案内されながら坑道の中に入って行ったのだった······。
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