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第20章 将来

第135話 騎士団からの依頼~捜索~

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 兄ちゃんから捜索へ同行する小隊メンバーを紹介された後、僕達は2人がいなくなった場所へ向かった。

 兄ちゃん達が所属している部隊は基本馬に乗って移動するため、僕は兄ちゃんが乗る馬に同乗させてもらった(ベアーズは自分で走った)。

 現地に向かいながら僕達は最近の事を話し合った。

「(それで、ジャックとの関係はどうなったんだ?)」「(特に今のところは何もないよ。3年の授業内容は兄ちゃんも知っての通りだろうから)」「(ああ、そういやぁそうだな)」

「(それより、ようやく左右の顔の男達の正体が分かったよ)」「(ホントか!?)」「(ジェシー王女は知ってるよね?)」「(ああ。第2王女様だろ?)」「(その彼女の護衛役の2人だったんだよ。しかも1人はクラスメイトになったし)」

「(マジかよ!?)」「(その上ジャックがジェシー王女の幼馴染みだったんだ)」「(ウ、ウソだろぉ。てことは3人ともジェシー王女様の関係者かよ)」「(うん)」「(じゃあ、これからはジェシー王女様の行動も気に掛ける必要があるかもな)」「(そ、そうだね)」······取り敢えず、ジェシーと仲良くなったというのは伏せておこう。


 などと兄ちゃんと話していたら「アッシュさん、この辺りじゃありませんでしたか? 2人がいなくなったのは?」先頭を走っていたフレッドさんがそう言い、「そうだそうだ。この辺りだ」兄ちゃんも気付いて馬を止めた。

 全員馬から降りた後、僕が集中スキルを使って周りを探ってみたが何も感知出来なかった。

「てことは2人はここからどこかへ移動したのか」「しかし一体どこに?」オリバーがそう言ったところで兄ちゃんがベアーズがなぜか地面に残った跡を気にしている事が気になった。

「なぁオリバー、確かこの跡昨日探しに来た時も俺達気にしていたよな?」「あぁ。だが人がどんな状態であれこんな跡付けようが無いと関係無いものだって結論付けただろ」

 その跡とは、薄く広い幅の何かを引き摺った跡の上に、2つの幅が狭くて薄い引き摺られた跡だった。

(確かにそうだが、ベアーズが気にしているのが気になる)とアッシュが思っていると、フレッドが「アッシュさん、もしかすると2人の内のどちらかがどちらかを引き摺って移動したんじゃないでしょうか?」と意見を伝えた。

 「っ!!」フレッドの言葉を聞いて残りの3人も感付き、「それだ! それならこの跡の付き方も納得がいく!」「1人が引き摺った際の足跡は引き摺られている方の体を移動させている時に消え······」「引き摺られている方の足の引き摺られ跡が残る事になる」確かに、そうかも。

 3人の言った事に僕も納得し、改めて全員でその引き摺っていった跡の先を辿った。

 するとその跡はやや急な坂の手前まで残っていた。「まさか、この坂を降りたんじゃ?」「ウソだろ······」

 僕が集中スキルで坂の先を探ってみたら、2つの反応を感知した。が、「に、兄ちゃん。坂の下に2つの反応があったよ」「ホントか!」「うん。······だけど」「だけど?」兄ちゃんの方を見て「······多分、ワーウルフのだと思う」と伝えた。ワーウルフと聞いて兄ちゃん達4人は緊張した。

「ど、どうしやす? アッシュさん」「元々ワーウルフ討伐が今回の遠征の目的なんだから、殺るに決まってるだろ!」「だよな」ということで兄ちゃん達は坂を降りて行き僕も続いた。


 坂を降りたところで兄ちゃん達はワーウルフの様子を伺っており、その間に僕は周りを探ってみたら、少し離れた場所に2つの人の気配を感知した。

(もしかして)と思って兄ちゃんに、「(兄ちゃん。あっちに誰か2人いるみたい)」「っ!(ホントか? レックス)」「(うん)」「(······分かった。そっちはお前に任せる)」「(分かったよ)」

 そしてワーウルフはフレッドさんとボブさんで1体、オリバーと兄ちゃんでもう1体相手をする事にし、兄ちゃん達はワーウルフに向かった。

 少しして僕は先ほど2人を感知した場所に向かったらやはり人が2人いた。

「大丈夫ですか?」1人に話し掛けたら「うっ」と反応があった。そして、「き、君は?」と聞いてきたので「騎士団から依頼を受け、アッシュ隊とあなた方を探しに来た者です」

「アッシュ、隊と?」「はい」そこまで話したところでもう1人を見たら、ベアーズが片足を軽く噛んだが反応が無かった。

 それを見て(まさか)と思いその人に近付いて心臓の音を聞いたら、動いているため生きてはいるが非常に危険な状態であった。

 そこで兄ちゃん達の方を見たら驚きの光景を見た。フレッドさん達はまずフレッドさんがワーウルフの周りを猛スピードで動き回って撹乱させながら剣で小刻みにワーウルフを攻撃しており、ボブさんは近くの石に登り力を溜めていたようで、タイミングを見計らって持っていたハンマーを思い切り振り上げてジャンプし、ワーウルフの頭にハンマーを叩き付けてワーウルフを倒した。

 一方兄ちゃん達はオリバーがワーウルフの攻撃を盾で完全に防ぎつつ、ワーウルフが攻撃を止めた隙をついて背後から兄ちゃんが2回連続で強斬スラッシュを浴びせ倒したのだった。

(す、凄い!)と思っていたら兄ちゃん達がこちらに向かって来たので「兄ちゃん! 2人共いたよ!」と伝えた。

「容態は?」「1人は意識があって大丈夫だけど、もう1人は意識がなくて危険な状態だよ!」「っ! フレッド!」「了解!」と兄ちゃんがフレッドさんに声を掛けたらフレッドさんは赤色の信号弾を上空に放った。


 程なくして応援部隊と治療班が僕らの所に到着し、2人に応急処置を施した後慎重に野営地へと運んだ。
 
 野営地への帰り道で兄ちゃんにふと先ほどの戦闘の事を聞いた。

「それにしても、さっきの兄ちゃん達の戦い方凄かったよ」「ああ、あれか。実は皆"スキル"を発動させて戦ってたんだよ」「スキルを!?」スキルって、僕の集中と同じような能力ってこと?

「ああ。フレッドは猛スピードで動きながら攻撃を与える"速斬ファストスラッシュ"。ボブは力を溜めて強烈な一撃を与える"パワーアタック"。オリバーは盾を構えたら攻撃を完全に塞ぐ"オートガード"。そして俺が2回連続で攻撃する"2連撃"だ。皆これらを騎士団に入団して早々の訓練中に開花させたんだよ」「そうだったんだ······」

 僕もハウル様の下での修行中に集中スキルを開花させたけど、訓練でスキルを開花させれるなんて騎士団は本当に凄い所なんだなぁと改めて思った。

 こうして無事野営地に到着し2人の治療が行われた。意識が無かった人も命に別状は無いとの事でひと安心した。

 こうして騎士団からの依頼は無事完了出来たのだった。


 そして団長さんのいるテント内にて、「ありがとうレックス君。君達のお陰で2人を救助する事が出来たよ」「いえ。って、君達?」団長さんの言った事に不思議がっていたら「、人命救助にひと役買ってくれたみたいだからね」とベアーズを見ていた。

「え?」と言いながら考え、(あっ!)と思い出した。ベアーズが意識の無かった人の片足を噛んでいた事を。

「君達が来年騎士団に入団して活躍してくれるのを期待しているよ」「はい!」「じゃあな、レックス」「うん! 兄ちゃん」と言った後、「失礼します!」僕達はテントを出た。

 僕達がテントを出て行った後、「確かに君の言った通り、なかなか頼り甲斐のある少年のようだね」「はい!」(頑張れよレックス。こっちで待っているからな)とアッシュは思っていた。

 テントを出て帰路を歩きながら先ほどの兄ちゃん達の戦闘やスキルの活用状況を思い返し、(僕もいずれああいう風に戦えるようになるのかなぁ······)と思ったのだった。

 次の中間発表会では今回の依頼内容を事細かに報告した。流石にクラス中から凄いとか羨ましいとか良いなぁやらへぇーなど様々な感想や言葉が飛び交い、ハインリヒ先生も「その依頼の経験をしっかり覚えておくように」と仰られたのだった。

 後日、アリスやお姉ちゃんにも騎士団からのクエストで兄ちゃんに再会し、フレッドさん、ボブさん、オリバー······さんとも行動を共にした事を伝えたら驚きつつ、やはりこちらにも羨ましがられたのだった······。
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