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第20章 将来

第128話 帰省と出産

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 夏季休暇に入ってから2日後、僕達は村に向けて出発した。今年も数日かけて赴き懐かしの森の手前に辿り着いた。

 流石に去年のお姉ちゃんと違って初めて森を見た事もあるため、ジェシーは「この森の中に村が!?」「うん。そうだよ」と驚いていた。そしてそのまま森を進み、ウッド村の入口近くに到着した。

「あそこがウッド村なんだ、けど」「あれ?」僕がそう言いアリスも不思議がった。村の入り口付近に人の気配が全く無かったからだ。「皆どうしたんだろう?」「ねぇ?」

 取り敢えず僕らは村の中に入った。そこで村人のほぼ全員が村の奥の方の家の周りに集結しているのを目撃した。

「皆あの家に集まってたんだ」「でもどうしたんだろう?」と思っていて、ちょうどその集まった人の輪の一番外側に父さんとレオおじさんを見掛けたので2人に近付いた。

「父さん! レオおじさん!」僕が呼んだら2人とも振り返り、「「レックス! アリスちゃん!」」同時に僕達を呼んだ。

「ただいま。どうしたの?」「実はジョセフさんが今日出産予定日で、さっきようやく陣痛が始まったんだが、どうやら難産のようでウチの奴らも手伝って今ジョー達が必死に対応してるところなんだ」「「えー!?」」理由を聞いて僕達は驚き、同じようにジョセフさんの家を見た。


 するとアリスが突然、「レックス、ちょっと荷物見てて!」「えっ?」と言ってアリスは自分の荷物を僕に預けた。

 そして「皆ごめん! ちょっと通して! 通して!」と言ってジョセフさんの家の前にいた村人を掻き分けて家に入った。

「お父さん! お母さん!」「アリス! ごめん、今ちょっと手が······」「私も手伝うわ!」「「ええっ!?」」「王都で2、3回出産の現場に立ち会ったし、その内1回は難産の人だったから」とアリスが言ったのを外にいた僕らにも聞こえ、(ウソォー!)と思っていた。

「助かるよ!」ジョーおじさんがアリスの申し出を受け入れ、「それで、今の状況は?」と聞いて状況の説明を受け、「それじゃあ······」アリスがおじさんやおばさん、それに手伝っていた母さんらに指示を出して出産現場を引っ張った。

 暫くして······「オギャー! オギャー!」と泣き声が僕らの所にまで届いた。

「おぉーー!」と家の外にいた人達が一斉に歓声を上げた。

 そしてアリスが出て来て僕らの所に戻ってきて「荷物ありがとね」と言って荷物を引き取った。

「ううん。でも凄いよアリス、出産の手伝いが出来たなんて」「うん。マーシュが入院していた時、ドクトリー先生から診療所を手伝わないかって声を掛けてくれて、その時にも一度立ち会ってマーシュが助かったと分かった時以上に感動したの。それもあってそれからも診療所の手伝いを続けて、出産の手伝いも数回経験出来たの」「そうだったの」

 ジェシーが言うと「うん。それで将来はいつかお父さん達のようにお医者さんになりたいって本気で思いだして、今もその時なんかの役に立つような薬草とかの採集クエストや、あと治療薬とかの運搬クエストを中心に受けてるの」「もうそんな事まで考えてたんだ!」

 アリスは将来の事を考えて既にクエストを受けてるなんて······と思っていたらジョーおじさん達が出産の後処理を終えてジョセフさんの家から出て来た。


「アリスありがとう。助かったよ」「お陰で無事元気な男の子が生まれたわ」と言われアリスも満足気だった。

「でも本当に凄かったわアリスちゃん。一番冷静にいたんだから」と母さんもアリスを誉め、父さんらも色々感想などを言っていた。

 そしてひと息ついた所で、「取り敢えず父さん、母さん、皆。改めて······」と僕が言ってアリスに目配せをしてアリスも理解し、「「ただいま!」」と言い、父さん達も気が付いて「「お帰り!」」と返してくれた。

 その後父さんから「ところでレックス、そちらのお嬢さんは?」と聞いてきたので、ようやくジェシーの紹介をしたのだった······。

 その後はそれぞれの家 (ジェシーは兄ちゃんの使っていた部屋を借りる事になった)に荷物を置いて村の中をジェシーに案内した。

 そして昼ご飯を食べた後ベアーズ達の寝床に向かった。

 寝床に着いてジェシーもベアーを見るのは初めてだったので驚いていたが、ベアーは去年とは違って四つん這い状態でジェシーに近付き、顔を押し付けた。

 そこで暫くベアーやベアーズの事を話し、昔よく行っていた川に連れて行ってそこででも色々な話をしたのだった。

 夕方になって村に戻り、ジェシーは僕の家で一緒に夕ご飯を食べた。

 その後兄ちゃんの家に送る際、「本当に素敵なところね。レックスやアリスのおじさんやおばさん達も私が王女だと知ってもレックス達みたいに全然態度を変えないんだから」

「まぁここは王都からも離れてるから、貴族や王族と言われてもパッとこないだけかもしれないけどね」

「そっちの方が私も嬉しいわ」と言ったところで兄ちゃんの家に着いた。

「それじゃあお休み、レックス」「お休みジェシー。明日は森の中を案内するから」「うん!」

「じゃあ頼むぞ、ベアーズ」なぜか今回ずっとジェシーに寄り添い続けているベアーズに声を掛けたが、無視して家の中に入って行った。

「また無視かよ」「フフッ。それじゃあ」と言ってジェシーも家に入った。そして僕も家に帰って眠った。


 翌日はそれぞれの家で朝ご飯を食べた後、僕とジェシーとベアーズで森の中を散策した。

 去年のお姉ちゃん達の時とは違って本当に純粋に森の中を散策しながら案内をした。

 そして去年アリスの誕生日の花を取りに来たお花畑に到着し、目の前の光景にジェシーも物凄く感動していた。

 そこで作ってもらったお昼ご飯を食べ、また村に戻りながら案内を続けた。

 その途中でケガをした小鹿を見つけたのだった。

 ケガは取り敢えずジェシーが回復魔法も使えると言うので回復魔法ーーヒールーーを掛けてやった。

 その後は僕の集中スキルや、ベアーズの力を特に借りて親を探しだした。

 暫くして親鹿を発見出来て親子揃って森の奥に消えて行った。

 その後も少しだけ森を散策して村へと帰った。
 
 村に帰ったところでジェシーと話し合い、明日1日それぞれ好きに過ごして明後日王都に向かう事にした。

 翌日僕は1日ずっと村で過ごし、村内を散策したり、各家や村人を眺めながらトロルの襲撃から守れた事に心の底から喜びつつ、将来の事を考えながら過ごしていた。

 そうしてあっという間に1日が過ぎてしまった。

 翌朝······。


「それじゃあアリス、僕達先に戻るね。父さん、母さん、また、ね」見送りに来たアリスや両親に挨拶をして僕とジェシー(とベアーズ)は村を出た。

 王都に向かいながら昨日1日行った事 (ジェシーはベアーズやベアーの案内で森を散策したとのこと)を話し、ジェシーは付いて来て本当に良かったと感動していたのだった······。
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