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第19章 最終学年

第116話 ギルドマスター

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 初めてクエストを受けて以降もランクに関係なく海人族からのクエストや、それが無ければAランクまたはBランクのクエストを順調にこなしていった。

 今日もクエストを探しにギルドへ来たら、たまたま受付前にいたジェシーを見掛けた。あの護衛の2人も一緒に······。

 声を掛けたかったが(流石にあの2人がいるとなるとちょっとなぁ······)と思っていたら、「あれ? ベアーズ?」ベアーズがいない事に気付き、周りを探した。

 すると、(······あー!?)なんとトコトコとジェシーに向かって歩いて行っていたのだ。

(あ、あいつぅ!)と思っていたらジェシーの後ろに着いたところでネールがベアーズに気付き、「ジェシー様、後ろに」「え? あっ、ベアーズ! どうしたの? ひとりで······」とベアーズを抱き上げたところで僕に気付いた。

「レックス!」「やぁ」「やっぱりいたのね」「うん。今ギルドに来たところで、ジェシー達を見掛けたら先にコイツがそっちに行っちゃって」「そうだったの。レックスもクエストを探しに?」「うん、そうだよ」と言ったところでベアーズを引き取った。

「私達は今手続きをしてきたところだから、お先にね」「うん、それじゃあ」と言葉を交わしたところでジェシー達はギルドを出て行った。

「ったくお前は、ヒヤヒヤさせやがって」とベアーズに言ってクエストボードを見に行き、たまたま海人族からのクエストを見掛けたのでそれを取り空いていたレナさんの窓口で手続きをしようとした。

 そうしたら、「あ、レックス君ちょっと待って」と言って他の人に後お願いと伝えた後、「実は君が来たらマスターから部屋へ案内するように言われてるの」「えっ?」「一緒に付いて来て」と言われて僕はレナさんの後に付いて行った。


 そして奥の階段を昇って2階の奥の部屋の前に着いたところで、「マスター、レックス君をお連れしました」「入れてくれ」と言われたのでレナさんがドアを開けた後「失礼します」と言って部屋の中に入った。

 部屋に入ったら奥のイスに男の人が座っていて、「やぁレックス君、どうぞそちらに」と手前のイスに座るよう促されたのでそちらに座った。

「初めまして。このギルドのマスター、アランだ」と挨拶されたので「初めまして。レックス・アーノルドです。こっちは僕が面倒見ているベアーズと言います」と自分とベアーズの紹介をした。

「実は今日君に来てもらったのは、君が何故海人族からのクエストを優先的に選んで引き受けているのか理由を聞きたくてね」挨拶した後すぐにこう質問された。

「えっ?」「養成学校の3年生が授業の代わりにクエストを実施するというのは毎年の事だし、各生徒が自分のクラスに見合ったクエストを選び、またこちら側も生徒のクラスに合わせてクエストを紹介したりする事もあるんだ」そうなんだと思った。

「ところが、君はAクラスにも関わらず海人族からのCランクやDランクのクエストを優先して選んでいる。ボードにはAランクやBランクのクエストがあるにも関わらずだ。現に今もランクの低い海人族からの依頼書を握っているだろ?」

 確かに今日もAランクやBランクのクエストがあったにも関わらず、僕は海人族からのDランククエストを選んだ。

「成績の事を考えればそちらを選ぶのが当然なのに君はそうはしていない。その理由を知りたくてね」と言われた。

 確かに、他の人から見れば僕の行動は不思議に思うかもしれないけれど、僕にはこれまでの出来事を踏まえた上で行動しているからハッキリと答えられた。

「それは、一番の理由は僕が海人族の街マリンタウンへ行くための移動の羽を持っているからです」「マリンタウンへの移動の羽を!?」

「はい。以前エルフの王国へ訪れた時に世界樹の葉を手に入れまして、それを以前からよく訪問していましたマリンタウンへ行くための移動の羽にしたためいつでもマリンタウンへ行けるようになりました。海人族からのクエストは、受託時もしくは報告時に直接依頼人の所へ行く必要があるモノばかりですので僕ならすぐそれが出来ますし、海人族の人にも警戒されずに話が出来るためスムーズにクエストを進行させられると思い、ランクに関わらず優先的に選んで受けようと決めたんです」と本心をアランさんに話した。 

 それを聞いたアランさんは「なるほど、そこまでしっかり考えた上で選んで受けていた訳だ」「はい」と答えた。


 すると、「······よく分かったよ。それならこちらもそのように対応させてもらおう」「えっ? 対応って?」

「これからはギルドに来たらまず受付の娘の所に行きなさい。海人族からのクエストが来ていたらランクの高いモノを優先して最低1つは確保しておくから、それを行うようにしたまえ。もし1つもなければその時は自分でクエストボードから選んでクエストを実施するようにすれば良いだろう。もちろん、万が一ボードにあるものを優先してやりたければそれも君の自由だからそうすれば良い」と仰った。

 アランさんからの突然の提案に驚いたが、それなら確実に海人族のクエストを行えるのだから僕にとっても有難いことなので「ありがとうございます!」と答えた。

 そして、「話は以上だよ。じゃあその手に持ったクエストを頑張りたまえ」「はい!」と答えて部屋を出た。

 レックスが部屋を出た後アランは「確かにお前の言った通り、彼に任せて正解だったようだな、ジルコニー」と独り言を呟いたのだった······。
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