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第19章 最終学年

第114話 運命の出会いと再会

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 いよいよ養成学校最後の年が始まる。準備を整え学校に向かい、ベアーズをスペースに放して教室に向かった。

 Aクラスの教室に着いたところで僕は早速驚いた。なんと、あの水晶玉に映されたヒト族側の男が教室にいたのだ。

 僕は一旦落ち着く意味も込めて教室の外に出て、席の一覧を見て彼がライアン・バーンズという名前だと確認した。

 そして改めて教室に入って席に着いた。流石に昇格してきたために周りには知っている顔がなく、1人で時間になるのを待っていた。

 そこへ、「よぉ、レックス!」僕と同じくAクラスに昇格してきた親友で水晶玉に新しく映し出された顔の正体であるジャック・スミスが挨拶してきた。

「やぁジャック」僕も挨拶して「今日から俺達もAクラスだな」「うん。そうだね」などと会話をして時間を過ごした。

 時間となって先生達が教室に入って来た。今年の先生は担任で教科担当の方がハインリヒという亜人族の人で、副担任で実技担当の方がマックスという竜族の人となった。そして毎年同様グラウンドへ移動した。

 グラウンドに着いて周りを見渡し、ロースやマールらBクラスの面々やアリスと去年同様に仲良く話しているマーシュらの姿を眺めていた。

 そして時間となって校長先生らの話のあと教室に戻った。

 それから先生方より色々な説明が行われたのだが、3年生の授業内容は1、2年生と大きく異なった。

 まず教科、実技共に今までのような授業は行われず、生徒は各自王都のギルドに赴いて冒険者らと同様にギルドに届いたクエストを受ける事となるのだ。

 クエストを受ける時にはギルドの受付に依頼書と共に学校IDを提出すれば受けられるようになっているとのこと。

 そして、Aクラスは週に1日教室に集まって1週間の各自のクエストの受諾完了状況と内容を発表し合い、ハインリヒ先生から寸評などをもらう中間発表会を行い、その発表会の中での内容を休暇前試験の教科試験の内容とすると伝えられた。

 また月の最後の数日間の間に、その月の受諾完了状況をマックス先生にも報告し、マックス先生からアドバイスを受けるようにして翌月以降行動し、その受諾完了内容やアドバイスに対しての対応などを鑑みて実技の成績を付けると言われた。

 そういった説明を受け、最初の中間発表会の日を決めて解散となった。

 解散後にジャックが「これから早速ギルドに行くか?」と聞いてきたので「いや、ベアーズの事もあるからのんびり行くよ」と答えて教室で別れた。

(流石に何があるか分からないから、極力ジャックとは行動を共にしないでおこう)と思いながらベアーズを迎えに行った。


 一方、ベアーズのいるスペースにレックスよりも先にレックスでもアリスでもない別の人物が近付いていた。

 ベアーズもその人物に気付いたが、警戒したり唸ったりせず素直にその人物の近くに寄って顔を撫でるのを受け入れていた。

 ちょうどその時レックスがスペースに近付き、アリス以外の誰かがいるのに気付いた。しかもその後ろ姿を見て水晶玉の3枚目に映し出された男女の女性の方の姿にそっくりだったので、更に驚いていた。


 スペース前にいたのが誰だか分からなかったので取り敢えず、「ベアーズ、お待たせ」とベアーズに声を掛けるようにして相手に振り向いてもらうように仕向けた。

 相手が振り向いて顔を見た時僕は(えっ?)と驚いた。何とそこにいたのは先日街でチンピラから助けた女性であるジェシーだったのだ。

「ジェ、ジェシー?」「あの時は本当にありがとうございました。レックスさん」とお礼を言われた。

「養成学校の生徒だったんだ」「はい。私の方はこの子を見掛けた時あなただと分かりましたので、学校で再会出来ると思ってあの時はあまり引き留めなかったのです」「そうだったんだ」

 そんなやり取りをした後に「改めまして、私は魔法科3年の、ジェシー・サンドリアと言います」と自己紹介をしてくれた。

(ジェシー・サンドリアか。ん? サンドリア?)とジェシーのフルネームを聞いて「ま、まさか······」と聞いたら「現国王サンドリア21世の第2王女、ジェシー・サンドリアです」と答えた。

(国王様の娘······てことは王女だったんだ)と思いながらもジェシーにとって予想外の反応を僕は示した。

「そっか。じゃあこれからもちょくちょく校内で会う事もあるかもね」と言いながらベアーズに近付き抱き上げた。

「えっ?」「それじゃあね、ジェシー」と言ってその場を離れようとした。

 するとジェシーが「あ、あの!」「ん、何?」「お、驚かないんですか? 私が王女だと知って?」「一瞬驚いたけど、だから?」「だからって······」

「学校の中では王女であろうと貴族の子供であろうと村の子供であろうと、ましてやエルフやドワーフや海人であろうが1人の生徒に違いはないでしょ?」と僕が答えたのを聞いてジェシーはとても驚いた顔をして暫く黙った。

 そして、「そ、そうですね。あなたの言う通りですね、レックスさん。私が勝手に自分が王女だから周りが誰でも変に気を遣ってくると気にしていただけでした」

 どうやら今までジェシーの近くにいた人達はそう接していたみたいだ。メリッサお姉ちゃんがそうされていたように······。

「そういう事だね。あと······」「はい?」「同学年なんだから呼び捨てでいいよ、ジェシー」

 僕がそう言ったのを聞いて少し恥ずかしがりながらも、「分かりました。レックス」と言ってきた。それを聞いて僕とベアーズは笑い顔で答え、ジェシーもそれにつられて笑顔を見せたのだった。


 とその時、「ジェシー様ぁー!」遠くからジェシーを呼ぶ声が聞こえたので、2人してそちらの方を見たら1人のエルフ族の生徒がこちらに走って来ていた。

 その顔を見て僕は驚いた。あの水晶玉に映された男達の最後のエルフ族の顔だったのだ。

 ジェシーの近くに来たその男に彼女は「ネール。校門で待っていて下さいと言ってあったでしょう?」と言った。

「しかし、あまりにも遅いゆえ何かあったのかもと思い、学校中をライアンと共に探していたのですよ」「それは申し訳ありませんでした」「いえ、それよりそこの男は?」僕を見てジェシーに尋ねた。

「彼があの時助けてくれたレックスです」「そうでしたか。それは本当に感謝致す。私はジェシー様の護衛をしておりますネールと申します」「レックスです」と一応自己紹介をした。

「さぁ、もう帰りましょう」「分かりました。じゃあレックス、ベアーズちゃん、またね」と言ってネールと共にジェシーはその場を離れた。


 残された僕はベアーズを抱いたまま直立し、ベアーズも僕の気持ちを理解してか全く動かずにいた。

 ······中央に映されたジャック・スミス。左右に映し出されたライアン・バーンズとネール。3枚目に映し出された映像に映っていた女性と思しきジェシー。1日で全員に遭遇し正体が分かろうとは······。
 
 そう思いながらも気を取り直して取り敢えずこのままギルドに向かう事にした。
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