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第17章 ダークエルフの復讐

第103話 開戦、間近

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 岩山連山の一角でダークエルフ達の監視を続けていたハウルは、ダークエルフ達がいっそう慌ただしく動き出した様子を見て「······いよいよ動き出すか」と呟いた。

 その時各部隊の隊長クラスの者達が一ヶ所に集まりだし、集まった者達が見据えている先にいると思しき者が「各隊、準備の状況は?」と尋ねた。

 尋ねられた側が「我が隊は明日にでも準備完了致します」「我が隊はもうまもなく完了です」「我が隊はもう少し掛かります」などと報告を行った。

 そしてその1人が「······以上です、ルーチェ様」と言った事にハウルは(ル、ルーチェじゃと!?)と驚いていた。

 そしてその人物を確認したところ、(間違いない。あれはルーチェじゃ!)と確認出来た。

(まさか、彼奴がダークエルフ達を率いておったとは······)ハウルがそう思っていたら、ルーチェが「よし、各隊明日までには準備を完了させろ! そして、2日後の早朝出発する!」「はっ!」その場にいた全員がルーチェの指示に応じて解散した。

「······2日後の早朝、か」と呟いた後、ハウルはその場を離れた。その直後ルーチェはまたハウルが離れたところをチラ見して口元に笑みを浮かべたのだった。

 その後ハウルはエルフの王国に赴きすぐフィンラルの下を訪れた。

「フィンラル!」「ハウル!? まさか奴らに動きが!」「ああ。奴らは2日後の早朝に動き出すようじゃ」「2日後の早朝······」「そうじゃ。それと、奴らを率いておるのはルーチェじゃった」と言われてフィンラルは立ち上がった。

「ル、ルーチェが!? 間違いないのか! ハウル」「間違いない。儂も直接確認したからのぉ」「そ、そうか」とフィンラルは力を落としながら椅子に座り直した。

「とにかく、儂は養成学校に赴きあちらの準備を手伝うから、エルフ側の準備は任せたぞ!」ハウルがそう言うと「分かった」とフィンラルも答え、ハウルはそのまま養成学校に飛んだのだった。


 数時間後、アッシュは校長先生に呼ばれて校長室に向かっていた。そして校長室前でドアをノックして中に入った。

 すると中にはジルコニー校長以外に、ハウルと彼らの前に2人の生徒がいた。取り敢えずアッシュは空いていた2人の間に立ち並んだ。

「揃ったな。実は少し前にハウルから情報が入り、奴等は2日後の早朝に動き出すようだ」「「「2日後」」」ジルコニー校長からの報告に全員が復唱した。

「そこで、君達3人を各科の部隊長に任命する」「「「っ!」」」ジルコニー校長からの発表に3人とも驚いた。

 そう告げた後にジルコニー校長はおもむろに目の前の机に地図を広げ、「決戦の地は王都北東部の平原部にし、そこで奴等を迎え撃つ。サポート科にはその手前の森林地帯に救護所を設けてもらい、開戦後は随時負傷者の手当を行ってもらう。君にはその際の全体的な人員割り当ての指示を行ってもらう」「わ、分かりました!」

「魔法科は敵側の竜族や魔王配下の魔物など怪物モンスター型の奴等を主に相手をしてもらい、君には事前にハウルが掴んだ情報を既に先生らに伝えてあるから、彼等と各人の配置割り当てを決めておき、開戦後は適宜配置転換の指示を先生らと連携して行ってもらう」「分かりました!」

「武力科はサポート科が設置した救護所の警護と残りのダークエルフ達や魔人族など人型の奴等を相手にしてもらい、君にも各人の配置割り当てと開戦後の配置転換の指示を先生らと連携して行ってもらう」「分かりました!」ジルコニー校長からの各科に対しての細かな指示を受け、3人は了承した。

「他の生徒らには今先生方から2日後に開戦するという情報が伝えられてて準備を行っているだろうから、君らも先生方と事前協議を行った後、各々の準備を速やかに行いたまえ」「「「はい!」」」「話は以上だ」「「「失礼します!」」」3人は校長室を出た。

 3人が出て行ったところでジルコニーは「いよいよだな、ハウル」とハウルに話し掛け、ハウルも「うむ。エルフ側も今各地の者達が集結しておるじゃろうが、それでも戦力差は圧倒的じゃろう」

「こちらもギルドの冒険者らが協力してくれる事になっているが、数はしれたところだろうからな」「やはり勝負のカギは、がいつ頃駆け付けて来てくれるかじゃな」「あぁ······」などと話をした。

 ジルコニー校長の言った通り、兄ちゃんらが校長室に呼ばれている間に先生達から全員へ2日後の早朝に開戦となる事が伝えられ各自準備をするよう指示があった。

 そして救護所設置などの準備をする必要があるため、サポート科は一足早く森に向けて出発する事となり、夕ご飯を一緒に食べながら僕らはアリスらからその事を伝えられた。


「そっか。アリス達は先に出発するんだ」「うん」「でも、レックス君達が後から来た時には森で1泊する事になるから、その時にまた会えるわよ」「確かにそうだな」「そうだね」などと会話をして夕ご飯を食べた後、僕とアリスは兄ちゃんやお姉ちゃんと食堂前で別れた。

 別れる直前にお姉ちゃんは「じゃあまたね、レックス君」と言って僕を抱き締めてくれた。

 食堂前で兄ちゃんらと別れアリスと部屋に戻りながら「私もこんな大きな戦いに参加する事になるなんて」「確かにそうだよね。村がトロルに襲われた時以来じゃない?」「うん。だからこそ緊張してるんだよね」「でもお姉ちゃんや他の皆もいるんだから、大丈夫だよきっと」「そうよね」と会話をしていたらアリスの部屋の前に着いた。

「じゃあおやすみ」「おやすみ」と部屋を離れようとしたら、「レックス!」アリスが僕を呼んだ。

「ん?」「······死なないでね」「······もちろんだよ!」と力強く答えた。


 一方、僕らと別れた後兄ちゃん達もお姉ちゃんの部屋の前まで来ていた。

「じゃあおやすみ、メリッサ」「おやすみ、アッシュ」とアッシュが部屋の前を離れようとした時、メリッサがアッシュの方に走り出して「アッシュ!」と呼んだ。

 メリッサに呼ばれたアッシュが振り向いた直後、メリッサはアッシュの口にキスをしたのだった。アッシュもそれほど驚く事もなくメリッサの行為を受け止め、メリッサを抱き締めたのだった······。


 翌朝、僕や兄ちゃんを始めサポート科に親しい者がいる者達に見送られ、サポート科の生徒と引率の先生らは森に出発したのだった。

 その後昼過ぎには僕達武力科と魔法科も森に向けて出発した······。
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