落ちこぼれ一兵卒が転生してから大活躍

きこうダきこう

文字の大きさ
上 下
97 / 224
第17章 ダークエルフの復讐

第97話 大戦の予兆

しおりを挟む
 ここは亜人族領土内の岩山連山の一角。1人のダークエルフと思しき人物が佇んでいた。そこへ別のダークエルフがその人物へ近付いた。

「ただいま戻りました、ルーチェ様」「それで、魔王様は何と?」「ハッ、お前の好きに使うが良いと仰って頂きました」「そうか」と言ってルーチェと呼ばれた男は眼下に集まりし同胞や魔物、その他の種族を見下ろし、「ようやくこの時が来たか。待っていろ、エルフ共。そして、ヒト族共!」と叫んだ。

 時を同じくしてハウル、フィンラル、ヨートスを始めとしたエルフの各里の長らは邪悪な気配を感じ取っていた······。


 数日後、養成学校の冬季休暇が終わり2年生最後の期間が始まった。

 教科の授業はこれまで学習して来なかった海人族や竜族、魔人族など少数種族についての内容となった。特に海人族の内容は多くの生徒が初めて聞く事が多かったのか全員が興味を持ってしっかりと聞いていた。

 中でもハウル様から聞いていた海人族と他種族との歴史についての内容は全員が暗い気分となったのだ。しかし、最近になってその海人族とヒト族との関係がなぜか良好な方向に進んでいるようだと説明がなされ、事情を知っていた僕とマールはハッと驚き、そしてマールは僕の方を見たのだった。


 実技の授業は2人や4人でのクエスト、模擬クエストの実施やタイマンでの特訓が行われ、今日はタイマンでの特訓で現在僕はジャックとの対戦中だった。一瞬の隙をついてジャックに尻もちをつかせ、勝負あった。

「あーくそっ! また負けた!」「残念だったね、ジャック」と言ってジャックに手を差し出した。その手をジャックは握って体を起こし、「次はこうはいかないぜ」と言った。


 授業が終わり特に用事も無かったので、ベアーズを連れて頼み事を見に行こうと歩いていたら、「レックス!」聞き慣れた声で呼び止められたので振り返るとハウル様がいた。なぜか真剣な顔つきをして······。

「どうしたんですか?」「儂と一緒に来てくれ」「えっ······は、はい」突然そう言われ、取り敢えず同意して付いて行く事にした。

 そのままハウル様は歩いて校舎内の校長室前に向かい、ドアをノックした後中に入った。

 入ってきた人物を確認したところでジルコニー校長が「ハウル! それにレックス君」と言い、すぐにハウル様が「ジルコニー、儂らと一緒に来てもらうぞ!」と伝え、その表情を見てただならぬ事態を察知したジルコニー校長も「分かった」と答えた。そこでようやくハウル様は肩に手を置くよう促してある場所へ飛んだ。


 行き着いた先は何とあのエルフの王国前の道だった。流石に場所が場所だけにジルコニー校長も一瞬驚いていたが、すぐに平静さを取り戻し歩き出していたハウル様に付いて行った。その後僕も後に続いた······。

 そのままハウル様は王国入口の門番と城門の守衛にフィンラルに会わせてもらうと返答も聞かずに素通り気味に通過し、王の間の入口も開けた。

 突然何者かが入って来た事に中の者は全員驚いていたが、その人物らが分かったところで、「ハ、ハウル! ジルコニー! それにレックス君?」フィンラル様が入ってきた僕達の名前を仰った。

 そんな驚いているフィンラル様に対してハウル様は「フィンラルよ、お主も先日邪悪な気配を感じ取ったじゃろう」と言い、思い当たる節があったからなのかフィンラル様も驚きながら「まさか、お前もか! ハウル」と言うとハウル様もそうだと言わんばかりに頷いた。

 そして「あれは十中八九間違いなく、"ダークエルフ"の気配じゃ!」ハウル様の仰った事に、その場にいた全員が驚いた。

 何人かが「ダ、ダークエルフ!?」と驚きの声を上げ、フィンラル様も「やはりそうだったか」と仰った。


 そのやり取りを聞いていた僕もジルコニー校長もただ驚いていただけだったが、ジルコニー校長が「まさか、あの時逃げて行った奴らの生き残りか仲間か?」とハウル様に聞いた。

 あの時とは、僕が1年の時に発生したダークエルフによるエルフの里や村の襲撃の事だろう。

「そうじゃ。あいつらは謂わば先遣隊のような存在で、その本隊が今回動き出したのじゃ!」とハウル様の仰った事に更に全員が驚いた。そしてもっと驚く事が発表された。

「しかも奴らは自分達だけでなく他の種族の者や、さらにはあのの配下と思しき魔物達まで連れ添っておるのじゃ!」「「「なっ!?」」」流石に魔王と聞いて全員大きく驚いた。

「そして、奴らの目的はエルフの者達と恐らく······」そこでハウル様は僕らの方を見て「ヒト族、とりわけお主ら養成学校の者への復讐じゃ!」

「っ!」僕達への復讐だと聞いて流石に僕は驚いたが、ジルコニー校長は「やはり、そうであろうな」と納得した様子だった。


「それでハウル。奴らはいつ頃動き出しそうなんだ?」フィンラル様が聞いたら、「まだ数日猶予はあると思われるが、遅くとも1週間以内には動き出すじゃろう」「「1週間······」」フィンラル様とジルコニー校長が同時にそう呟いた。

「とにかくそれまでにフィンラル、お主は各里の長にこの事を伝えて各地で戦闘の準備をさせておくのじゃ」「分かった」

 そして僕らの方を見て「そしてジルコニー、お主は帰ってすぐに会議を開き、取り敢えずは養成学校内だけで戦闘準備を進めるのじゃ」「分かった」

「恐らくじゃが······」と言ってハウル様はひと呼吸おき「今回はエルフ族と養成学校、下手をすればサンドリア王国と奴らとの、総力戦となるじゃろう!」

 ハウル様の言葉に、改めてその場にいた者全員が緊張感を抱いた······。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

野生子グマの人生変転記

きこうダきこう
ファンタジー
「それじゃあ今日からコイツの事を······子グマだから"ベアーズ"って呼ぶ事にしよう、アッシュ兄ちゃん」「ハハッ。そうだな、レックス」  ある森に父ちゃんと暮らしていたボクは、ヒトが仕掛けていたワナによってケガをして動けなくなってしまった。そうしてうずくまっていたボクの所に来てケガを治してくれたのもヒトの子供達だった。そしてケガが治って自由にまた動き回れるようになった事でボクはケガを治してくれたその子供達、とりわけ皆から"レックス"って呼ばれている子を気に入った。  それからレックスが森に来る度にボクはレックスの傍に寄り、ついには彼が住んでいる"ムラ"の中にまで付いて行ったりした。そうした事もあってレックス達はボクや父ちゃんに名前を付けてくれたのだ。  けれども、ある時レックスは森から遠く離れた所にある"ガッコウ"って所に行くため森を離れてしまったのだった。  レックスに会えなくなって寂しがっていたんだけど、そのレックスがまた森に帰ってきた! と思ったらそのガッコウの用事でボクの力を一時的に借りに来ただけだった。  その用事が終わったらまたレックスと離ればなれに······そんなのイヤだ! そう思ったとたんボクはレックスの背中にしがみつき、絶対に離れまいとしたのだった。  そのボクの思いが通じて······レックスが行っているガッコウでレックス達と一緒に過ごせれるようになったのだった······。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

処理中です...