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第16章 閑話

第96話 クリスマスパーティー

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「よ、良かったぁー」先日行われた休暇前試験の結果が渡され、無事"合格"だった。

(教科は後半アリスの誕生日の事とかであんまりしっかり聞いてなかったからどうなるかと思ってたけど、取り敢えずはこれで皆と······)そう、冬季休暇に入ってすぐ今年は孤児院の皆とクリスマスパーティーを一緒に開く約束をしていたのだった。

 ただし、不合格や降格となって補習を受ける事にならなければ、ね。

 何とかそれを回避出来たため、パーティー当日僕達4人とベアーズで孤児院を訪れた。

 そして男子は会場作りなどを、女子は料理作りなどを担当して夕方パーティーを開始した。

「メリークリスマース!」パンッ! パンッ! クリスマスの号令とクラッカーの音を皮切りにパーティーは始まった。

 皆で盛り上がり、大騒ぎしながら料理を食べたりして本当に楽しいひと時を過ごした。最後に皆でプレゼントの交換会を行いパーティーは終わった。


「楽しかったね、クリスマスパーティー」「あぁ、そうだったな」「皆本当に楽しそうに過ごしてたしね」「ええ、本当に」僕達は帰りながらそれぞれ感想を言い合っていた。

「ところで兄ちゃん。クリスマスケーキを見た途端変な顔になってたけど、どうかしたの?」「な、なんでもねぇよ」「フフフッ」「?」

 アッシュがケーキの材料を探しに行った時の事を思い出して変な顔になった事をレックスに問われ、アッシュはバツが悪くなったのだった。

「けど去年はハウル様の家で、今年は孤児院で何気に集まって過ごしたりしてるよね? 僕達」「そういやぁ去年はハウル様に家の前の雪かきをやらされたんだっけなぁ」「そういえばそうだったわね。その間に私とハウル様で料理の準備をして」「そうそう」

「へぇ、そんな事があったんだ」去年のハウル様の家へ雪かきをやりに訪れた時の話で盛り上がっていると、「ねぇ、それじゃあ今年は······」お姉ちゃんからとんでもない提案がなされた。

 毎年1年交代で王都の4大貴族が、この時期他の貴族やら王家の人を家に招待してパーティーを開いているとの事で、今年はお姉ちゃん家のローテン家の番だった。

 そこで、大人とは別に子供達だけで集まってパーティーを開催しようと言い出したのだった。

 もし出来るならそれも良いかもと僕達は賛同し、お姉ちゃんが家の人に相談したら······許可されたのだった。


 そして当日。ローテン家のパーティー用大広間で大人達のパーティーが開催されているのと同時刻、別の場所では僕達子供達のパーティーも開催された。

 僕達や孤児院の子供達と神父様にマザーはもちろん、僕のクラスのロースにジャックやマールとアリスのクラスのマーシュにメリー、そして兄ちゃんやお姉ちゃんのクラスメイトやピエールなどの知人らを招待して大盛り上がりとなったのだ。

 そんなパーティーの途中、僕は会場を抜けて外のテラス部分に移動した。そして会場を見ながら色々考え出したりしたのだった。

 そこへ、「なーにまた1人で物思いにふけってるんだよ、レックス」兄ちゃんが近付いて来た。

 そして隣に並んだところで、「······ねぇ、兄ちゃん」「ん? 何だ?」「もしトロルとの戦いの後、村に残って養成学校に行かなかったらどうなってたんだろう?」「どうって······」

「それだけじゃなくって、兄ちゃんがお姉ちゃんと出会ってなかったら。運命の洞窟の水晶玉が見せた通りに兄ちゃんやアリスがそれぞれ死んじゃってたら。ベアーズが学校で過ごせれるようになってなかったら。僕が孤児院へ寄付をしようと思わなかったら。それに、ピエールやマーシュとここまで仲を深めてなかったら、正直今の光景は無かったはずなんだよね?」と言ってまた会場に目をやった。 

 中では孤児院の子達が皆で楽しそうにし、マーシュがアリスと楽しく談笑していた。

「確かに、そうかもな」「正直僕はこの人生では、あのトロルの襲撃を何としてでも阻止して、その上で神の使いと約束した通り魔王軍との決戦の時に殺されないように注意する事だけしか考えてこなかった。養成学校への入学も通過点としか思ってなかったからね。けど、今はそれだけじゃあなくなってきたんだよねぇ」「というと?」

 兄ちゃんに聞かれて僕は天を見上げて「やっぱり、今の人生をできるだけ楽しみたいって思うようになっちゃったんだ」と言った。

 そんな僕を見て兄ちゃんは笑みを浮かべて「そっか」と言い、僕も「うん」と答えた。

 その時、「それで良いんじゃないかしら?」と遠くから声が聞こえたのでそちらを見たらお姉ちゃんもテラスに出て来ていた。

「お姉ちゃん」「きっと今までレックス君がしてきた事は、新しい人生を送るようになった事で新たに神様が運命付けた事だったり、もしくはレックス君が自発的に行ってそれを神様がお許しになった事かもしれないけれど、少なくとも間違った行動ではなかったから何も問題なく過ごせてるんだから」

「そうだね」「うん。だから二度目の人生だからって気にする事なく、その運命の決戦の時まではレックス君の好きなように過ごせば良いのよ」と言って僕の肩に手を置いた。

「メリッサの言う通りだな」「うん。そうだね」と言ったところで、「さ、もうそろそろ中に戻りましょ」お姉ちゃんに促されて僕達は中に戻った。

(確かに、その時まではもう少し自由に過ごして行こう)と心に思いながら······。


 しかし、この後僕らの身にかつて経験した事がないほどの大きな戦いと、僕自身の未来を大きく左右しかねない選択を迫られる出来事が発生する事に、まだ誰も気付いてはいないのだった······。
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