上 下
72 / 224
第13章 依頼

第72話 ギルドクエスト~クエスト完了~

しおりを挟む
 マールのーー洞窟にブラックスコーピオン達の家族がいたーーと言った事に僕達は驚いた。

「ほ、本当なの!? マール!」僕が聞いたら、「うん。ベアーズに付いて洞窟に行ったら、中にも大人のブラックスコーピオンと何体か子供のブラックスコーピオンがいたの」

 それを聞いてハウル様は守備隊長さんと共に洞窟へ向かい、僕達は兄ちゃん達にもこの事を伝えるため兄ちゃん達が戦っている方へ向かった······。


 兄ちゃん達が戦っている所へ着いた時には、兄ちゃんが最後の1体に止めを刺そうとしていた。

 すぐに僕が「兄ちゃん、待ったぁーー!」と叫んだ。その声に反応して兄ちゃんが刺すのを直前で止めた。

 そして僕達が近くに着いたところで「いきなり何言い出すんだレックス! そっちはどうしたんだ!!」と聞いてきたので、「じ、実は······」洞窟の事を伝えた。

 残っていたブラックスコーピオンにもベアーズが説明をした。

「ま、まさか······」「本当です。私も確認しました」「今ハウル様と守備隊長さんも洞窟に入って確認しているから」と伝えたところで洞窟前に全員で向かった。


 洞窟前に着いたところで既に2人も洞窟から出て来ていた。

「ハウル様!」「おぉ、アッシュ。マール殿の言った通りじゃった。中に母親と子供のブラックスコーピオンがおったわ」

「ではこのブラックスコーピオン達は?」「うむ。家族や仲間を守ろうとしただけなのかもしれんのぉ」とハウル様が仰った。その事が確実となった事で僕達は驚愕した。

「でも、何でこの洞窟にブラックスコーピオンが何体も出没したんですか?」と僕が聞いたら、「洞窟の奥に水路がありまして、その水路が海底洞窟内の水溜まりに繋がっていたんです。恐らくその水路を使って移住してきたのかと······」守備隊長さんがそう説明してくれた。

「じゃあ、俺達がした事は?」「······無駄な戦いじゃったと言う事じゃな。結果的には」

 ハウル様の言葉に僕達はもちろん、特に兄ちゃんが一番ショックを受けていた。全権を任されたのだから当然か。


(だけど······)「それで守備隊長殿。この一件どう対応なさるつもり何じゃ?」とハウル様が守備隊長さんに尋ねた。

「事情が分かりましたので、残ったブラックスコーピオン達だけとでも共生する方法を考えさせてもらおうと考えています」

「つまり、ブラックスコーピオン達と共生する意思は海人族側にはあるんじゃな?」「もちろんです。今回もすぐ近くに大量発生したので心配したまでですので」「そうか」

 するとハウル様が「なら儂らも色々と動くとしなければな、アッシュ?」「えっ?」「動くって?」

 僕が尋ねたら、「守備隊長殿、国王に事情を説明しての錬成準備を頼んで下され。今回は少々多くなってしまうが」「あれ? って、まさか!?」

「マール殿、街にいるメリッサ殿とアリス殿、お医者殿に事情を説明してブラックスコーピオン達の怪我の治療を出来る物を持って砂浜に来てもらって下され」「わ、分かりました」

「後の者は海底洞窟へあれを取りに行くぞ」「あれって、まさか!? ハウル様」「そういうことじゃ」ハウル様が各自に指示を出して僕達は海底洞窟へ向かった······。


 その道中で兄ちゃん達にハウル様が行おうとしている事ーー命の石でブラックスコーピオン達を生き返らせるつもりーーを説明した。流石にそれを聞いて全員が驚いていた。

 そして海底洞窟に着いて中に入り、途中シーハーフマンに何体か遭遇したが皆で軽くあしらって奥へ進み、命の石の原石があるフロアに辿り着いた。

 今回はビッグクラブの姿は見えなかったので、必要な数を取って洞窟を出た。

 そしてそのまま僕と兄ちゃん、ハウル様がお城へ向かい、国王様に命の石を錬成してもらって砂浜へ戻った。


 砂浜では既にお医者さんやお姉ちゃん達が残ったブラックスコーピオン達の治療をしていた。

 そして僕達が殺してしまったブラックスコーピオン達は、僕と兄ちゃんが手分けして命の石で生き返らせた。

 全員を生き返らせたところでちょうど治療も終わったようだ。そしてベアーズに頼んでブラックスコーピオン達に事情を話してもらった。

 ベアーズの話を聞いてブラックスコーピオン達も理解したみたいで、全員が大人しくなった。

 その後はハウル様が仲介に入って話し合いが行われ、砂浜の一部をブラックスコーピオン達のエリアにして海人族は立ち入らない事としたのだった······。

 こうして今回のギルドクエストは取り敢えずクエスト完了となった。


 この後僕達は全員お城でおもてなしを受け、守備隊長さんからクエスト完了の証をもらって学校へ戻った。

 そして兄ちゃんと僕は校長室へ行ってジルコニー校長に今回の報告をした。

「事情は分かった。その辺りの事も私からギルドに報告しておこう。ご苦労だったな、2人共」「はい」と返事した兄ちゃんの声は暗かった。

「今回は君にとって貴重な経験だったな、アッシュ君」「はい。ただ闇雲に魔物を倒せば良いだけでは無いという事を痛感致しました」

「そうだな。それは我々やギルドはもちろん、他の種族ら全員に言える事かも知れないな。それに······」「それに?」

「我々は今回それを動物のクマであるベアーズ君に教えられた事も忘れてはならないな」

「「!!」」確かに、今回ベアーズが洞窟の存在に気付いたからブラックスコーピオン達の家族の存在も気付けたんだ。

「故に」「故に?」そこでジルコニー校長が後ろを向き「あいつの事も色々と考え直してもいい頃かもな」

「えっ、あっ!」僕もジルコニー校長が見た方を見たら、学校に帰ってすぐスペースに戻したはずのベアーズが窓の外からこちらを覗いていたのだった。

「べ、ベアーズ!?」「君は知らなかっただろうが、あいつああして頻繁にスペースを抜け出して学校の中を走り回っとるんだからな」「えー!?」それは本当に知らなかった。

「ま、それも今日までで良いかもな」「え?」ジルコニー校長のその発言がどういう意味なのかその時には理解出来なかった。が······。


 翌日、ベアーズのスペースが一部改良され、ベアーズが自由に出入り出来る部分が設けられたのだった······。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

グレイス・サガ ~ルーフェイア/戦場で育った少女の、夢と学園と運命の物語~

こっこ
ファンタジー
◇街角で、その少女は泣いていた……。出会った少年は、夢への入り口か。◇ 戦いの中で育った少女、ルーフェイア。彼女は用があって立ち寄った町で、少年イマドと出会う。 そしてルーフェイアはイマドに連れられ、シエラ学園へ。ついに念願の学園生活が始まる。 ◇◇第16回ファンタジー大賞、応募中です。応援していただけたら嬉しいです ◇◇一人称(たまに三人称)ですが、語り手が変わります。  誰の視点かは「◇(名前)」という形で書かれていますので、参考にしてください ◇◇コンテスト期間中(9月末まで)は、このペースで更新していると思います  しおり機能で、読んだ場所までジャンプするのを推奨です…

ループn回目の妹は兄に成りすまし、貴族だらけの学園へ通うことになりました

gari
ファンタジー
────すべては未来を変えるため。  転生者である平民のルミエラは、一家離散→巻き戻りを繰り返していた。  心が折れかけのn回目の今回、新たな展開を迎える。それは、双子の兄ルミエールに成りすまして学園に通うことだった。  開き直って、これまでと違い学園生活を楽しもうと学園の研究会『奉仕活動研究会』への入会を決めたルミエラだが、この件がきっかけで次々と貴族たちの面倒ごとに巻き込まれていくことになる。  子爵家令嬢の友人との再会。初めて出会う、苦労人な侯爵家子息や気さくな伯爵家子息との交流。間接的に一家離散エンドに絡む第二王子殿下からの寵愛?など。  次々と襲いかかるフラグをなぎ倒し、平穏とはかけ離れた三か月間の学園生活を無事に乗り切り、今度こそバッドエンドを回避できるのか。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

処理中です...