上 下
34 / 224
第6章 ダークエルフ

第34話 VSダークエルフ

しおりを挟む
 僕らがエルフの里へ救援に行くため集合場所の学校入り口に着いた時には引率の先生と同行する生徒の何人かが既に集まっており、全員が集まったところで行き先が説明され2つの馬車に分かれて向かう事となった。やはり行き先はヨートス様の里だった······。

 学校を出発して数日後、目的の里へ辿り着いた。里の中ではやはり襲撃に備えての準備で慌ただしい状態であった。

 そうした中でヨートス様が僕らの存在に気付き寄って来て先生と挨拶を交わして色々話し合いをした後、先生が僕らに対してそれぞれ指示を出した。各自がそれぞれ動き出したが僕にだけ指示がなかった。

 するとヨートス様が寄って来て「レックス君、君も来てくれたんだ」「ハイ」「早速だが、君にはすぐハウルを呼んで来て欲しいんだ。また砂漠の入り口まではこちらで運ばせてもらうから、そこからは君1人ですぐに行けるだろう?」と仰られたので、あっそれでと思いながらも「分かりました」と答えた。

 先生も既に了承済みのようでそのままあの白く光輝いている大きな鳥に乗って砂漠の入り口近くまで運んでもらい、そのまま急いでスカイマウンテンへ向かった。


 スカイマウンテンについて坂道側から頂上へ向かってハウル様の家に着き、「ハウル様!」と呼んだ。   

 すぐにハウル様も出てきて、「レックス、今度はどうしたんじゃ?」と聞いてきたので今の状況を説明した。

「そうか、またダークエルフ達が······」(また?)と思いながらも「それでヨートス様がハウル様を連れて来てくれと言われまして」と伝えた。

「分かった」そう言って一旦家の中に入って再び外に出てきたところで、「時にレックス、今回の騒動の事も水晶玉が何か見せてきたのか?」と聞いてきたので「えっ?」と反応した。

「やはりか。もう今更どうする事も出来んじゃろうから、何が起こるのか話すんじゃ」と言われたので兄ちゃんに起こる事とそれを阻止する方法を話した。

「なるほど、あのアッシュにそういう事が」「はい、だからあの後山を降りてすぐ近くの村でが売られていたので購入し、学校でもうまく投げられるよう練習してきたんです」とブーメランを見せた。

「分かった。お主は取り敢えずアッシュの動向を見張っておくのじゃ」「分かりました」と話し合って僕らは里に飛んだ。

 里に着いたら偶然すぐ近くにヨートス様がいて、「来たか、ハウル」と声を掛けてきた。

「状況はレックスから聞いておる」「また里の周りに"あれ"を頼む」「分かった」と言ってハウル様は里の外へ向かった。

 その後僕はヨートス様に連れて行かれて兄ちゃん達が作業をしている場所に案内されてそこの作業を手伝った。

 しばらくしてハウル様が戻ってきて僕らの各自の作業も終わったところで、今後の事と戦闘が始まった際の各自の役割などを全員に伝えて取り敢えず解散となった。


 そして、翌日の朝を迎える直前に突然ハウル様が目を覚ましてそのままヨートス様達が待機している辺りに向かい、その辺りに着いたところで大きな声で「ヨートス!!」と叫んだ。

 その声にヨートス様をはじめ周りの人達も飛び起きた。そして「奴らが近くまで来おったぞ!!」と続けて叫んで全員に緊張感が走った。すぐに里全体にも警報でダークエルフが近くに来た事が知らされた。
 
 どうやらハウル様が前日の昼間に里の周りに警戒感知のようなものを設置なさっていたようで、ダークエルフがそれに引っかかったようだ。

 警報を聞いて僕らも急いで起き準備をしてそれぞれ事前に言われた役割の配置についた。

 まず3年のエルフ族生徒は里の戦士らとともに前線で戦い、3年の他部族生徒と2年生の魔法科生徒は森の各入り口付近で防衛線を張る。

 そして2年生の武力科生徒と僕は里の住民などの警護を担当し、もし万が一近くまで侵入してきたときの討伐を担当する事となった。

 それぞれ準備や配置に付いたところで最前線にいたエルフの戦士らが奴らーーダークエルフーーを確認した。そして、そのまま一気に戦闘状態へ突入したのであった。

 初めは里の正面での衝突だけであったが、ダークエルフらは徐々に左右へ展開して里の側面や背後に回って侵入しようとしたが、3年の他部族生徒と2年生の魔法科生徒やエルフの戦士らによって阻まれた。

 里の中にいる僕達には戦闘が始まったことは分かったがまだ危機的状況は感じられないでいた。

「始まったようじゃな」僕らの近くで待機しているハウル様はそう言葉をこぼし、近くのエルフ戦士も「そのようですね」と返答した。

 当然兄ちゃんを始めとした2年生の武力科生徒と僕もそれぞれ散らばって住民の警護に当たっていた。僕も周りを警戒しつつも兄ちゃんの事も気にしながら警護を行っていた。


 しばらくはそのままの状態が続いたが、突然ハウル様が神経を尖らせた。

「ハウル殿?」「しっ!」近くの戦士が声を掛けようとしたらハウル様が黙らせて周りを伺いだした。

 そしてある茂みの辺りを直視し、戦士にその辺りヘ矢を狙うように指示した。その直後その戦士も茂みがピクリと動いたのを確認したので矢を放った。

 矢が茂みに吸い込まれた直後誰かの叫び声が聞こえ、戦士が確認しに行ったらダークエルフが倒れていた。

 それを見て戦士がハウル様に合図を送って「全員気を付けよ! 奴らの一部がこの辺りまで侵入しだしたようじゃ!」と伝え、全員に緊張感が走った。

 僕も(来たか。それなら······)全神経を研ぎ澄まし、スキル”集中”を発動させた。

 そうして僕らの周りから少し離れた辺りに"何か"の気配をいくつか感じられた。

(これらは······おそらくダークエルフ達の気配だろう)そう判断してすぐハウル様に知らせようと考えハウル様の所へ向かった。

「ハウル様」集中状態を保ったままハウル様に語りかけ、「どうした? レックス」「周りに何人か既に潜んでいるみたいです」と伝えた。

「何じゃと!? どこじゃ?」と聞いてきたので気配を感じ取った大体の場所を全て教えた。

「分かった」そう言ってエルフの戦士達に場所を伝え対処させようとしたら、突然奴らが強襲してきた。

 流石にこうなっては戦士だけでなく兄ちゃん達や僕も応戦せざるを得なくなった。奴らは接近戦を仕掛けてくる者がいれば弓矢の遠距離攻撃をしてくる者もいた。僕らは遠距離攻撃をしてくる者にはエルフの人が、接近戦を仕掛けてくる者には生徒らが応戦した。

 戦いながら僕は兄ちゃんの事も気にしていたら、嫌な感じがしたので兄ちゃんの方を見ると、誰も気付いていない離れた辺りからダークエルフの1人が矢を兄ちゃんらのいる方へ向けて放とうとしていた。僕はとっさに今のこの状況があの映像の場面だと判断した。

 その直後、僕はブーメランを手にしてタイミングを図った。そして、ダークエルフが矢を放った直後僕はブーメランを兄ちゃんの方へ投げ、すかさず持っていた短剣の1本をダークエルフの方へ放った。

 そして矢が兄ちゃんの方へ向かっていると判断した誰かが「危ないっ!」と叫んで兄ちゃんもその叫び声と飛んでくる矢に気付いたがどうする事も出来ないぐらいまで矢が接近していた。

 しかし、カーンッ!「「っ!?」」矢がブーメランに阻まれ多くの者が驚いた直後、グサッ!「ギャア!!」矢を放ったと思われるダークエルフの首に短剣が刺さり、叫び声を上げてそのまま倒れた。

 あまりの猛スピードで事態が進展した事でその場の全員の動きが止まっていたが、真っ先にハウル様が動きだして近くのダークエルフ達の動きを止め、その隙に戦士や生徒らによって近くにいた奴らは全員倒すことが出来た。

 その後僕が改めて集中スキルで気配を探ったが近くにはいなくなったようだった。


 そんな僕らの近くでの騒動から少しして、ヨートス様ら最前線で戦っていた集団と周りを防衛していた集団がそれぞれ僕らのいた辺りに戻ってきて周辺の状況を見て驚いていた。

 ハウル様から何人かがここまで入り込んできおったぞと愚痴を言われ流石に申し訳なさそうな顔をしていた。

「それで、そっちはどうなったんじゃ?」「あぁ、数人は逃してしまったが奴らの大多数と隊長クラスの奴は倒すことは出来た」

「ということは?」「ああ、防衛は成功だ!」ヨートス様の宣言に全員が歓喜したのだった。
しおりを挟む
1 / 3

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

コスモス・リバイブ・オンライン

SF / 連載中 24h.ポイント:809pt お気に入り:2,346

獣たちの迷宮

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:11

記憶を見過ぎるだけの少年が世界最強の件について

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

処理中です...