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第5章 学校生活
第29話 閑話ー膝枕ー
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ある日の午後、今日はたまたま朝から実技の授業ばかりで流石にバテた。
アリスは午後からは王都の郊外へ薬草類の研究研修と言ってたので暫くは1人(兄ちゃんは恐らくメリッサさんと一緒にいるだろうから)なので、どっかでグッタリさせてもらおうと思いながら校内を彷徨っていたら、ちょうど陽当たりも良さそうで風もそこそこ吹いている場所にベンチがあったので、そこに座ってグッタリとさせてもらってすぐに意識がなくなった。
どれぐらい経ったか分からないが、再び意識を戻した時には頭が何か柔らかいモノの上に乗っている事が理解出来た。
「あっ、起きた? レックス君」そう言われて声の方に目を向けたらメリッサさんが笑顔で僕の顔を覗き込んでいた。
「メ、メリッサさん!?」と言って慌てて体を起こそうとしたら「良いのよ、そのままで」と僕の頭に優しく手を乗せて再び体を横にさせてくれた。
「で、でも······」「アッシュも了承済みだから大丈夫よ」に、兄ちゃんも了承済みって、という事はベンチでグッタリしていた姿も見られてたのか。ハハハッ。
「アッシュからレックス君が大きな使命を負っていて、それに向けて必死に頑張っているから疲れが出るのも仕方がないだろうって聞いてるから」「えっ?」に、兄ちゃん喋っちゃったの?「あっ、詳しい内容は聞いてないから大丈夫よ」と言ってくれたので安堵した。
その様子を見てより穏やかな笑顔になってメリッサさんが「私もレックス君と似たような理由でここに入学したようなものだから、何となく気持ちが分かるの」「似たような理由?」
そう僕が聞き返したら、「うん。私の家のローテン家は王都にある貴族の家々の中で4大貴族と言われている家の1つに含まれているって、前に話したわよね?」「うん」
確かに以前兄ちゃんからそんな事を教えてもらった事があり、玉の輿? と冗談交じりで冷やかした事があった。
「そうした事もあって特に祖父の代までは子供に対して男女関係なく厳しく教育していて、正直お父様はそれがイヤでイヤでしょうがなかった事もあって、自分が親になった時はそれまでの家の方針を改めるようにしようと決意したの」そうだったんだ。
「それでお父様もたまたま穏やかで優しい方だったお母様と結婚した事もあって、1人兄がいるんだけど、その兄にも私にも優しく接して育ててくれたの。だけど、やっぱり4大貴族の1家という事で特に兄にはお城勤めをしてもらいたいと思って教育は熱心に受けさせるようにしたの。そして、私にも少なからずの教養を身に付けさせるために養成学校へ通うようにと仰って、いずれ騎士団に入隊しそうな方々の中で出世しそうな方を見つけ、その方と······結ばれれるように接しなさいって言ってきたの」
「えぇっ!?」流石に今の話を聞いて驚き大きな声を上げてしまった。「ふふっ、流石に驚くわよね。私も最初その話を聞いた時には冗談でしょと思ったり、お父様を怒ったりしたの。確かにお父様も笑い飛ばしてたんだけど、その後『しかしメリッサ。お前が嫌だと思っても、恐らく周りの多くの者はお前を"ローテン家のお嬢様"だと意識して接してくるだろう。それは一生背負わなくてはならないお前の運命なんだからな』と真剣な顔で仰ったの」
それを聞いて僕はハッと感じた。確かに僕もあの未来に辿り着くために養成学校へ入学しなければと勝手に運命付けていた。
「それを聞いて改めて男性の方との事は別として、ローテン家の者として教養は身に付けておくべきだと思って入学したの。入学してからはやはり周りの皆は私をローテン家のお嬢様と意識して接してきたわ」その話をしだした頃からメリッサさんの顔が少し寂しさを帯びていた。
「それで私に言い寄ってくる人達も何人か出て来て、ある時も数人の人達に囲まれて言い寄られていたんだけど、その時助けてくれたのが······」「あっ」「そう、アッシュよ。彼は私に絡んでいた人達を追い払ってくれたの。しかも私がローテン家のお嬢様だからでなく、困っていたからだという理由で」確かに、その時の事は王都に着いた日の夜に教えてもらったっけ。
「その後も恐らく他の人から私の正体を聞いてるはずだろうけど、特にそれで私との接し方を変える事なく付き合ってくれたわ。その事に私も徐々にアッシュに気を許していって付き合い出したの。しかもたまたまアッシュが成績優秀で将来を期待されているから、まさにお父様の希望通りになってきているしね」さっきまでの寂しい顔はどこへいったのやらで、今では笑顔で僕を覗いてきた。
「その事をさっきアッシュにも改めて話したら、『今の話、コイツが起きたら話してやってくれ。きっと今のコイツには一番の薬になるだろうから』だって言ったの」そう聞いて確かに一番の薬だったかもと感じた。
村を出て養成学校に入り、卒業して騎士団に入団後魔王軍と戦う。それが僕の運命ではあるし、僕もそれがイヤだとは思ってはいなかったけど、別にその間は知識や体力などは既に付いているし、元々前世は最低ランクのクラスだったんだからクラスのランクが落ちても構わないので気負う必要はなく、場当たり的に過ごしても良いんだと心の緊張感が解放された気分になった。
僕のその様子を見て「本当に良い薬になったみたいね?」メリッサさんがそう言ってきたので「うん。ありがとう、メ」リッサさんと言おうとした時、「あと、これからは2人っきりの時や少なくともアリスちゃんと3人きりの時はメリッサ"お姉ちゃん"って呼んでね」
「えっ?」「初めて宿屋の下の食堂で4人で食事をしてた時、弟や妹が出来たように感じたし、アッシュと2人が話してるのを聞いてて羨ましく感じていたの」そう言われたので、改めて「うん分かった、メリッサお姉ちゃん」と僕が言ったので「ありがとう」と今まで見た中で最高の笑顔を見せながら答えた。
本当に綺麗で優しくてまるで女神様の生まれ変わりだと言えるような女性だと改めて思い、一瞬兄ちゃんが羨ましい、というか恨む気持ちが込み上がった。
その後体を起こして一緒に帰ろうとした時「あ、後アッシュからもう一つ伝言で」とメリッサさんが言ってきたので「何?」と尋ねたら、微笑みながら「今夜は絶っっっ対に寝させてやらないからなぁって」
······それってつまり······先程までの膝枕状態を思い出し、「······やっぱ怒ってんじゃーーーーーん!!」「フフフフフッ」「メ、メリッサさーーーーーん」
そう叫んで笑われたためさすがにお姉ちゃんと叫ぶわけにはいかなかったので、さんづけで叫んだ。
その日の夜、寄宿舎で何があったのかは······ご想像にお任せします。
アリスは午後からは王都の郊外へ薬草類の研究研修と言ってたので暫くは1人(兄ちゃんは恐らくメリッサさんと一緒にいるだろうから)なので、どっかでグッタリさせてもらおうと思いながら校内を彷徨っていたら、ちょうど陽当たりも良さそうで風もそこそこ吹いている場所にベンチがあったので、そこに座ってグッタリとさせてもらってすぐに意識がなくなった。
どれぐらい経ったか分からないが、再び意識を戻した時には頭が何か柔らかいモノの上に乗っている事が理解出来た。
「あっ、起きた? レックス君」そう言われて声の方に目を向けたらメリッサさんが笑顔で僕の顔を覗き込んでいた。
「メ、メリッサさん!?」と言って慌てて体を起こそうとしたら「良いのよ、そのままで」と僕の頭に優しく手を乗せて再び体を横にさせてくれた。
「で、でも······」「アッシュも了承済みだから大丈夫よ」に、兄ちゃんも了承済みって、という事はベンチでグッタリしていた姿も見られてたのか。ハハハッ。
「アッシュからレックス君が大きな使命を負っていて、それに向けて必死に頑張っているから疲れが出るのも仕方がないだろうって聞いてるから」「えっ?」に、兄ちゃん喋っちゃったの?「あっ、詳しい内容は聞いてないから大丈夫よ」と言ってくれたので安堵した。
その様子を見てより穏やかな笑顔になってメリッサさんが「私もレックス君と似たような理由でここに入学したようなものだから、何となく気持ちが分かるの」「似たような理由?」
そう僕が聞き返したら、「うん。私の家のローテン家は王都にある貴族の家々の中で4大貴族と言われている家の1つに含まれているって、前に話したわよね?」「うん」
確かに以前兄ちゃんからそんな事を教えてもらった事があり、玉の輿? と冗談交じりで冷やかした事があった。
「そうした事もあって特に祖父の代までは子供に対して男女関係なく厳しく教育していて、正直お父様はそれがイヤでイヤでしょうがなかった事もあって、自分が親になった時はそれまでの家の方針を改めるようにしようと決意したの」そうだったんだ。
「それでお父様もたまたま穏やかで優しい方だったお母様と結婚した事もあって、1人兄がいるんだけど、その兄にも私にも優しく接して育ててくれたの。だけど、やっぱり4大貴族の1家という事で特に兄にはお城勤めをしてもらいたいと思って教育は熱心に受けさせるようにしたの。そして、私にも少なからずの教養を身に付けさせるために養成学校へ通うようにと仰って、いずれ騎士団に入隊しそうな方々の中で出世しそうな方を見つけ、その方と······結ばれれるように接しなさいって言ってきたの」
「えぇっ!?」流石に今の話を聞いて驚き大きな声を上げてしまった。「ふふっ、流石に驚くわよね。私も最初その話を聞いた時には冗談でしょと思ったり、お父様を怒ったりしたの。確かにお父様も笑い飛ばしてたんだけど、その後『しかしメリッサ。お前が嫌だと思っても、恐らく周りの多くの者はお前を"ローテン家のお嬢様"だと意識して接してくるだろう。それは一生背負わなくてはならないお前の運命なんだからな』と真剣な顔で仰ったの」
それを聞いて僕はハッと感じた。確かに僕もあの未来に辿り着くために養成学校へ入学しなければと勝手に運命付けていた。
「それを聞いて改めて男性の方との事は別として、ローテン家の者として教養は身に付けておくべきだと思って入学したの。入学してからはやはり周りの皆は私をローテン家のお嬢様と意識して接してきたわ」その話をしだした頃からメリッサさんの顔が少し寂しさを帯びていた。
「それで私に言い寄ってくる人達も何人か出て来て、ある時も数人の人達に囲まれて言い寄られていたんだけど、その時助けてくれたのが······」「あっ」「そう、アッシュよ。彼は私に絡んでいた人達を追い払ってくれたの。しかも私がローテン家のお嬢様だからでなく、困っていたからだという理由で」確かに、その時の事は王都に着いた日の夜に教えてもらったっけ。
「その後も恐らく他の人から私の正体を聞いてるはずだろうけど、特にそれで私との接し方を変える事なく付き合ってくれたわ。その事に私も徐々にアッシュに気を許していって付き合い出したの。しかもたまたまアッシュが成績優秀で将来を期待されているから、まさにお父様の希望通りになってきているしね」さっきまでの寂しい顔はどこへいったのやらで、今では笑顔で僕を覗いてきた。
「その事をさっきアッシュにも改めて話したら、『今の話、コイツが起きたら話してやってくれ。きっと今のコイツには一番の薬になるだろうから』だって言ったの」そう聞いて確かに一番の薬だったかもと感じた。
村を出て養成学校に入り、卒業して騎士団に入団後魔王軍と戦う。それが僕の運命ではあるし、僕もそれがイヤだとは思ってはいなかったけど、別にその間は知識や体力などは既に付いているし、元々前世は最低ランクのクラスだったんだからクラスのランクが落ちても構わないので気負う必要はなく、場当たり的に過ごしても良いんだと心の緊張感が解放された気分になった。
僕のその様子を見て「本当に良い薬になったみたいね?」メリッサさんがそう言ってきたので「うん。ありがとう、メ」リッサさんと言おうとした時、「あと、これからは2人っきりの時や少なくともアリスちゃんと3人きりの時はメリッサ"お姉ちゃん"って呼んでね」
「えっ?」「初めて宿屋の下の食堂で4人で食事をしてた時、弟や妹が出来たように感じたし、アッシュと2人が話してるのを聞いてて羨ましく感じていたの」そう言われたので、改めて「うん分かった、メリッサお姉ちゃん」と僕が言ったので「ありがとう」と今まで見た中で最高の笑顔を見せながら答えた。
本当に綺麗で優しくてまるで女神様の生まれ変わりだと言えるような女性だと改めて思い、一瞬兄ちゃんが羨ましい、というか恨む気持ちが込み上がった。
その後体を起こして一緒に帰ろうとした時「あ、後アッシュからもう一つ伝言で」とメリッサさんが言ってきたので「何?」と尋ねたら、微笑みながら「今夜は絶っっっ対に寝させてやらないからなぁって」
······それってつまり······先程までの膝枕状態を思い出し、「······やっぱ怒ってんじゃーーーーーん!!」「フフフフフッ」「メ、メリッサさーーーーーん」
そう叫んで笑われたためさすがにお姉ちゃんと叫ぶわけにはいかなかったので、さんづけで叫んだ。
その日の夜、寄宿舎で何があったのかは······ご想像にお任せします。
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