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第1章 転生
第11話 魔物との遭遇2
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目の前のオークにアッシュ兄ちゃんとアリスが怖がって体を震わせている間僕は前世での同じ光景を思い出していた。
あの時は3人とも目の前の生き物が魔物であるということしか分からなかったので、アッシュ兄ちゃんの指示の下その魔物がいなくなるまでずっと息を潜めて茂みに隠れていて、完全に気配が消えたのを確認した後すぐに村に帰って父さんらに報告して討伐隊が結成された。
そしてその日のうちにその魔物を発見したのだが、そいつとの戦闘中何人かの村人が亡くなってしまい、またレオおじさんを始め多くの人が大怪我を負ってしまったのであった。
その事を思い出し、(もしこのオークを見逃してあの時と同じ行動をしたら、村の人の何人かは死んでしまってレオおじさん達も大怪我を負い、もしかしたらそれでトロルの襲撃に影響が出たのかもしれない。だったら······)そう思いながら持ってきていた短剣を収めている鞘に手を当てた。
(今回はこれがある。僕が時間を稼ぎながらアイツの体力を消耗させ、その間に2人を村に返して父さん達を呼んで来てもらえば、誰も犠牲にならないで済むかもしれない!)そう考えをまとめたところで2人に語りかけた。
「(2人ともよく聞いて)」僕が言ったので2人とも僕の方を見た。
「(僕が茂みからまず出てアイツの注意を引き付けるから、その後2人はすぐ村に帰ってこの事を父さん達に知らせてきて欲しいんだ)」
「「えっ?!」」「そ、そんな」「危険すぎる!」「僕には“これ”があるし、そうしないと村の人達も大変な目に遭うんだ」そう言って短剣を2人に見せた。
「イヤ、でも······」アッシュ兄ちゃんがまだ食い下がろうとしたので、「ただ村の人達が来るための時間稼ぎと、それまでアイツの体力を落とさせるためだけだから。2人とも僕の体力が凄くあるのは分かっているでしょ?」と言った。
((確かに))2人はそう感じた。森でのかけっこはほとんどレックスが1番だったり、魚釣りでも1人で結構な大物を釣り上げたりと体力が物凄いと思っていた程だった。
「絶対、大丈夫なんだろうな?」アッシュ兄ちゃんが聞いてきたので、僕は真剣な目をして無言で頷いた。
「分かった」と納得してくれ、反対側にいたアリスは僕の服の裾を握り、泣きそうな目で「絶対、死んじゃイヤだからね」と言ってきたので、裾を握っていた手を両手で包んで「絶対に、生きてまた会えるさ」と答えてあげた。
そして、そのやりとりをした数十秒後に僕は村の方角とは反対方向の草むらからわざと大きな音を出して表に出た。その音に当然オークは気付き僕の方を見た。
その時の目は僕らが狩りの時動物を見つけた時の目と同じような目つきであった。直後に僕は村とは反対の方向へ一目散に走り出し、オークも僕を追ってその場を離れた。
僕とオークが少し離れたところでアッシュ兄ちゃんとアリスが茂みから出て村へ走って行ったのであった。
そんな僕らのやりとりを、少し離れた所からずっと見聞きしていた"モノ"がいて、そのモノも2人が村の方へ走って行ったのを確認してその場を離れた······。
僕の方はオークに追いつかれることもなく、またあまり引き離さないように距離を保ちながら森の中の”ある場所“に向かっていた。
それは最近ごく稀に1人で森に入り、クマの親子の様子を見に来たついでや、特訓を行う目的で訪れていた場所であった。そこは村から余り離れてはいない距離の所にあって知っている中では1番巨大な木々が溢れていて、また各枝などもしっかりしているので足腰を鍛えるのには打って付けの場所であった。
その場所近くまで来たところでオークから距離を取るために少しスピードを上げた。案の定オークとの距離は離れ、目的地に着いたところで素早く近くの木を使って上の方に生えている枝に登って行った。
ちょうど良い枝に辿り着いたところで息を潜め、オークの様子を伺っていた。オークも僕の気配か多分匂いを辿って木の真下辺りまでやって来た。流石に姿が見えなくなったので辺りをキョロキョロし出した。
(バレてないようだな)と思って、取り敢えずもう少ししたら諦めて帰るだろうから、その時木から降りて奴の足に1、2回短剣で斬りつけてやろうと思っていたら突然オークが叫び、そして持っていた斧を近くの木々に打ち込み始めたのであった。
当然僕が潜んでいた木にも打ち込まれたので一瞬大きく揺れ落ちそうになったのを必死でこらえた。
(見境なく振り回しかよ!)そう思ってオークを見ていると、奴の近くの茂みがガサガサと大きく揺れた。
その事に気付いたオークが、次に僕が気付いてそちらの方を見た。するとそこからは······あの親のクマが現れた。
(べ、ベアー!?)そう、少なくとも僕とアッシュ兄ちゃんは最近になって親のクマのことをベアー、子グマのことをベアーズと呼ぶようになっていたそのベアーが茂みから現れたのであった。
あの時は3人とも目の前の生き物が魔物であるということしか分からなかったので、アッシュ兄ちゃんの指示の下その魔物がいなくなるまでずっと息を潜めて茂みに隠れていて、完全に気配が消えたのを確認した後すぐに村に帰って父さんらに報告して討伐隊が結成された。
そしてその日のうちにその魔物を発見したのだが、そいつとの戦闘中何人かの村人が亡くなってしまい、またレオおじさんを始め多くの人が大怪我を負ってしまったのであった。
その事を思い出し、(もしこのオークを見逃してあの時と同じ行動をしたら、村の人の何人かは死んでしまってレオおじさん達も大怪我を負い、もしかしたらそれでトロルの襲撃に影響が出たのかもしれない。だったら······)そう思いながら持ってきていた短剣を収めている鞘に手を当てた。
(今回はこれがある。僕が時間を稼ぎながらアイツの体力を消耗させ、その間に2人を村に返して父さん達を呼んで来てもらえば、誰も犠牲にならないで済むかもしれない!)そう考えをまとめたところで2人に語りかけた。
「(2人ともよく聞いて)」僕が言ったので2人とも僕の方を見た。
「(僕が茂みからまず出てアイツの注意を引き付けるから、その後2人はすぐ村に帰ってこの事を父さん達に知らせてきて欲しいんだ)」
「「えっ?!」」「そ、そんな」「危険すぎる!」「僕には“これ”があるし、そうしないと村の人達も大変な目に遭うんだ」そう言って短剣を2人に見せた。
「イヤ、でも······」アッシュ兄ちゃんがまだ食い下がろうとしたので、「ただ村の人達が来るための時間稼ぎと、それまでアイツの体力を落とさせるためだけだから。2人とも僕の体力が凄くあるのは分かっているでしょ?」と言った。
((確かに))2人はそう感じた。森でのかけっこはほとんどレックスが1番だったり、魚釣りでも1人で結構な大物を釣り上げたりと体力が物凄いと思っていた程だった。
「絶対、大丈夫なんだろうな?」アッシュ兄ちゃんが聞いてきたので、僕は真剣な目をして無言で頷いた。
「分かった」と納得してくれ、反対側にいたアリスは僕の服の裾を握り、泣きそうな目で「絶対、死んじゃイヤだからね」と言ってきたので、裾を握っていた手を両手で包んで「絶対に、生きてまた会えるさ」と答えてあげた。
そして、そのやりとりをした数十秒後に僕は村の方角とは反対方向の草むらからわざと大きな音を出して表に出た。その音に当然オークは気付き僕の方を見た。
その時の目は僕らが狩りの時動物を見つけた時の目と同じような目つきであった。直後に僕は村とは反対の方向へ一目散に走り出し、オークも僕を追ってその場を離れた。
僕とオークが少し離れたところでアッシュ兄ちゃんとアリスが茂みから出て村へ走って行ったのであった。
そんな僕らのやりとりを、少し離れた所からずっと見聞きしていた"モノ"がいて、そのモノも2人が村の方へ走って行ったのを確認してその場を離れた······。
僕の方はオークに追いつかれることもなく、またあまり引き離さないように距離を保ちながら森の中の”ある場所“に向かっていた。
それは最近ごく稀に1人で森に入り、クマの親子の様子を見に来たついでや、特訓を行う目的で訪れていた場所であった。そこは村から余り離れてはいない距離の所にあって知っている中では1番巨大な木々が溢れていて、また各枝などもしっかりしているので足腰を鍛えるのには打って付けの場所であった。
その場所近くまで来たところでオークから距離を取るために少しスピードを上げた。案の定オークとの距離は離れ、目的地に着いたところで素早く近くの木を使って上の方に生えている枝に登って行った。
ちょうど良い枝に辿り着いたところで息を潜め、オークの様子を伺っていた。オークも僕の気配か多分匂いを辿って木の真下辺りまでやって来た。流石に姿が見えなくなったので辺りをキョロキョロし出した。
(バレてないようだな)と思って、取り敢えずもう少ししたら諦めて帰るだろうから、その時木から降りて奴の足に1、2回短剣で斬りつけてやろうと思っていたら突然オークが叫び、そして持っていた斧を近くの木々に打ち込み始めたのであった。
当然僕が潜んでいた木にも打ち込まれたので一瞬大きく揺れ落ちそうになったのを必死でこらえた。
(見境なく振り回しかよ!)そう思ってオークを見ていると、奴の近くの茂みがガサガサと大きく揺れた。
その事に気付いたオークが、次に僕が気付いてそちらの方を見た。するとそこからは······あの親のクマが現れた。
(べ、ベアー!?)そう、少なくとも僕とアッシュ兄ちゃんは最近になって親のクマのことをベアー、子グマのことをベアーズと呼ぶようになっていたそのベアーが茂みから現れたのであった。
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