野生子グマの人生変転記

きこうダきこう

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2年生での出来事

第57話 父ちゃんとお散歩

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 エルフ達の国から帰ってきてからもまた何日か過ぎ、その間みんなそれぞれ好きな事をして過ごした。

 レックスとアッシュは2人の父ちゃんと森へ狩りに行き(もちろんボクも)、アリスは家でこれまたアリスの父ちゃんや母ちゃんの手伝いをし、そしてメリッサは1人、もしくは父ちゃんの背中に乗せてもらって森を散歩しに行ったりしていた(ボクもたまに一緒に行った)。

 そんな風にみんな過ごしていたある日、レックス達が集まって「王都までの道のりを考えると、3日後には村を出た方が良いよね?」「そうだな。それぐらいは余裕を見とくべきか」「そうね。もう少し居たかったけど、新学期に遅れたらマズイわよね」「そうよね」と話し合っていた。

(3日後、かぁ)そこでレックスから、「それじゃあ、明日はまたそれぞれ好きに過ごして、最終日は皆で今度はお弁当を持って朝から森へ散策に行かない?」と提案があり、「おっ、良いな、それ」「うん! そうしましょ」「そうね」アッシュ達も賛成した。

 
 そして翌日、レックスとアッシュはやっぱり父ちゃん達と狩りに、アリスも家で過ごし、メリッサは······。

「それじゃあ行ってくるわね」「ああ」「ポピーによろしくね」「うん!」レックスからあの青い羽を借りてマリンタウンへ飛んだ。そしてボクはというと······。

 タッタッタッタッ······「父ちゃーん!」住み処に向かって森を駆け抜け、近くまで来たので父ちゃんに呼び掛けた。

 父ちゃんもボクに気付いてくれて、「ん? どうしたんだ? お前だけで」「あのね、2日後に村を出ることになって、明日はみんなで森を散策するから今日までそれぞれ好きに過ごすことになったから、今日は父ちゃんと一緒にいようと思って」と答えた。

 すると父ちゃんは、「そうだったか。······それじゃあ、お前がまだ知らない場所に連れていってやろう」って言ってくれた。

「知らない場所!? どこ、どこ?」「ハッハッハ、そう慌てるな。付いておいで」「うん!」そうしてボクは父ちゃんの後に付いていった。

 その場所に向かう途中で「ところで息子よ」「何? 父ちゃん」「レックス達が行ってる所に行ってからの暮らしはどうなんだ?」と聞いてきたから、「とっても楽しいよ!」と元気に答えた。

「そうか」「うん! 色んなヒトと知り合いになったし、色んな動物とも仲良くなったし、あと······」

 ボクはレックスに付いて学校に行ってからのアッシュやアリスとの再会にメリッサとの出会い。ハウルのおっちゃんとかしろいおっちゃんなど他のヒトとの出会いやそうしたヒト達と一緒に行った授業や頼み事。また学校にいた動物達や、洞窟にいたロックサイって魔物の子供のロックくんにヴァンパイアバットって魔物の子供のバットくんともおともだちになったことなどを父ちゃんに話した。

 それを聞いてさすがに父ちゃんも、「そ、そうか。そんなにも色々な出会いや経験をしたのか」「うん!」と驚いていた。

 しかし、「そうか······」そのすぐあとこう呟いたかと思ったら、それからは何も言わなくなり、また表情も哀しそうになったように見えた。

(どうしたんだろう?)と思ったけど、特に父ちゃんに尋ねることもなく、また父ちゃんもそれからは何も言わなくなったのでボクも何も言わずに父ちゃんの後に付いて行くことにした。

 
 大分歩いたところで「さぁ着いた。この先だよ」と父ちゃんが言った。そこは森を抜けてすぐ目の前の崖下に開いていた洞窟の前だった。

「この洞窟の先?」「そうだ。実は少し前に森で以前レックスと一緒に退治した魔物をまた見掛けたことがあってな」「えっ!?」

 父ちゃんがレックスと退治した魔物って······あっ!「オークを!」と聞いた。

 すると父ちゃんも、「オークと言うのか? あの魔物は」「うん」「ああ、そうだよ」と答えてくれた(やっぱり)。そういえば、村に帰ってきた日にレックスの父ちゃんが森の北にある村のヒトが近くでオークの姿をよく見かけるって言ってたっけ。

「それで、しばらくそのオークの後を付けていったらこの洞窟に入っていって、洞窟を抜けた先で暴れ回っていたんだ」「洞窟を抜けた、先で?」「ああ。だからと協力してオークを退治したんだよ」と話してくれた。

 その話を聞いて「そこにいたモノ達って?」と聞いた。

 すると父ちゃんは「それはな······」「それは?」そこでこちらを向いてニヤリと笑い、「行けば分かる」と言って洞窟に入っていった。

(ちぇっ。教えてくれたって良いのに)と少々怒りながらボクも後に続いた。

 そして洞窟を進み出口が見えてきたので出てみたら······。

 
「う、うわぁー! キレイ!」目の前にはボクの体の大きさよりはやや高く、父ちゃんの体の大きさよりはやや低い様々な色のお花がたくさん咲いていた。

「こんな所があったなんて」「ああ。俺も初めてその時知ったんだよ」目の前の光景に見とれて暫くそれからは何も話したりせず、微動だにもしなかった。

 少ししてようやく「ところで父ちゃん。さっき言っていたモノ達はどこにいるの?」と父ちゃんに聞いた。

「それはな」と言って父ちゃんはボクの首に付いていた輪っかを咥えてボクの体を少し上げてくれた。

「うわっ!」「目の前に見える木にだよ」「え?」と言われてボクは前方に見えた木をよーく見てみた。

 するとその木の枝の1本に何かがぶら下がっているのが見えた。

「あれって······」さらによくよく目を凝らしてみたら、「蜂の、巣?」に見えた。

「その通りだ」「じゃあ、父ちゃんと一緒にオークを退治したのって?」そこで父ちゃんはボクを地面に下ろし、「そう、蜂さん達だよ」「そうだったんだ!」「ああ。オークが暴れ回っていた時に蜂達が奴の周りを飛び交い、その隙に俺が止めを刺したんだ」「へぇ」そこまで話してボク達は花の間を分け進んで蜂の巣がぶら下がっている木に向かった。

 
 蜂の巣に近付いたところで「あら?」1匹の蜂さんがこっちにやって来て、「お久しぶりです、熊さん」と挨拶してきて、父ちゃんも「やぁこんにちは、女王」と返した。

(この蜂さんが女王、つまりリーダーなんだ)と思っていると、「ひょっとして、こちらの子グマさんは?」「ああ。俺の息子です」「やっぱりそうだったんですね」と紹介されたので、「初めまして」と挨拶し、女王さんも「初めまして」と返してくれた。

「いつもは遠く離れた場所にいるんですが、数日前から森に帰ってきていたのでこちらにも連れてきてやろうと思いまして」「そうでしたか」と話したところで女王さんから、「折角来て頂いたんですから、を召し上がっていきませんか?」と聞かれ、「よろしいのですか?」「えぇ」父ちゃんと女王さんとでそんな会話がされた。

(あれ?)とボクがそう思っていると、「どうぞこちらへ」と案内された。

 そして案内された先で見つけたのは······「あっ、ハ······ハチミツだぁー!」蜂の巣から取られたハチミツだった。

「うわぁーい!」ボクは大喜びでハチミツに向かい、ペロッペロッペロッ! ペロッペロッペロッ! とハチミツを舐めだしたのだった······(おいしい!!)。

 さすがにそんなボクの様子に女王さんを始め蜂さん達は驚き唖然とし、父ちゃんもしかめっ面になって暫く見ていた後にボクをハチミツから引き離した。

 それからは父ちゃんと(大人しく)ハチミツを食べた。


「全く、お前という奴は」「えへへ。だって美味しそうだったんだもん」「だからって、いきなり飛び付いていつまでも舐め続ける奴があるか」「ごめんなさーい」

 ハチミツを食べた後蜂さん達の下を離れて洞窟に向かい、その洞窟を進みながら先ほどの会話をしだしたのだった。

「だけど本当に美味しかったなぁ」「あぁ、父さんも初めて頂いた時はそう思ったよ。こんなに旨いハチミツを食べたのは初めてだと」「そうなんだ」「あぁ」

 ちょうどそこで洞窟を抜け、その後ボクが「レックス達にも食べさせてやりたいなぁ」と言ったら、父ちゃんがピタリと歩くのを止め、そして何も言わなくなった。

 そのため不思議に思ったボクは後ろを振り向き、「父ちゃん?」と尋ねた。

 それでも父ちゃんは何も言わず微動だにさえしなかった。暫くしてようやく「ああ、そうだな。······いつか、な」などと呟くように言ってまた歩きだした。

 そんな父ちゃんをボクはじっと見続け、(変なの?)と思いつつも父ちゃんの後に続いた。

 
 それからボク達は洞窟近くで父ちゃんしか知らない色々な木の実や果物が実っている場所に向かってそれらを食べ、それから住み処に戻り······、「それじゃあね、父ちゃん」「ああ。またな」ボクはレックス達の村に帰るために父ちゃんと別れた。

 ベアーズが住み処を離れ姿が見えなくなったところでベアーは、「······ふぅ。やはりアイツの将来のためにも、明日のいずれかで伝えるべきだな」ある決意を固めたのだった······。

 父ちゃんと別れた後ボクはひたすら村へ向かって森を駆け、そうして村が見えて入口を抜けてレックスの家近くに向かった。

 するとすでにレックス達がいて何かを話していたのでそこに駆けていった。

 そのレックスもボクが駆けてきているのに気付き、「あっ、ベアーズおかえり」と言ったのを皮切りに、「おぅ、ベアーズ」「「おかえり、ベアーズ」」アッシュ達もそう言ってくれたので、ボクも「ガアァ(ただいまぁ)!!」と大きく吠えながら、レックスに向かって飛び付いたのだった······。
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