上 下
54 / 61
2年生での出来事

第54話 きふ······?

しおりを挟む
 レックスから数日したら森に帰ると聞いた次の日。

「ウーーーーーン」(······?)レックスは起きてからずっと以前から部屋に置かれていた大きな袋を見つめて唸っていた。

(さっきから何を唸ってるんだろう?)そう思って見ていると、「レックス。久しぶりに一緒に朝ご飯食べに行きましょう」アリスがレックスを朝ご飯を食べに誘いに来た。

 だけどレックスは答えなかったので「レックス、入るわよ」アリスが勝手に部屋に入ってきた。

 そしてレックスの姿を見て「何してるの?」と聞いてきたのでレックスが、「もうすぐ夏季休暇になるんだけど、どうしようかと思って」とその袋を指した。

「これって?」「頼み事のアルバイトで貯めた”例の計画”の軍資金だよ」(けいかく? ぐんしきん?)何の事だろう?

「例の計画?······あっ! あれね」(あれ?)どうやらアリスも知ってたみたい。

「大分貯まったのね。いくらぐらい貯まったの?」「多分5万Gギニーぐらい」「5万! 凄い!!」とアリスはビックリしていた(そんなに凄い事なんだ)。

「ほとんど兄ちゃんの報酬分なんだけどね」「あっ。そうなんだ」「うん」「取り敢えず、お兄ちゃんとも相談してみたら?」「そうだね」「それじゃあ改めて朝ご飯食べに行きましょ」「うん。じゃあ行ってくるね、ベアーズ」そう言ってレックス達は食堂に向かった。

 残ったボクは、(結局、何の事だったんだろう?)さっきレックスとアリスが何を話していたのか袋を見つめて考えたのだった······。

 暫くしてレックスが帰ってきてボクが朝ご飯を食べた後に学校へ向かい、いつものように(今日はずっとスペースの中で)過ごし、いつもよりやや早い時間にレックスが迎えに来たのでそのまま寄宿舎に帰った。


 その寄宿舎に帰ってきたところでレックスから、「ベアーズ。今からちょっとお姉ちゃんとお出かけすることになってるから、お留守番しててね」と言いつつ、あの大きな袋を持って出て行った。

(メリッサとお出かけするのに、何であの袋が必要なんだろう?)などと思いながら暫くレックスの出て行った扉を見つめ続けた。

 少ししたらレックスが帰ってきて、その様子が何だか少し嬉しそうに見えた。

 そのため、(レックス、どうしたの?)と尋ねるようにレックスに近付いて首を傾げた。

 するとレックスは、「あぁベアーズ。実はこのお金を何とかする手段が見つかったんだよ」と教えてくれた。

(何とかする、しゅだん?)また首を傾げたら、レックスがそのお金の事について詳しく話してくれた。


「実はこのお金は、王都を散策した時にお前も連れて行った孤児院の子供達のために何かしてやりたいと前から思ってて、そのために使おうと貯めていたお金だったんだよ」(そうだったんだ)

「後から兄ちゃんやアリスにバレて2人にも話したら、『それなら俺も私も協力する』って言ってくれて、それからますます貯まっていったんだ」

(そっかぁ!)だからアッシュが前に頼み事を終えてもらったお礼をボクにレックスへ届けてくれって頼んでたんだ。

「それで、今日お姉ちゃんからお城の中には生活に困っている人達を何とかしようとしている部署があって、そこに持ってって孤児院のために使って下さいと頼めば確実に孤児院のために使われるって教えてもらったんだ」(へぇー)

「ただ直接行っても会わせてもらえないだろうから、お姉ちゃんのお父さんに紹介状を書いてもらってから行こうって話になったんだ」(メリッサの父ちゃんに?)

「それで今お姉ちゃんの実家に行ってきておじさんに説明したら、すぐに紹介状を書いてもらえたんだよ」(そうなんだ!)

「後はこれを持ってお城に行き、孤児院のために使って下さいとお金を渡すだけなんだ」(良かったね、レックス)

 レックスからお金を貯めていた目的と、それをどうにかする方法を聞き、またレックスが嬉しそうにしているのを見てボクも嬉しい気分になった。

 
 後日お城へ行くためにレックスが部屋を出て行った······と思ったら結構早く戻ってきて、すぐに袋を持ってまた出て行った。

 それから部屋に帰ってきて、「ベアーズ。無事にお城の担当の部署の人に渡すことが出来たよ」と伝えてくれたので、(良かったね、レックス)と言わんばかりにボクも笑顔になった。


 その日の夜。レックスがいつも寝ているベッドってのに寝ながら何かを考えてる様だったので、ボクは近くに寄ってレックスをまじまじと見た。

 するとレックスは、「あぁ、ベアーズ。いやぁ、これから頼み事をどうしようかと思ってね」(頼み事を? 何で?)

「今回と同じ手をそう何度も使うわけにはいかないだろ? おじさんに紹介状を書いてもらったりとか、お城へ赴くなんてさ」(あぁ、言われてみれば)確かにそうかも······。

 なんて会話をしていたら突然、「続けるべきじゃぞ」「えっ?」(えっ?)という声が聞こえてきた。

 ボクもレックスも驚いて声が聞こえた方を見たら、スゥッとハウルのおっちゃんが現れた。

「ハ、ハウル様!」「久しぶりじゃな」「お、お久しぶりです。どうしてここに?」「ちと旧友に会いに来たついでにのぉ」「きゅ、旧友って······」(誰の事なんだろう?)

「その旧友からお主に伝言じゃ」「えっ?」「これからもお世話を受けたお礼のための寄付をしたければ、直接神父である私ジニーに渡すようにとの事じゃ」「っ!? ど、どうして神父様がその事を······(はっ!)ま、まさか神父様は······」(えっ? 何?)

 レックスが続けて何かを言おうとしたら、ハウルのおっちゃんが止めた。

「それ以上は無しじゃ」「······ハイ」「今後もお互いその事は知らない者同士という事で通すんじゃぞ?」「わ、分かりました」「うむ。ではな」と言ってハウルのおっちゃんはまたスゥッと消えた。


(何だったんだろう?)と思っていたらレックスが、「ベアーズ、とんでもない事を知っちゃったよ」(えっ? とんでもない事って?)

「神父様も実はボクと同じで、一度死んだ後神様に生き返らせてもらった人だったんだよ」(えっ、······ええぇーーーっ!?)さすがにそれを聞いてボクもとても驚いた。

 レックスが誰かに殺されちゃった後に赤ちゃんの時からじんせいってのをやり直しているって事は聞いてたけど、まさかしんぷって呼ばれているヒトもそうなんて······。

 するとレックスは何かを決意したような表情になって「ベアーズ」(うん? 何?)そこでボクの方を向いて「明日からも、頼み事一緒に頑張ろうな!」と言ってきた。

 そのレックスの雰囲気をくみ取ってボクも、コク!(うん!)と言わんばかりに大きく頷いたのだった。


 次の日、昨日言った通りレックスは今日も頼み事を引き受けることにしてボクもそれを手伝ったのだった。

 またハウルのおっちゃんから言われたことをアッシュやアリスにも伝え、2人もレックスと同じようにまた頼み事をやってそのお礼をレックスに渡したのだった。

 なぜか最近になってメリッサも頼み事をやってそのお礼をレックスに渡しだしたのだった······。

 
 そしてレックス達が森へ向かう前の日。

「たったの数日だけでまさかこんなにも貯まるなんてな」(ホントに)

 数日しか頼み事をしてないのにお礼を入れている袋はだいぶ膨らんでいた。それを言われた通りしんぷってヒトに直接渡すため、ボクとレックスはこじいんって所に向かっていた。

 寄宿舎からだいぶ歩いてようやく「着いた」以前レックスに案内してもらったこじいんって所に着いた。

「さてと」そう言ってレックスは目の前にある2つの建物を交互に見渡し、「神父様はどっちにいるんだろう?」と悩んでいた。

(確かに、どっち何だろう?)そうボクも思っていたら突然、「(右の教会の方じゃよ)」(えっ!?)しろいおっちゃんの声で右の"きょうかい"の方って聞こえた。

(今のって······?)よく分かんなかったけど、とりあえず······クイックイッ!(レックス。右のきょうかいって方にしんぷってヒトはいるみたい)レックスにそう伝えようと腕の中で動いた。

 そんなボクの様子に気付いてくれて「どうした? ベアー······ひょっとして、教会の方に神父様はいるのか?」と聞いてきてくれたので、コクコク(うん。たぶん、そう)と頷いた。

 そのためレックスはきょうかいの方へ歩きだし、その建物の入り口に着いて扉をゆっくり開けた。


 すると奥の方に誰かがいるのが見えたと思ったら、「······ホントにいた」とレックスが呟いたのが聞こえたので、(あのヒトがしんぷってヒトかぁ)ボクも分かった。

 そうしてレックスがゆっくりと奥のしんぷってヒトの下に歩いていたら、不意にしんぷってヒトがこちらを向いたため、レックス(とボク)と目があってしまった。

 するとしんぷってヒトはニコリと笑顔になってこちらに歩きだしてきて、レックスの目の前に来たら「我が教会に何か御用でしょうか?」とやさしく聞いてきた。

 そのためレックスは「あの······こちらを寄付したいと思いまして」と持っていたお礼の入った袋を渡した。

 それを受け取ったしんぷってヒトは「ありがとう。これからも無理のない範囲でお願い致しますね」と言い、それにレックスも「······はい」と返答して「それじゃあ、失礼します」きょうかいを後にしたのだった。

 
 こじいんやきょうかいから少し離れた場所まで来たところで、「やっぱり凄いや、神父様も」(えっ、何が?)突然レックスがそう言い出した。

「ハウル様から僕の事を聞いているはずなのに、さっき初めて対面した時には全くそんな素振りや雰囲気を見せなかったんだから」と言われ、ボクもそれを聞いて(······確かに)納得したのだった。

「何はともあれ、これでもう思い残すことも無くなったし、いよいよ明日皆と村へ出発するぞ」(そっかぁ、村へ······村へ!? じゃあ、父ちゃんとも再会出来る!)

 レックスから明日村へ帰ると聞いた途端元気になり、ピョンッ!(うわぁーーーいっ!! 父ちゃんに会えるーーー!!)レックスの腕から飛び降りてそのままなぜかちゃんと真っ直ぐ寄宿舎のある方向へ全速力で駆け出したのだった······。

「あっ、おい! ベアーズ! 置いてくなぁーーーっ!!」と後ろの方でレックスが叫んでいたみたいだったけど······気にしなーーーいっ!! 事にしたのだった(わーーーいっ!)······。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
異世界に転生したフランカは公爵夫人として暮らしてきたが、前世から叶えたい夢があった。パティシエールになる。その夢を叶えようと夫である王国財務総括大臣ドミニクに相談するも答えはノー。夫婦らしい交流も、信頼もない中、三年の月日が近づき──フランカは賭に出る。白い結婚三年目で離縁できる条件を満たしていると迫り、夢を叶えられないのなら離縁すると宣言。そこから公爵家一同でフランカに考え直すように動き、ドミニクと話し合いの機会を得るのだがこの夫、山のように隠し事はあった。  無言で睨む夫だが、心の中は──。 【詰んだああああああああああ! もうチェックメイトじゃないか!? 情状酌量の余地はないと!? ああ、どうにかして侍女の準備を阻まなければ! いやそれでは根本的な解決にならない! だいたいなぜ後妻? そんな者はいないのに……。ど、どどどどどうしよう。いなくなるって聞いただけで悲しい。死にたい……うう】 4万文字ぐらいの中編になります。 ※小説なろう、エブリスタに記載してます

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

【取り下げ予定】愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします

暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。 いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。 子を身ごもってからでは遅いのです。 あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」 伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。 女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。 妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。 だから恥じた。 「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。 本当に恥ずかしい… 私は潔く身を引くことにしますわ………」 そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。 「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。 私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。 手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。 そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」 こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

処理中です...