上 下
32 / 61
学校での出来事

第32話 注目の的

しおりを挟む
 その日、ボクはいつもより機嫌が悪かった。なぜなら······。

(んー、うるさいなぁ)と思いつつ少し体を動かしたら「あっ、また動いた!」「ホントだぁ!」ガヤガヤ、ザワザワ······。なんとボクのいるスペースの周りにレックス達以外の多くのヒトが集まってボクを見ていたのだった。

 ボクが色んなクラスのジュギョウってのに参加したことでボクの存在が多くのヒトに知れ渡り、またここで過ごしていることも知られたためにボクをじっくり見に来るヒトが多くなってきたのだった。

(今日はゆっくり眠りたいのにー)と思っていても、「こっち向いてよー」「こっちもー」などあちこちから色々言われたのだった。

 そのため(もうっ!)と感じボクはに向かった。そんなボクの歩き姿を見ただけでも「あっ、歩いた、歩いた!」「ホントだ、すげぇ!」などの声が飛び交った。

 そしてボクは目的の······スペース内に立っている木の根本に空いてる穴に入り、(おやすみなさーい)また眠りだした。

 その後も外が騒がしかったけど、ボクには全然聞こえずぐっすり眠る事が出来た。


 どれだけ眠ってたか分からないけど、不意にすぐ近くから「ーズ。ァーズ。ベアーズってば」と呼ばれ、(ん? レックス?)ようやくその声がレックスだと分かって声のした方を覗いたら、やっぱりレックスで昼ごはんを持ってきてくれていた。

「どうしたんだ? こんな所で寝てるなんて」(だって、周りに多くのヒトが来てうるさいんだもん)と言いたげな様子を見せた。

 するとレックスも何か気付いてくれて「ああ、ひょっとしてスペースの周りに人が集まって、それが鬱陶しく感じたのか?」と聞いてきたのでコクコク(そうそう!)と頷いた。

「まぁ仕方がないよなぁ。あちこちのクラスがお前を授業で利用してきたことでお前の存在も学校中に知れ渡った事だし、そんなお前をじっくり見てみたいって皆思っちゃうのもなぁ」とレックスは言ってきた。

(だけど······)何か言いたげな様子を見せたら、「まぁ、もし本当にイヤそうだなぁって感じたら僕から先生に相談するし、きっと先生達も何か考えて下さるだろうから、ね」(うん)その時はそれで話は終えてお昼ごはんを食べた。


 それからまた何日か過ぎ、3日後にレックス達が昼ごはんを持ってきた時に事態は大きく動いた。

「はい、ベアーズ」(いただきまーす!)ムシャムシャムシャ「ベアーズ。今日は良い知らせがあるよ」ムシャ?(ん? なになに?)

「今朝全クラスに言い渡されたみたいなんだけど、今の僕達の学年の間お前を授業で利用することが禁止、つまり止められたんだ」「ガ!?(えっ、そうなの!?)」

「それと、このスペースにも僕とごく一部の人以外が近付くのも禁止させられたんだ」「ガァ!(そうなの!)」それらを聞いて本当に驚いた。

「校長先生が先生達にちょっとお前の力を授業で利用しすぎだと怒ったみたいだし、先生方が時々ここの様子を見に来ていて、やっぱり皆のお前に対しての態度が良くないと感じてたみたいだったから、両方とも禁止することにしたんだよ」(そうだったんだ)

 レックスの話を聞いて嬉しくなったのだが、(でも、それじゃあ······)さっきのレックスの話を思い出して少し寂しい気持ちにもなった。

 そんなボクの様子を見てレックスが「ベアーズ、ひょっとして何か勘違いしてないか?」(かんちがい?)

「さっき言ったのは、"僕とごく一部の人"の人が近付くのを禁止させられたんだよ」「······ガ?(え?)」レックスの話を聞き、意味があんまり理解出来てなくて呆気に取られていた。

「つまり、僕は今まで通り普通にここに来られるんだよ」(······そうなの! やったぁ!)ようやくレックスの言ってる事を理解し、喜んだのだった。

「やっぱり勘違いしてたな?」「そうみたいね」「ハハハハハッ。まぁ勘違いしても仕方ねぇだろ」「そうね。ベアーズちゃんにはちょっと分かりにくかったかもしれないわね」とみんな思い思いの事を言ってきた。

(そうそう! あ、じゃあごく一部って、ひょっとして)とボクはアッシュとアリスを交互に見つめた。

 ところが「あー残念だがベアーズ。ごく一部の人ってのは、俺もアリスも違うんだ」「ガ?(え?)」「私達もこれからはここに来る事が禁止させられたのよ」(え? そうなの!)とボクはレックスをまじまじと見つめた。

「そうみたい。僕もさっき2人から直接聞かされたんだ」(じゃあ、ごく一部って······だれ?)ボクが首を傾げて考えている様子を見てレックスが「まぁそのうち分かるんだから、今は気にしなくて良いんじゃない?」と言ってきた。

(······それもそっか)ボクもそう思って残っていた昼ごはんをまた食べだした。そして食べ終えたところでレックス達は帰って行った。

 その後もボクは(ごく一部のヒト······だれ何だろう?)とずっと考え続けたのだった。

 そして、その人物の正体は数日後に分かった······。



「はい、どうぞ」(いただきまーす!)ムシャムシャムシャ「いつも本当に美味しそうに食べるわね」(だってホントにおいしいんだもーん! メリッサ)と昼ごはんを持ってきてくれたメリッサを見上げた。

 そう、レックスの言っていたごく一部のヒトとはメリッサの事だった。

 そのメリッサはボクに昼ごはんを渡した後、ずっとボクのスペースの中を黙って見続けていた。

 そして昼ごはんを全部食べ終えたところで、「ガア!(メリッサ、ごはん食べ終えたよー!)」と伝えたら、メリッサもボクの方を見て「うん、ありがとう」と言って帰って行った。

 そんなメリッサの後ろ姿を見ながら(ごく一部のヒトがメリッサになったのも、何となく分かる気がする)と思った。


 アッシュやアリスの場合だとこれまで······。

「美味しいか? ベアーズ」「ガア!(うん!)」とか、「美味しい? ベアーズ」「ガア!(うん! おいしいよ)」なんて必ず会話をしていた。

 けどメリッサの場合はごはんを置いたらボクをずっと見ているか、スペースの中を見続けていてボクとは全然会話をしなかった。だから他のヒト達もうらやましがらなくてきっとお昼ごはんを持ってきてくれる事になったんだな······と納得した。

(それにしても······)ボクはふと周りを見渡した。誰もいないと、スペースの周りも結構広かったんだなぁと思った。

 その時あの木が目に入ったので、(久しぶりに)その木に近付いて登りだし、一番上の木の枝に着いた。

 そこから見える景色を眺めながらふと(そういえば、この学校ってどれぐらいの広さなんだろう?)と疑問に思ってしまった。(うーん······)そう思いながら木を降りだした。


そ・し・て、その時思った疑問によってこの後とんでもない事態を引き起こすのだった······。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈 
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
異世界に転生したフランカは公爵夫人として暮らしてきたが、前世から叶えたい夢があった。パティシエールになる。その夢を叶えようと夫である王国財務総括大臣ドミニクに相談するも答えはノー。夫婦らしい交流も、信頼もない中、三年の月日が近づき──フランカは賭に出る。白い結婚三年目で離縁できる条件を満たしていると迫り、夢を叶えられないのなら離縁すると宣言。そこから公爵家一同でフランカに考え直すように動き、ドミニクと話し合いの機会を得るのだがこの夫、山のように隠し事はあった。  無言で睨む夫だが、心の中は──。 【詰んだああああああああああ! もうチェックメイトじゃないか!? 情状酌量の余地はないと!? ああ、どうにかして侍女の準備を阻まなければ! いやそれでは根本的な解決にならない! だいたいなぜ後妻? そんな者はいないのに……。ど、どどどどどうしよう。いなくなるって聞いただけで悲しい。死にたい……うう】 4万文字ぐらいの中編になります。 ※小説なろう、エブリスタに記載してます

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...