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森での出来事

第11話 レックスとのお別れ

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 レックス達がトロル襲撃を防ぐことが出来た事を喜んで騒いだ次の日。ボクはレックス達の様子を見に行こうと思ってレックス達のムラへ向かおうとした。

 しかしその時、ピクッ!(あれ? このにおい······)ムラの方向とは違う······いつもの川の方からレックスの匂いが漂ってきたのだ。

(レックス、きょうもかわにきてるんだ!)と思い川に向かった。川に着いたらやっぱりレックスが座っていた。······1人で。

 そんなことはお構いなしにボクは(レックスー!)レックスに駆け寄り、レックスもボクに気付いて「あ、ベアーズ」と声をかけてくれた。

 そしてボクがレックスに飛びかかり、レックスもボクを優しく受け止めてくれた。(レックス!)ボクは嬉しさで興奮しながらレックスを見ていると、レックスは突然「ベアーズ。実は今日は君にお別れを伝えるために来たんだ」と言ってきた。

(おわかれ? おわかれってたしか、はなればなれになること······えー!?)ボクがもっと小さかった時、父ちゃんからたまたま目撃した他の生き物が悲しんでいる様子を見て、「あれは恐らく親しかった者とお別れ······離れ離れになって一緒にいられなくなり、その寂しさや悲しくて泣いてるんだよ」「ふーん」と教えてもらった事があった。

 その事を思い出して(レ、レックスといっしょにいられなくなるの!? どうして?)とボクは驚きレックスの手の中でソワソワしだした。

 するとレックスは「ベアーズ。色々君にも分かるように話すから、とりあえず落ち着いて」と言われ、(······わかった)ボクも大人しくなった。「ありがとう」そう言ってレックスはボクを抱いて座った。


「あのねベアーズ。前にアッシュ兄ちゃんとここで魚釣りをしていた時、トロルが村を襲う話をしていたこと覚えてる?」コク(うん。おぼえてる)と頷いた。

「実は以前に僕は一度本当にトロルが村を襲う、というか襲われた村の光景を見た事があるんだ」(えっ!?)

「その時は本当に僕と兄ちゃん、アリスの3人以外は皆トロルに殺されたんだ」(そうだったの)そういえば、あの時そう言ってたっけ。

「それからその事を調べに王都って言う、この森から遠く離れた多くのヒトが住んでいる所の中にある騎士団って組織の人達がやって来て、僕達はその人達に王都へ連れていかれたんだ」(そうなんだ)

「それで王都に連れていかれてその中の孤児院って建物で僕達は暮らす事となったんだ」(うんうん)

「その孤児院で暮らしだして少し経った頃、兄ちゃんが突然騎士団に自分も入りたくなったから、その騎士団に入るために色々体を鍛えたり知識を身に付けるための養成学校って所に入りたいって言いだしたんだ」(アッシュが?)

「それで僕やアリスにも養成学校に入って騎士団に入ろうって誘ってきて、僕もアリスもそうする事にして兄ちゃんより1年遅く養成学校に入ったんだ」(レックスやアリスもそうしたんだ)

「それで3人ともそれぞれ3年間そこで学んで無事に騎士団へ、僕とアリスは兄ちゃんより1年遅れで入ったんだ」(そうだったんだ)

「それで僕とアリスが騎士団に入ってすぐの頃、僕達ヒト族とエルフ族やドワーフ族に亜人族、他にも竜族や魔人族とか様々な人達と一緒になって多くの魔物達と、その魔物を率いている魔王って呼ばれている奴を倒すための大きな戦いが起こるんだ」(おおきなたたかい? ひょっとして、このまえのたたかいのようなもの?)と尋ねるようにレックスを見上げた。

 ボクの意図を理解して「うん。この間の僕達とトロルとの戦いのようなものだよ」と答えてくれた(そっか)。

「それで、その戦いの最中に僕は同じヒト族の誰かによって······体を刺されて」(えっ?)「殺されて、死んじゃったんだよ」(ころされ······しんじゃ······え、えーーー!?)

 レックスから聞いた殺されたとか死んだという言葉の意味はボクも知っていたので、とても驚きながら(じゃ、じゃあ、めのまえにいるレックスって······だれ?)と頭の中が混乱しだした。

 その事をレックスも認識して「ベアーズ、混乱してるかもしれないけど、もう少しだけ落ち着いて僕の話を聞いて」と言われ(············う、うん)少し時間が掛かったけど、ボクも頭の中を落ち着かせることが出来た。

「ありがとう。それで死んだ後なんだけど······」(うんうん)「僕の前に神様の使いって名乗った人が声を掛けてきて」(かみさまのつかい?)

「その人が言うには、僕がその時死ぬ事は神様も予期してなかった、つまり思ってもいなかったみたいなんだ」(かみさまもしらなかったの!?)

「しかも、僕が死んだ事で魔王軍との決戦の後、世界に大変な事が起こって皆が悲しい思いをする事になるんだって教えてもらったんだ」(そ、そうなの!?)

「それで、その大変な事を起こさせないようにするために······僕に赤ん坊の時から人生をやり直す機会を与えてくれたんだよ」(じんせいを、やりなおすきかい?)さすがにレックスの言っていることが分からず、首を傾げたのだった。

 そのボクの反応を見てレックスも「じゃあベアーズ。君もこれまで生きてきて色々楽しい思い出も悲しい思い出もあるよね?」コク(うん。あるよ)と頷いた。

「僕達が最初に出会った君が怪我をした出来事も覚えてるよね?」コクコク!(もちろん!)

「じゃあ、あの時は君は僕達の存在を知らなかったから警戒してたけど、もし今のベアーズの状態であの時と同じ場面に遭遇したとなったら、どういう反応を見せる?」とレックスに聞かれたので、(うーん。もちろんレックスたちがケガをなおしてくれるとわかっているから、レックスたちがくるのをま······え?)

 レックスに聞かれたことを考えた後に自分がとんでもない事を思ったことに驚き、(ま、まさか?)レックスがさっき話してくれた事をようやく理解したことで、ボクは目を大きく見開き目玉を丸くさせながらレックスを見たのだった。

「そう、まさに今ベアーズが僕に聞かれて考えた事を、ボクは生まれた時からずっとしてきたんだよ」(えーーーーーっ!?)その時の驚いた様子は今日の中ではもちろん、今までで一番の凄さだった······。
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