執着系王子にはもううんざりです

１章 金輪際人を見た目で判断しません

誤解

　朝食の広間に到着すると、あのリオ様が長広い机の一番右奥に座られていた。私の席はどうやらその向かいらしい。

「やあ、朝食を一緒に食べてくれて嬉しいよ、ルミネ。」
「あら、私には構わなくて結構ですわよ。リオ様のお顔のみを拝めたかっただけですので。」
「・・・・。」

　どうされたのかしら、またビミョーな顔になったわ。そういえば、初めて名前を呼ばれた気がしないでもないわね、やっと覚えられたのかしら、私の名前。

　朝食の用意は既にされており、パンとトッピング用の卵やジャム、そしてサラダとスープが並んでいた。
　
　席に座り、無言で朝食を頬張っていると、リオ様が恐る恐る話しかけてこられた。

「あー、ところで昨日のことなんだが。」
「.....ラミラお姉様とのことですわよね、私のことはお気にせずに。どうぞ、いつでも婚約破棄されて構いませんわよ。」
「やっぱり君は勘違いをしているね。僕とラミラはそんな関係じゃなくって、」
「では何故、お姉様と何回も密会を重ね、あわよくばお姉様の部屋に無断で入ったというのです？」
「そ、それはだね、説明すると長くなるというか言いにくいというかなんというか。」

　言いにくいこと・・・・それはもう、確定ではありませんか！

「大丈夫ですわ、私は無理に聞き出そうなんてことは致しません。ですが、お姉様を不安にさせる行為だけは許しませんわよ。たとえ推しといえど、私の大切な方を傷つける者は───。」

　どうしましょう、格好をつけたけれど上手いセリフが思い付かないわ！

「えっと、うーんと、、成敗！そう、成敗致しますわよ～！」

　ふう、なんとかキマったわ。
　と、前をみるとリオ様が俯いて小刻みに震えていた。

「リオ様？どうされまして？」
「いや・・・・ククッなんでもないよ。君って本当に──変わらないね。」

　はい？リオ様とはこの前知り合ったばかりの筈よね、頭までおかしくなってしまったのかしら。

「やっぱり覚えてないか。」

　リオ様がまっすぐこちらを見つめてくる。訴えかけてくるようなそんな瞳だ。そんなこと仰られても、分からないわ。

「ごめんなさい、覚えてないわ。それか、人違いじゃないかしら。」

　だって私、隣国には滅多に行かないし。今まで接点なんて、なかったはずよ。

「分かった。残念だけど、また君に覚えて貰えるよう、僕が努力すればいい話だ。」

　どこかで聞いたセリフのような気がするけれど、まあいいわ。ってそんなことよりも。

「婚約破棄して下さいませ。」
「ダメ。」

な、なぜなんですの～！？！？！？