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Vegetables―スピンオフ―
St. Valentine's Day 4
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美晴に対しては気が乗らない風を装いながらも、実のところ渡りに船的な安心感が生まれた。これで悩んでいたことがちょっとは解決した、的な……。
水曜日、不本意ながらも使い慣れたカツラをかぶり、仕事帰りの美晴と連れ立って近所の少し大きなスーパーへと向かった。
別に悪いことをしてたわけじゃない――でも、どこかが悪かったんだろう。多分おれの選択が間違ってたんだ。
頭の中をぐるぐると、ここ数日の事象が巡っている。
機械的に手を動かしながら、並んで立つ美晴に逐一指示を出してはいたけど実のところ全く頭は働いていなかった。
「あれ? 千章、それ――」
美晴が不思議そうにおれの手元を覗き込んだ。美晴に教えたものとはあきらかに違う材料の配分――。
「あ……ついでだから世話になったやつにやろうと思って」
理由としては苦しいかな……ってか、やろうと思ってた相手とまさに気まずくなってるんだけど――。
環はおれと律の関係を知っている。けど環と付き合ってる美晴が知ってるのかどうかは怖くて聞けずにいるんだ。環は面白がって言いふらすタイプじゃないけど、美晴は結構聡いほうだし環もうっかりしたところがある。
美晴が何か言いたそうにおれの顔を見、でも何も言わずに作業に戻った。それは美晴にしてはとてつもなく珍しいことだったんだけど、そのときのおれには追求する余裕すらなかったんだ。
出来上がったチョコレートをバットに並べて冷蔵庫に仕舞うと、おれは美晴からも逃げるように自室へと戻った。
本当ならおれが休みの今日は一緒に過ごしてるはずだったけど、多分無理だしおれも今はまだ会う勇気がない。
ぐるぐると脳内を駆け巡る厄介者は今の自分では到底追い払えそうになかった。
水曜日、不本意ながらも使い慣れたカツラをかぶり、仕事帰りの美晴と連れ立って近所の少し大きなスーパーへと向かった。
別に悪いことをしてたわけじゃない――でも、どこかが悪かったんだろう。多分おれの選択が間違ってたんだ。
頭の中をぐるぐると、ここ数日の事象が巡っている。
機械的に手を動かしながら、並んで立つ美晴に逐一指示を出してはいたけど実のところ全く頭は働いていなかった。
「あれ? 千章、それ――」
美晴が不思議そうにおれの手元を覗き込んだ。美晴に教えたものとはあきらかに違う材料の配分――。
「あ……ついでだから世話になったやつにやろうと思って」
理由としては苦しいかな……ってか、やろうと思ってた相手とまさに気まずくなってるんだけど――。
環はおれと律の関係を知っている。けど環と付き合ってる美晴が知ってるのかどうかは怖くて聞けずにいるんだ。環は面白がって言いふらすタイプじゃないけど、美晴は結構聡いほうだし環もうっかりしたところがある。
美晴が何か言いたそうにおれの顔を見、でも何も言わずに作業に戻った。それは美晴にしてはとてつもなく珍しいことだったんだけど、そのときのおれには追求する余裕すらなかったんだ。
出来上がったチョコレートをバットに並べて冷蔵庫に仕舞うと、おれは美晴からも逃げるように自室へと戻った。
本当ならおれが休みの今日は一緒に過ごしてるはずだったけど、多分無理だしおれも今はまだ会う勇気がない。
ぐるぐると脳内を駆け巡る厄介者は今の自分では到底追い払えそうになかった。
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