Vegetables

二一

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Vegetables―スピンオフ―

あいつらの日常 3

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「さすがにこの時間はキツイなぁ」

「ホントだねぇ。さすがに最後はキツかった」

 並み盛りを一応完食して、緑茶のペットボトルを開けた。0時過ぎての牛丼は結構胃にダメージだ。

 十八、十九の頃は全然平気だったんだけどなぁ。

 防波堤の車輪止めに腰かけてたら、夜風が少し冷たくなってきた。かと言って拓の車は飲食&タバコが厳禁なんだ。タバコはどっちも吸わないから関係ないけど。

「あのさぁ、さとちゃん」

「んー?」

「これっていつもと変わらなくない?」

「なにが?」

「遊んで、ドライブして、食べて、しゃべってって昔からずっとやってるよ?」

 拓が不思議そうにオレの顔を見ている。何を言うつもりなんだろかと、ちょっとドキドキする。

「付き合ってるならさぁ、もっと特別感っていうか、ない?」

 うわぁ、爆弾投下!

 拓はのほほんとしてるようで結構直球だ。

 そりゃあ、オレだって特別感とやらが、ものすごい欲しいんだけど、正直いってどうしていいかわからないんだ。

 具体的に言うと女と付き合ったときみたいに、拓にもしていいのかどうかが掴めない。

「拓……? その、特別感って例えば?」

 恐る恐る拓を覗きこむ。聞くのが怖いような気もするけど。

「そりゃぁ、ほら。エッチなこととかだよ」

 そんなアッサリ……!! ってかそういうことしてもいいのかよ?

 今、オレは赤くなってる。確実に真っ赤だ。夜で良かった。
 っていうか、もしかして拓も照れてないか?顔が若干海側にそらされている。

「その、拓はいいのかよ?」

「いいってなにが?」

「オレはむっちゃしたいけどな。ぶっちゃけ、そのキスとか……その先も」

 言いながら思わず空を仰いでしまった。こうういうのは、まともに言葉にするとかなり恥ずかしい。

 でも、付き合いの長い拓には回りくどい駆け引きなんて今さら通用しないんだよなぁ。

「だって、お試しでって言ったんだから、そこも含めて試してみなくちゃダメなんじゃない?」

 拓、やっぱすげぇ好きだわ。嫌われたらいやとか言ってたらどうしようもないもんな。

 なにせお試し期間なんだから。

 よし、覚悟は決めた。

「……行くか?」

「うん」

「うわっ、オレまじで緊張する」

「さとちゃんが?」

「おぉ、童貞捨てたとき以来」

「それはむちゃくちゃ久しぶりだねぇ」

 そういってオレらは二人で大爆笑してしまった。

 なんかイタズラ計画練ってるみたいな雰囲気だけど、ま、いっか。

 決まれば行動が早いのは昔からだ。うじうじ悩むのはオレも拓も性に合わない。

「どこにする?」

「インターの付近でいいんじゃないかな?」

 高速のインターチェンジ付近には大抵ラブホが固まっている。なぜなのかは分からないけれど。

 とりあえず、帰りのことも考えつつ、高速の乗り口付近へと目星をつけた。

 金曜の0時をまわった今は、部屋が空いてるかどうか賭けになるけどな。

 別に部屋なんてどこも大して変わらないし、手近に「空室」ランプのあるひとつに車を入れた。あ、駐車場が平面なのも条件なんだ。……次があればオレの車で来よう。

 次があればって辺りが悲しいよな。

 とりあえず、特別でもなく底辺でもなく、ごく普通の部屋が空いていた。

 オレはもちろん、拓だってラブホごときでは緊張することもない(拓はそのかわいらしい外見から、年上の女にすげぇモテる)

「さとちゃんとラブホってさすがに初めてだねぇ」

 拓がしみじみ呟いた。って当たり前だろうが……。

 部屋に入るとさすがに緊張感が襲ってきた。どうするよ?

 シャワーから? いや、でもどっちも家で済ませてきてるよな。

 いきなり押し倒してもいいもんか?
 
 いや、そもそもオレが押し倒してもいいのか?

 ってか女と来たときって、オレどうしてたっけ? 思い出せねぇ……。

 意味もなくベッドサイドのご利用説明書なんてのをめくってしまった。動揺しすぎだろ、オレ。

「さとちゃん、さすがにぼくも緊張してきた」

「拓、まじでいいのか?」

 心配になって聞いてしまう。

「それはOK。でも、さとちゃん、リードして……」

 拓が両手を合わせて上目遣いでお願いしてきた。ってか、そのセリフやばい、きた……どこにって、その下半身に……。

 オレはゆっくりと拓の頬に手を触れて、そのまま唇を合わせた。

 ハッキリいって拓とのキスは初めてじゃない。付き合うってなってからも何回かキスしたし、もっと言えば学生時代に友人同士のおふざけでしたこともある。

 けど、今日のキスは特別だ。だって、その先に繋がるんだし……。
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