Vegetables

二一

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Vegetablesー3ー

正月休み 2日目 2

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「律? おかえり。お客さん来てるぞ」

 ちょうど食材を油から上げていたので、振り返らずに声をかける。あれ? いつものように隣に来る気配がなくて、不審思いに振り返ると――。

「あ、木瀬さん……! すみません間違えました」

「いえいえ、千章くんだったっけ。料理うまいんだね」

「いえ、俺料理屋で働いてるんで……」

「どこの?」

「由乃屋って言う商店街の」

「由乃屋って旅館の?」

「旅館のほうはやってなくて、今は料理屋だけです」

「お昼、俺も一緒に食べてもいい?」

「大丈夫だと思います」

 そうしていると、今度は本物の律が帰ってきた。木瀬さんが「よお」と片手を上げて笑った。なんてない仕草だけど、ああいう男がすると様になるよな。

「……悠理、来てたのか」

「久しぶりにツルばあちゃんに会いたくてね」

 それだけのやり取りで律は洗面所へと消えていった。

「相変わらず愛想のないやつ」

 木瀬さんが苦笑いしながら呟いた。律は昔からあんなだったんだ。

 この日の食卓はとても賑やかだった。華やかだったともいうかな。木瀬さんは話を盛り上げるのが上手くて、女性陣は笑いが絶えない。盛り上げるといっても智のような軽いノリではなくて、落ち着いているんだけど話術で引き込む――って言うのかな? なんとなくだけど客商売をしてる人かなと思った。

 律は相変わらず無言で黙々と食べていた。久しぶりなんだし、積もる話とかないのだろうか。

 俺は話についていけないし、聞き役に徹して、ツルさんの介助をしながらちょこちょことつまんでいた。揚げ具合はバッチリだ。

「千章くんの料理、すごいね」

 不意に木瀬さんから話を振られた。アウェイな雰囲気になんとなく気後れしてしまったのもあって、本音はそっとしておいてほしかった。そうはいっても仕方がないので、営業用の笑顔を作って礼を言っておく。

「そうでしょう? 千章くんは去年もしばらく夏子さんの代わりで来てくれたんだけど、本当料理がおいしいのよ。由乃屋さんに行きだしてから更に上手になったみたい」

 幸子さんが話をつなげる。褒めてくれるのはうれしいけど、そのまま流してほしかった。

「ほんになぁ。最初は女の子の格好だったんで、こりゃうちに嫁にきてくれるんかと思ったもんだがのぉ」

「……っ! ツルさん!」

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