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Vegetablesー2ー
嫉妬と葛藤 4
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「あれ? 今日、智は?」
金曜日、店内の客が徐々に減り始めた午後八時半。環と拓(たく)が連れ立って訪れた。珍しい組み合わせだ。
俺たち四人は高校で知り合った気の合う仲間ではあるんだけど、四人で集まる以外は、大抵は俺と環、智と拓の組み合わせが多い。
二人とも仕事帰りなんだろう、環はビジネススーツ、拓はつなぎの作業着姿だ。戸川拓は自動車の整備工場で整備士として働いている。四人の中で唯一俺より背が低く、茶色がかった猫ッ毛のジャニーズにいてもおかしくないような整った顔立ちだ。きっと女装したら、俺よりもしっくりくると思う。
そのくせ整備士なんて肉体系の仕事で、運動神経もいいし体力もある。つまり俺が勝てているのは背だけってことなんだけどな。
あ、環こと松川環は、頭脳派で運動のほうは俺とどっこいどっこいだ。銀フレームのメガネが見るからに頭がよさそうに見えし実際かなりかしこい。
今日来ていない智、先月の極楽リゾートの件では世話になった間宮智は、派手な外見にお調子者といった風で、ムードメーカー的な存在だ。お調子者だけど、誰とでもうまく合わせられる才能があって、あの極楽リゾートですらいまだうまく勤め続けている。俺なんか一ヶ月も続かなかったのに。
「あきちゃんさー、最近さとちゃんとしゃべったー?」
これは拓、こいつはなぜか全員を愛称で呼ぶ。いい歳してちょっと恥ずかしいが、拓が言うと普通に感じるから不思議だ。
「先々月に極楽の件で電話したのが最後かも。拓のほうがしょっちゅう会ってるんだろ?」
「うーん、そうなんだけどね……」
拓はどうも煮え切らないような感じだ。俺は環に「どうしたんだ」と目で尋ねる。
「様子がおかしいんだそうだ」
「どんな風に?」
「そうなんだよ! ホントおかしいんだって。あきちゃん聞いてよ!」
拓がカウンターに身を乗り出して詰め寄ってきた。さっきから聞いてるって。俺はとにかく落ち着けと手で拓を押し戻した。
「先週さぁ、さとちゃんに誘われて井南農協の女の子たちと合コンしたんだよねー」
合コンという単語に俺は一瞬ビクッとなる。いや、もうあれは済んだ話だ。ちょっとトラウマになっているのかも知れない。
「まぁ、智はしょっちゅう合コンやってるだろ」
「そうなんだけどね。それが様子がおかしいんだって!」
「だからどうおかしいんだよ?」
拓がどう言おうか迷ったように、環を見て、ゆっくりとしゃべり始めた。
「だってさ、女の子の連絡先も聞かずに、なんかすごいしゃべらなくて、そんでもって一次会で帰るんだよ?」
これで不審がられるって時点で、智のキャラがよくわかる。
「その日、調子悪かったとか?」
「ここ三回ともずっとだよ!」
「おまえら……どんだけ合コンしてんだよ」
環も呆れたように頷いている。智は見た目も今風でオシャレだし、彼女も途切れたことがないようなやつだ。そして、女の子には無条件で優しく、とにかく場を盛り上げようとする。
「確かに変かもな……。で?」
「ぼくが聞いてもさとちゃん「なんでもない」って言うだけなんだよ。かといって、たまちゃんだと警戒しそうだし、だからあきちゃんから探りいれてもらえないかなーと思って」
拓は四人の中じゃ多分いちばん優しい。誰かが体調でも崩すと、真っ先に見舞いに行こうとするのは拓だ。
「なんかねー元気なさそうで気になるんだよ。ね? あきちゃん、お願い」
両手を合わせたお願いポーズがここまで様になる男も珍しいよな。まぁ、なにはともあれ、別に断る理由もないし、俺は深く考えることなく了解した。
拓はホッとしたように笑って、ここぞとばかりに食事を始めた。こいつ俺より小柄なくせに食べる量はすごい。これを言うと拓には「重さが違う」と反論される。どうせ俺は貧弱だ。
「あいかわらずあきちゃんのごはんはおいしいよね~」
「夜のは社長が作ってるけどな」
「あっ……」
「今度は昼に来いよ」
「あきちゃんのギョーザが食べたい」
「……さすがにココでは無理」
そんな話をしながら、拓は満腹になって帰っていった。環とは自宅の方角が同じなので少し待ってもらって一緒に帰ることにする。
やっぱり車あるっていいよなぁ。俺もがんばろう。
金曜日、店内の客が徐々に減り始めた午後八時半。環と拓(たく)が連れ立って訪れた。珍しい組み合わせだ。
俺たち四人は高校で知り合った気の合う仲間ではあるんだけど、四人で集まる以外は、大抵は俺と環、智と拓の組み合わせが多い。
二人とも仕事帰りなんだろう、環はビジネススーツ、拓はつなぎの作業着姿だ。戸川拓は自動車の整備工場で整備士として働いている。四人の中で唯一俺より背が低く、茶色がかった猫ッ毛のジャニーズにいてもおかしくないような整った顔立ちだ。きっと女装したら、俺よりもしっくりくると思う。
そのくせ整備士なんて肉体系の仕事で、運動神経もいいし体力もある。つまり俺が勝てているのは背だけってことなんだけどな。
あ、環こと松川環は、頭脳派で運動のほうは俺とどっこいどっこいだ。銀フレームのメガネが見るからに頭がよさそうに見えし実際かなりかしこい。
今日来ていない智、先月の極楽リゾートの件では世話になった間宮智は、派手な外見にお調子者といった風で、ムードメーカー的な存在だ。お調子者だけど、誰とでもうまく合わせられる才能があって、あの極楽リゾートですらいまだうまく勤め続けている。俺なんか一ヶ月も続かなかったのに。
「あきちゃんさー、最近さとちゃんとしゃべったー?」
これは拓、こいつはなぜか全員を愛称で呼ぶ。いい歳してちょっと恥ずかしいが、拓が言うと普通に感じるから不思議だ。
「先々月に極楽の件で電話したのが最後かも。拓のほうがしょっちゅう会ってるんだろ?」
「うーん、そうなんだけどね……」
拓はどうも煮え切らないような感じだ。俺は環に「どうしたんだ」と目で尋ねる。
「様子がおかしいんだそうだ」
「どんな風に?」
「そうなんだよ! ホントおかしいんだって。あきちゃん聞いてよ!」
拓がカウンターに身を乗り出して詰め寄ってきた。さっきから聞いてるって。俺はとにかく落ち着けと手で拓を押し戻した。
「先週さぁ、さとちゃんに誘われて井南農協の女の子たちと合コンしたんだよねー」
合コンという単語に俺は一瞬ビクッとなる。いや、もうあれは済んだ話だ。ちょっとトラウマになっているのかも知れない。
「まぁ、智はしょっちゅう合コンやってるだろ」
「そうなんだけどね。それが様子がおかしいんだって!」
「だからどうおかしいんだよ?」
拓がどう言おうか迷ったように、環を見て、ゆっくりとしゃべり始めた。
「だってさ、女の子の連絡先も聞かずに、なんかすごいしゃべらなくて、そんでもって一次会で帰るんだよ?」
これで不審がられるって時点で、智のキャラがよくわかる。
「その日、調子悪かったとか?」
「ここ三回ともずっとだよ!」
「おまえら……どんだけ合コンしてんだよ」
環も呆れたように頷いている。智は見た目も今風でオシャレだし、彼女も途切れたことがないようなやつだ。そして、女の子には無条件で優しく、とにかく場を盛り上げようとする。
「確かに変かもな……。で?」
「ぼくが聞いてもさとちゃん「なんでもない」って言うだけなんだよ。かといって、たまちゃんだと警戒しそうだし、だからあきちゃんから探りいれてもらえないかなーと思って」
拓は四人の中じゃ多分いちばん優しい。誰かが体調でも崩すと、真っ先に見舞いに行こうとするのは拓だ。
「なんかねー元気なさそうで気になるんだよ。ね? あきちゃん、お願い」
両手を合わせたお願いポーズがここまで様になる男も珍しいよな。まぁ、なにはともあれ、別に断る理由もないし、俺は深く考えることなく了解した。
拓はホッとしたように笑って、ここぞとばかりに食事を始めた。こいつ俺より小柄なくせに食べる量はすごい。これを言うと拓には「重さが違う」と反論される。どうせ俺は貧弱だ。
「あいかわらずあきちゃんのごはんはおいしいよね~」
「夜のは社長が作ってるけどな」
「あっ……」
「今度は昼に来いよ」
「あきちゃんのギョーザが食べたい」
「……さすがにココでは無理」
そんな話をしながら、拓は満腹になって帰っていった。環とは自宅の方角が同じなので少し待ってもらって一緒に帰ることにする。
やっぱり車あるっていいよなぁ。俺もがんばろう。
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