Vegetables

二一

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Vegetablesー2ー

祝! 就職 7

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「千章!」

 家に向かって帰ろうと歩き出した瞬間、背後から呼ばれた。

「た……環? ……今帰りか?」

 もしかして見られてたかも! 俺は動揺を隠そうと必死で平静を装うとしたけど、付き合いの長い環には当然のように通用しなかった。

「今のだれだ?」

 やっぱり見られてる――! 挙動不審に目が泳いでしまう。

「千章」

「環、なんでもない。なんでもないから、聞くな……」

 俺って本当情けないよな――。

「じゃあ、晴ちゃんにでも聞くぞ」

「なんで、ここで美晴が出てくるんだよ!?」

「おまえが一番勝てない相手だからだろう」

「卑怯もん……」

 俺は恨めしげに環を睨んだ。環は全く動じなかったけど。

 言ったら、環、引くかな。

「――今、付き合ってるやつ……」

「は?」

 ここまで崩れた環の顔って久しぶりに見たかも。まぁ、俺が言っといてなんだけど衝撃だろうよ――。

「……恋人ってことでいいか?」

「だから、そう言ってるし。さっきキスしてるとこ見たんだろ?」

「見たけど―― いや、その……なんていうか」

 見たんなら、そこは動揺するところじゃないだろうに。

「…………」

 とりあえず環が落ち着くのを待ってやる。

「……千章、本気なのか?」

 急に真顔になった環が俺をまっすぐに見た。

「本気だっつったら?」

「そっか―― 本気か……それならいいけど」

「いいけどって―― なんだそれ?」

「だって、千章が本気で付き合うって多分初めてだろ?」

「な……なんで……っ?」

「そんなもん、見てたらわかるって。今まで浮気されようが振られようが、落ち込みもしないんだからさ」

 俺がこの間やっと気づいたことを、環はずっと前から気づいてたってことか? なんで言ってくれなかったんだろうな。まぁあのころに言われても、実感わかなかったか――。

「気持ち悪ぃとか思わねぇの……?」

「ああ――それは……」

 環の目が虚空を泳いだ。そして表情が僅かに凍り付いていく。なんの想像をしてやがるんだ。

「っ想像すんなっ!」

「悪かった」

「あまつさえ、あやまんな!」

 なにを想像されたか、こっちが恥ずかしくなってしまう。

「智とかにはばれないようにしろよ? いいように遊ばれるぞ」

「わかってるよ」

「じゃあな、また店のほうにも食べに行く」

「あ、ああ……またな」

 そういって環はあっさりと帰っていった。いや、こんなに簡単に済んでいいのか?

 その、もっと驚いたり、引いたり――いや、幼馴染に引かれたらさすがに落ち込むけど。さすが環だよな。

 なんて感心してる俺をよそに、後から聞いたところによると、環は自宅に帰ってから、あまりにもの衝撃に悶絶していたのだとか――。

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