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Vegetablesー2ー
祝! 就職 7
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「千章!」
家に向かって帰ろうと歩き出した瞬間、背後から呼ばれた。
「た……環? ……今帰りか?」
もしかして見られてたかも! 俺は動揺を隠そうと必死で平静を装うとしたけど、付き合いの長い環には当然のように通用しなかった。
「今のだれだ?」
やっぱり見られてる――! 挙動不審に目が泳いでしまう。
「千章」
「環、なんでもない。なんでもないから、聞くな……」
俺って本当情けないよな――。
「じゃあ、晴ちゃんにでも聞くぞ」
「なんで、ここで美晴が出てくるんだよ!?」
「おまえが一番勝てない相手だからだろう」
「卑怯もん……」
俺は恨めしげに環を睨んだ。環は全く動じなかったけど。
言ったら、環、引くかな。
「――今、付き合ってるやつ……」
「は?」
ここまで崩れた環の顔って久しぶりに見たかも。まぁ、俺が言っといてなんだけど衝撃だろうよ――。
「……恋人ってことでいいか?」
「だから、そう言ってるし。さっきキスしてるとこ見たんだろ?」
「見たけど―― いや、その……なんていうか」
見たんなら、そこは動揺するところじゃないだろうに。
「…………」
とりあえず環が落ち着くのを待ってやる。
「……千章、本気なのか?」
急に真顔になった環が俺をまっすぐに見た。
「本気だっつったら?」
「そっか―― 本気か……それならいいけど」
「いいけどって―― なんだそれ?」
「だって、千章が本気で付き合うって多分初めてだろ?」
「な……なんで……っ?」
「そんなもん、見てたらわかるって。今まで浮気されようが振られようが、落ち込みもしないんだからさ」
俺がこの間やっと気づいたことを、環はずっと前から気づいてたってことか? なんで言ってくれなかったんだろうな。まぁあのころに言われても、実感わかなかったか――。
「気持ち悪ぃとか思わねぇの……?」
「ああ――それは……」
環の目が虚空を泳いだ。そして表情が僅かに凍り付いていく。なんの想像をしてやがるんだ。
「っ想像すんなっ!」
「悪かった」
「あまつさえ、あやまんな!」
なにを想像されたか、こっちが恥ずかしくなってしまう。
「智とかにはばれないようにしろよ? いいように遊ばれるぞ」
「わかってるよ」
「じゃあな、また店のほうにも食べに行く」
「あ、ああ……またな」
そういって環はあっさりと帰っていった。いや、こんなに簡単に済んでいいのか?
その、もっと驚いたり、引いたり――いや、幼馴染に引かれたらさすがに落ち込むけど。さすが環だよな。
なんて感心してる俺をよそに、後から聞いたところによると、環は自宅に帰ってから、あまりにもの衝撃に悶絶していたのだとか――。
家に向かって帰ろうと歩き出した瞬間、背後から呼ばれた。
「た……環? ……今帰りか?」
もしかして見られてたかも! 俺は動揺を隠そうと必死で平静を装うとしたけど、付き合いの長い環には当然のように通用しなかった。
「今のだれだ?」
やっぱり見られてる――! 挙動不審に目が泳いでしまう。
「千章」
「環、なんでもない。なんでもないから、聞くな……」
俺って本当情けないよな――。
「じゃあ、晴ちゃんにでも聞くぞ」
「なんで、ここで美晴が出てくるんだよ!?」
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俺は恨めしげに環を睨んだ。環は全く動じなかったけど。
言ったら、環、引くかな。
「――今、付き合ってるやつ……」
「は?」
ここまで崩れた環の顔って久しぶりに見たかも。まぁ、俺が言っといてなんだけど衝撃だろうよ――。
「……恋人ってことでいいか?」
「だから、そう言ってるし。さっきキスしてるとこ見たんだろ?」
「見たけど―― いや、その……なんていうか」
見たんなら、そこは動揺するところじゃないだろうに。
「…………」
とりあえず環が落ち着くのを待ってやる。
「……千章、本気なのか?」
急に真顔になった環が俺をまっすぐに見た。
「本気だっつったら?」
「そっか―― 本気か……それならいいけど」
「いいけどって―― なんだそれ?」
「だって、千章が本気で付き合うって多分初めてだろ?」
「な……なんで……っ?」
「そんなもん、見てたらわかるって。今まで浮気されようが振られようが、落ち込みもしないんだからさ」
俺がこの間やっと気づいたことを、環はずっと前から気づいてたってことか? なんで言ってくれなかったんだろうな。まぁあのころに言われても、実感わかなかったか――。
「気持ち悪ぃとか思わねぇの……?」
「ああ――それは……」
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「っ想像すんなっ!」
「悪かった」
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「智とかにはばれないようにしろよ? いいように遊ばれるぞ」
「わかってるよ」
「じゃあな、また店のほうにも食べに行く」
「あ、ああ……またな」
そういって環はあっさりと帰っていった。いや、こんなに簡単に済んでいいのか?
その、もっと驚いたり、引いたり――いや、幼馴染に引かれたらさすがに落ち込むけど。さすが環だよな。
なんて感心してる俺をよそに、後から聞いたところによると、環は自宅に帰ってから、あまりにもの衝撃に悶絶していたのだとか――。
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