Vegetables

二一

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Vegetablesー2ー

祝! 就職 6

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 あれからツルさんのところには母がずっと行っている。なにかあれば代わるとは言ってるんだけど、なぜか母が行けなくても俺には声がかからない。

 多分幸子さんが俺に気を遣ってくれてるんだろうな。もう手遅れなんだけど――。かといってばらす勇気は俺にはないし、律も言うつもりはないみたいだ。

 おやじさんに「ごちそうさま」とあいさつをして、店を後にする。

 いつものように自宅近くのコンビニまで律に送ってもらった。家の前まで送ってもらうのはまだ抵抗がある。

「千章、キス」

「律、最近なんか俺からばっかりキスさせようとしてないか?」

「して欲しいのか?」

「あ、そういうわけじゃ……ないこともないけど……」

 おかしな日本語になってしまった。案の定、律に「どっちなんだ」と呆れられてしまう。して欲しいなんて言いづらいじゃないか。

「千章、ちゃんと言葉にしろ。おまえはすぐごまかそうとする」

 痛いところを衝かれてしまった。気まずくてつい目をそらしてしまう。これじゃダメなんだろうな、俺。

「あのさ―― 今日は律にキスして欲しい……ダメか?」

 さすがに真正面から堂々とは言えなくて、俯きながら言ってみた。言ってから上目遣いで律を見る。

 ドキッとした―― だって、律がむちゃくちゃ優しい顔で俺のこと見てたから――。

 そのまま頬を引き寄せられゆっくりと唇が重なった。いつもの律とは少し違って、やわらかく静かなキス。溶けてしまいそうだ。

 ゆっくり唇が離れていく―― もうちょっと、キスしたい。

「……律……もっと―― っあっ……なんでもないっ!」

 ついうっかり心の声が口に出てしまった。恥ずかしすぎる。

「千章、そんなカワイイ顔すんな。襲いたくなる」

 そういって律は、リクエスト通り? もう一度キスをしてくれたんだ。

「続きは今度――な?」

 ゆっくり離れながら耳元で囁かれた。俺が耳元でしゃべられると弱いのを知ってて、律はいつもわざと耳元でしゃべる。

「また、店にも食いにいく」

「ああ、おやすみ」

 そういって俺は律の車を見送った。さて、明日は忙しくなりそうだし、帰って早く寝よ。

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