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Vegetablesー2ー
祝! 就職 5
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「昼メニューやるんだってな」
「社長から聞いたのか?」
最初から大役を任せてもらえて、俺はかなり緊張している。
「うまくできそうか?」
「まだわからねぇよ――でもがんばる」
「そうか」
由乃屋の駐車場に、見慣れた葛西商店の箱バンが見える。
「律、このあとまだ仕事か?」
車に乗り込みながら尋ねる。
「どうかしたのか?」
「別にどうもしねぇけど、あがりなんだったら一緒にメシでも行かねぇかと思っただけだよ」
改めて誘うのって恥ずかしいよな。でも、由乃屋で働き始めてから時間が合わなくて、律ともほどんど会っていないんだ。
「メシだけか?」
律が耳元でいたずらっぽく言った。
「当たり前だ! 明日は開店だっての!!」
うっかり律の誘いに乗ったら、またもやまともに起きられなくなってしまう。
「マルイにでも行くか?」
マルイは以前に律と行った市場前の食堂だ。珍しいマンボウのフライが強く印象に残っている。あの日、俺はもう食事が済んでいて、律の付き添いだったからまともに食べていない。
行く! と頷いて俺らはマルイへと向かった。
六時を過ぎたばかりのマルイの店内は客も少なく、近所なのだろう家族連れが一組いるだけだった。
「おやっさん! 適当に二人分!」
適当にってなんだその注文は……。おやじさんも動じず「はいよ」と受けてるし。これが食堂のノリなのか。
「千章、ビールいるか?」
「今日はいい、律も飲めないだろ」
当然だけど、車のときの律はアルコールを飲まない。ちなみに飲ませるとザルを通り越してワクだ。一度一緒に飲んで即効つぶされてしまった。
「おまえ、運転練習しろよ」
「俺に運転させて飲む気かよ……」
そうこうしているうちに、湯気をたてる皿が運ばれてきた。鰯の生姜煮にハマチの刺身、サトイモの煮物――なんだかいろいろ出てきた。あ、でもここは魚料理がメインなんだ。
「おまえ、真剣な顔で食べてるな」
律は食べている間はほとんどしゃべらない。粗方の皿が空になるころ、一息ついてふと話しかけてきた。俺はというとまだ半分くらいしか食べていない。
多分まだ食べ足りないのだろう、律が箸を伸ばしてきて俺の分をつまんだ。
「どんな味付けかとか気になるじゃん」
「なるほど……俺はおまえの作ったメシも、たまには食いたいけどな?」
「無茶言うなよ」
「社長から聞いたのか?」
最初から大役を任せてもらえて、俺はかなり緊張している。
「うまくできそうか?」
「まだわからねぇよ――でもがんばる」
「そうか」
由乃屋の駐車場に、見慣れた葛西商店の箱バンが見える。
「律、このあとまだ仕事か?」
車に乗り込みながら尋ねる。
「どうかしたのか?」
「別にどうもしねぇけど、あがりなんだったら一緒にメシでも行かねぇかと思っただけだよ」
改めて誘うのって恥ずかしいよな。でも、由乃屋で働き始めてから時間が合わなくて、律ともほどんど会っていないんだ。
「メシだけか?」
律が耳元でいたずらっぽく言った。
「当たり前だ! 明日は開店だっての!!」
うっかり律の誘いに乗ったら、またもやまともに起きられなくなってしまう。
「マルイにでも行くか?」
マルイは以前に律と行った市場前の食堂だ。珍しいマンボウのフライが強く印象に残っている。あの日、俺はもう食事が済んでいて、律の付き添いだったからまともに食べていない。
行く! と頷いて俺らはマルイへと向かった。
六時を過ぎたばかりのマルイの店内は客も少なく、近所なのだろう家族連れが一組いるだけだった。
「おやっさん! 適当に二人分!」
適当にってなんだその注文は……。おやじさんも動じず「はいよ」と受けてるし。これが食堂のノリなのか。
「千章、ビールいるか?」
「今日はいい、律も飲めないだろ」
当然だけど、車のときの律はアルコールを飲まない。ちなみに飲ませるとザルを通り越してワクだ。一度一緒に飲んで即効つぶされてしまった。
「おまえ、運転練習しろよ」
「俺に運転させて飲む気かよ……」
そうこうしているうちに、湯気をたてる皿が運ばれてきた。鰯の生姜煮にハマチの刺身、サトイモの煮物――なんだかいろいろ出てきた。あ、でもここは魚料理がメインなんだ。
「おまえ、真剣な顔で食べてるな」
律は食べている間はほとんどしゃべらない。粗方の皿が空になるころ、一息ついてふと話しかけてきた。俺はというとまだ半分くらいしか食べていない。
多分まだ食べ足りないのだろう、律が箸を伸ばしてきて俺の分をつまんだ。
「どんな味付けかとか気になるじゃん」
「なるほど……俺はおまえの作ったメシも、たまには食いたいけどな?」
「無茶言うなよ」
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