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Vegetablesー1-
十五夜 1
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ススキには夕日が映えるだろうということで、あの日のススキ野原に着いたのは夕方だった。俺はむちゃくちゃ緊張していて、前日からほとんど食事もままならないような状態だった。
一面のススキの穂は、まだ青みが強いものの綺麗に広がり、風に揺れるたびに夕日を浴びてキラキラと光っている。
最近では普通に日常会話が弾む俺たちだったけど、この日はどちらも終始無言だった。律も緊張していたのかも知れない。
「草ばっかり見てんなよ」
あの日と同じような台詞に思わず笑ってしまった。
「決めてきたか?」
律は相変わらずせっかちだ。ちゃんと考えてきたんだからそう急かすなよ。
「無言は肯定なんだろ?」
いざとなると直接言うのが恥ずかしくなってついそう言ってしまった。
「ここまで待たせたんだ。ちゃんと言え」
律が憮然と睨みつける。
深呼吸をする――。もう心臓が身体から飛び出しそうだ。
「……律――俺は、律のことが、好きだ」
「言ったな?」
律が笑う。
「ちゃんと言ったぞ」
恥ずかしくて死にそうだけどな。
「流されてないか?」
「流されろって言ったのは誰だよ?」
「確かにな」
「ちゃんと考えるって言っただろが」
大学受験のときだってこんなに悩まなかったってくらい考えたんだ。
本当いつの間にか気になって仕方なくなっていた。もうひとつの三文字を言うことを想像したら、ものすごく苦しくなったんだ――。
これで失敗するなら本望ってとこだろう。
「逃げるなよ?」
律の手が伸びてきて俺の頬に触れた。
「逃げねぇよ――」
俺たちはどちらからともなく、ゆっくりと唇を重ねた。
一面のススキの穂は、まだ青みが強いものの綺麗に広がり、風に揺れるたびに夕日を浴びてキラキラと光っている。
最近では普通に日常会話が弾む俺たちだったけど、この日はどちらも終始無言だった。律も緊張していたのかも知れない。
「草ばっかり見てんなよ」
あの日と同じような台詞に思わず笑ってしまった。
「決めてきたか?」
律は相変わらずせっかちだ。ちゃんと考えてきたんだからそう急かすなよ。
「無言は肯定なんだろ?」
いざとなると直接言うのが恥ずかしくなってついそう言ってしまった。
「ここまで待たせたんだ。ちゃんと言え」
律が憮然と睨みつける。
深呼吸をする――。もう心臓が身体から飛び出しそうだ。
「……律――俺は、律のことが、好きだ」
「言ったな?」
律が笑う。
「ちゃんと言ったぞ」
恥ずかしくて死にそうだけどな。
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「確かにな」
「ちゃんと考えるって言っただろが」
大学受験のときだってこんなに悩まなかったってくらい考えたんだ。
本当いつの間にか気になって仕方なくなっていた。もうひとつの三文字を言うことを想像したら、ものすごく苦しくなったんだ――。
これで失敗するなら本望ってとこだろう。
「逃げるなよ?」
律の手が伸びてきて俺の頬に触れた。
「逃げねぇよ――」
俺たちはどちらからともなく、ゆっくりと唇を重ねた。
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